ライブ当日

Side 朔也


ライブの当日、葵は時間通りに来てくれた。


俺達はライブ会場の入口で待ち合わせた。


「わざわざ来てくれてありがとな。ってか今日暑いよな。」


葵は、キャップを目深にかぶり、半袖に半ズボンという、いかにも"夏の少年"という感じの格好だった。


ズボンから覗く白い脚が目に猛毒で、俺は目を逸らした。


「うん、暑いよね。サク、頑張ってね。」


葵がニコッと笑った。


良かった。


この間より元気になったみたいだ。


「シメサク、そろそろ控え室入れってさ。」


クジがやって来た。


「あ、了解。」


「ん、この子は?」


クジが葵を見て、俺に尋ねた。


「あ、えっと、コンビニで一緒にバイトしてる葵くん。こっちは、バンド仲間の鯨岡。」


お互いに紹介すると、お互いにぺこりと会釈し合っていた。


すると今度は別の方角から、「シメサク!ひまわり君!」と声がした。


俺と葵は振り返った。


イカつい男が近付いてくると思ったら店長だった。


「あれ、店長。なんで?」


「いや、お前、前にチケット俺にくれてただろ。出勤前に少し時間があったから寄ったんだよ。」


そういや、店長にもチケット渡してたな。


店長に渡したのは随分前だったから、すっかり忘れていた。


「店長、ずっとバイト休んでいてすいません。来週からはまた入れます。」


「ひまわり君、気にする事なんて、何一つないぞ。悲しみを乗り越えるためには、休息は必要だからな。」


店長は、葵の肩をトントンと励ますように叩いた。


「じゃあ、俺達控え室に行かないといけないから。受付でチケット渡して、席に座っててください。指定席なので、葵と店長、別々になっちゃうと思うんですけど。葵、何かあったらLINEしてな。」


「うん、ありがとう。」



俺とクジは、控え室に向かった。


「なぁ、シメサク。」


「ん?」


「お前が好きな子って、さっきの葵くんだろ?」


「は、はあああ!?なんでだよ!!」


「お前、分かりやすいな…。」


「…くそ…なんで分かるんだよ…。」


「なーんかピンときちゃってさ。俺の見立てでは、葵くんもシメサクの事、悪くは思ってないと思うぜ。俺の恋愛経験上、間違いない。」


「…つい最近振られた奴に言われたくねーよ。」


俺の肩を叩くクジの手を払って言った。

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