何にでもなれる。(※微)

Side 葵


「あ…っ、あッ、やぁっ、あぁんッ!」


「あおいくん!かわいいよ、あおいくん!」


彼は激しい腰使いで僕を何度も突きあげた。


「やぁん、ぁん、そこ、今だめぇ…っ」


後ろから僕を突きながらも器用に胸の突起を弄る。


漏れ出る声と、感情とは裏腹に屹立した自身。


あまりの激しさに意識が飛びそうになる。


それでも、薄くぼんやりとした頭の中は妙に冷静だった。


早く帰ってカフェラテが飲みたい。


そんな、全く関係の無いことを考えていた。


カフェラテって不思議。


コーヒーとミルク。


色も味も違うふたつ。


ミルクの白にコーヒーの黒が混じりあって茶色になる。


なんでグレーじゃないんだろう。


そして、なんでこんなに美味しいんだろう。


なんでこんなに、安心するんだろう。


夏の冷たいカフェラテも好きだけど、冬の日の温かいカフェラテも好き。


疲れた時、不安な時、もうダメだと思った時、温かく優しく包んでくれる。


全てを忘れさせてくれる。



去年、17歳の時に両親は離婚した。


僕は母方に引き取られ、お母さんとおばあちゃんと3人で暮らすようになった。


学校では、優等生を演じている。


実際に成績は良い方。


お母さんとおばあちゃんを安心させたい一心で、ただひたすら勉強を頑張ってきた。


その反面、学校帰りに、掲示板やSNSで募集した男性とこっそり会ってセックスをする。


勿論、したくてしているわけじゃない。


全てはお金のため。


お父さんが居なくなって、家計はとても厳しい。


お母さんは朝から晩まで働いているけど、僕の学費に加えて、持病のあるおばあちゃんの通院代やお薬代がかかる。


普通のアルバイトじゃ足しにならない。


お母さんにこれ以上、無理をして欲しくない。


おばあちゃんにもずっと元気で居てもらいたい。


だから、体を売ることにした。


初めてそういう事をしたのは、18歳の誕生日の翌日。


怖くはなかった。


お母さんとおばあちゃんを助ける為なら、僕は何だってできるし、何にでもなれる。



お母さんとおばあちゃんには、CDショップでバイトをしていると嘘をついて、毎月稼いだ分を渡している。


額が大きすぎると怪しまれるから、ギリギリのところで調整して、余ったお金は僕が貯金している。いざと言う時にいつでも使えるように。



こうやって会って体を重ねるのは、自分よりも年上の大人の人ばかり。


セックスの後、たまに恋愛的な意味で好きだと言われることがある。


中には「エッチしたから付き合ってもいいよね?」という、理解不能な理論を展開する人もいた。


勿論丁重に断った。


学校でも、そんなに話をした事も無いのに、クラスメイトから告白された事があった。


それも、丁重に断った。


なぜなら、その感情が僕にはよく分からなかったから。

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