第2話
スーサイドベイビーズ。
半分が喜びでもう半分が不安だとした時、不安の中に混じる一握りにSBがあった。
胎児が産まれる前に胎内で自殺するという信じられない話。だがこれは都市伝説ではなく実際に起きている事だった。
最初はあまりに衝撃的な内容で公にはされていなかった。だが、今の時代SNS等いくらでも情報発信出来るツールが存在している。
『赤ちゃんが私の中で自殺した』
誰かが呟いた言葉を最初は誰もが信じなかった。だが、これを皮切りに同様の報告が全国で上がり始めた。私も、私もと。
生々しく衝撃的だったのは、へその緒を自分の力で引きちぎり、自分の首に巻きつけていたという事例だ。
へその緒が首に誤って巻きついてしまい死亡するケースはある。だが、このケースでは自分の意思でへその緒をちぎり、自らの首に巻きつけたのではないかという見立てがされていた。そんな事が可能なのだろうか。へその緒は生命線だ。簡単にちぎれるものではない、それをか弱い赤子自身がちぎる? それだけでも信じたいが、更にちぎったへその緒を首に巻き付けるという行為。
結果として栄養分が行き渡らなかった事が死因に繋がったそうなのだが、その後も続く胎児の死亡を受け、正式な発表が出された。
胎児達は、自らの意思で死を選んでいる。
つまり自殺だ。衝撃的な報告に世間は大きくざわついた。
誰も考えたことなどなかった事だ。お腹の中にいる赤ちゃんはすくすくと育ちやがて産まれてくる。それがごく自然な事で当たり前の事だと誰もが思っていた。しかし、今回の件はその前提をひっくり返す事例だった。
中絶など、親の意思で子供をおろすという事はある。それで言うとSBは逆だ。子供の意思で産まれてくる事を拒絶する。
それから自殺する胎児達の事をスーサイドベイビーズ、または略称でSBと呼ぶようになった。
何故こんな事が起きるのか、はっきりとした原因はいまだに解明されていない。
ただ、やはり母体が大きく関係しているのではないかと言われている。母体の心身が胎児に影響を及ぼしていると考えられているようだが、それ以上の事は分かっていない。
そんな中で、世の中ではこのSBに対しての推察が多く飛び交っていた。
何故胎児は自殺するのか。自らの意思で死を選ぶのか。産まれたくないと思う理由は何なのか。
ーー大丈夫なはずだ。
そんな事は起こさせない。僕達が君を必ず幸せにする。
尚子のお腹をさすりながら、僕は強く心に思い続けた。
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