「どうして?」①

「お前、ふらっふらじゃん。」


「悪いな…普段クールな俺のイメージが台無し…うぷ…」


「あーこらこら!路上で吐くな。家まで耐えろ。」


店を出て、案の定千鳥足のクジに肩を貸しながら夜道を歩く。


彼女と別れたのがよっぽど堪えたんだな。


気付けば深夜の1時。


すっかり終電がなくなる時間まで飲んでしまったが、俺もクジも最寄りがこの駅だから問題はなかった。


ふと、閑散とした駅前で座り込む小さな人影に気付いた。


少し離れていたからすぐには分からなかったけど、よく目を凝らすと見た事のある容貌だった。


「クジ、ごめん、ちょっと待ってて。」


俺はクジを放置すると、その人影に駆け寄った。


「何してるの?こんな時間に。」


声を掛けると、彼はゆっくりとこっちを見た。


やっぱり、例のカフェラテ美少年だった。


「…コンビニのお兄さん…?」


暫く俺の顔を不思議そうに見て、少し考えてから、答え合わせをするように小さな声で彼が言った。


「うん。顔、覚えていてくれたんだ。」


「はい、なんとなく。よく行くコンビニなので…。」


短く答えた彼は、再びまた俯いた。


「大丈夫?」


「大丈夫です。」


「もう終電ないけど、帰れるの?」


「いいえ…。」


俺は、少し考えてから「少し待ってて」と言い残し、足早にクジの所に行った。


クジに1人で帰れそうかを確認すると、俺はまた彼の所に戻った。


そして、こう提案した。


「俺の家、すぐそこなんだけど、泊まる?」


すると、彼はとても驚いたような顔をして俺を見て言った。


「…どうして…?」


どうして?


俺はその言葉を頭の中で反芻する。


何に対しての「どうして?」なのだろう。


「どうして、ほぼ初対面の人を泊めようとしてくれるの?」かな。


だとしたら、上手く言えないけど、多分、放っておけなかったんだと思う。


だって、こんなに寂しそうな顔をしているんだから。

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