神も思春期?

うみとそら

思春期とは

とある天国のとある家のなか。

「こら!ロキ!いい加減にしなさい!」

母親に怒られていた。

「うるさいな」

「うるさくないっ」

「あー、もー」

「なんで女性の髪を丸刈りにしてしまったの!?いい大人がやることじゃないわ!」

大人といってもまだ他の神と比べてオレはかなり若い。父親のようにヒゲすら生えてないので、男の子という感じだ。

「ぶぶっ」

あの女の怒った顔を思い出したら笑えてきた。

「何笑ってんの!!」

「あー、はいはい。すいまんせんでした」

理由なんて、オレと同じくらい金髪が似合ってたからムカついただけだ。

「今日という今日は許さないんだから!」

「ほえー」

どうせ、10年くらい牢屋に閉じ込められるくらいだろう。

「今日をもってあなたは地上へと追放です!」

「ん!?」

「その性格が治るまでは天国への出入りを禁じます」

「ちょいちょい!やだよ!」

「ダメです」

そういうと母親が頭部がシングルベットの大きさくらいあるハンマーをどっかの空間から取り出してオレの頭を殴った。

「ぐへ」

その衝撃でオレは気絶した。


目が覚めると海で溺れていた。

「んごおっんごおっ」

死にそうだったので海の上で立ち上がった。

「とりあえず陸に向かうか」

その間、ずっとどうやったら天国に帰れるかを考えていた。


それから2日後。

日本に上陸して、困っている人を探すためにぶらぶらと歩いていた。

「おっ、困っている人発見!」

絶対困っているはずのお兄さんに声をかけてみた。

「お兄さん大丈夫?」

「あ?なんだよ?」

お兄さんは怪訝そうな顔をしていた。

「いや、お兄さん困ってるかなー?と思って」

「は?なんでだよ?」

「だってお兄さんブサイクだから!」


それから2日後。

「あー。困ってる人全然いないー」

困ってる人助ければ帰れるかなーと思っているが、そもそも困ってる人が見つからない。

「はー、疲れたー」

そんな感じで公園のベンチに腰をかけたら、となりのベンチから泣き声が聞こえてきた。

「ふえええん」

小学低学年くらいの男の子が泣いていた。

「よっこいしょ」

子供はあまり好きでないので助けないでいいやー。と思い、ベンチから立ち上がった。

「うわあぁぁぁん!!」

「あー!うるさい!どうしたの!?」

「ぐすっ、ぐすっ、おにいちゃんからもらったボールなくしちゃった」

めんどくさー。

「どんなボール?」

「あおいろ」

「そんなのいっぱいあるじゃん」

「うわあぁぁぁん!!」

「うっ、ちょっとそこで待ってて」

めんどくさいと思いながら茂みの中へと向かっていった。


10分後、茂みの中からロキが出てきた。

「ほい」

ロキが渡したのは少し土がかぶっている青色のボールだった。

「え!ありがとう!」

男の子は満面の笑みになっていた。

「どういたしましてー」

「なんでわかったの?」

「犬に聞いたー」

「へへっ、おもしろーい」

「じゃ、気を付けて帰ってね」

「え?」

「え?」

ロキは男の子の反応がよく分からず言葉をオウム返しした。

「うわあぁぁぁん!!」

「なんで!?」

「一緒に帰ってええええ!」

「やだよ!」

「うわあぁぁぁん!!」

「わかったよ!一緒に帰るよ!」

「やった!」

一緒に帰るとわかった途端男の子はさっきと同じ満面の笑みに戻った。

「疲れるー」

「へへっ」

だるそうなロキと男の子は一緒に公園を出た。

そして、この光景をロキの母である私は天国から見ていた。

「あらあら、なんか面白そうね」


どうやらこの男の子の家に着いたようだ。

「ここがぼくの家だよ!」

そこそこ大きな一軒家で庭もあった。

「いいところ住んでるなー」

「でしょー、おひさまの家って言うんだよー」

「あー」

多分、ここは何かの施設なんだろうと思った。

「ケイタくんおかえりなさい」

オレたちが来た方向から40代くらいのおっさんが声をかけてきた。

「あ!タカハシさん、ただいま!」

「はい、おかえりないさい。こちらの方は、、、」

「ぼくのヒーロー!」

お?

「あ、いや、ボールを偶然見つけただけです」

「本当ですか?ありがとうございます」

タカハシさんに頭を下げられた。

「いやいや、全然です」

「ねえねえ!もう少し遊ぼうよ!」

「いやー」

「ぜひ、少しだけお茶でもいかがですか?」

タカハシさんにもそう言われてしまい断りづらくなってしまった。

「じゃあ、少しだけ、、、」


ケイタくんにオレンジジュースとお煎餅を出してもらいリビングでくつろいでいた。

「ケイタくんだっけ?」

「うん、お兄さんは?」

となりに座ってるケイタくんは漫画を読みながら会話をしていた。

いやいや、せめて誘ったからにはソロプレイはやめてくれよ。

「ロキ」

「え!かっこいい!」

読んでた漫画をザツに置いて興味津々の目でこっちをむいた。

「海外の人なの?」

「まあね」

「どこなの!」

「アメリカらへんかな」

「へー!」

ま、うそやけどね。

「それにしても、みんな礼儀正しい子ばっかりだねー」

リビングに来るまでに施設の子らしき人と3人あったが、きちんと挨拶をしてくれた。

「そうだね!」

多分、その中の誰かが『おにいちゃん』だったのだろう。

「だって、いい子じゃないとおうちに居れなくなっちゃうからね」

「お、おう」

少しゾッとした。子供ながらに自分の状況がなんとなく理解できていることに。

「そうだ!ゲームしよー!」

「少しだけね」

そこから1時間くらい2人でパズルゲームをして帰った。


なんとなくケイタくんが気になり1週間鳥に変身して観察していた。

そこでわかったことは、ケイタくんが人と距離を置いてることだった。

別に嫌われてるわけでもいじめられてるわけでもないが1人で何かしていることが多かった。

今日もあの公園で1人でボール遊びをしているのを鳥として小枝から見ている。

「お?」

つい、声がでてしまった。

意外な光景が目に入った。

なんとケイタくんがベンチに落書きをしていたのである。

「しかも『ばか』って書いてるよ」

多分、自分が悪いことをしてると自覚があるから、周りをキョロキョロ見渡しながらこっそりと落書きしてた。

「これは面白いなー」

他人がいたずらをしている姿を見るのが結構好きだ。


さらに1ヶ月、興味本位でケイタくんを観察していると面白いことに気づいた。

ケイタくんは小さないたずらをちょくちょくしているのだ。

けど、今日は運が悪くタカハシさんにいたずらを見つかってしまった。


「なんで花壇にあるお花を取ったんだい?」

どうやら今回はおひさまの家にある花壇の花をもぎ取ってゴミ箱に捨てたらしい。

やるやん。

「ごめんなさい」

ケイタくんは一応謝っているが、その後もいたずらの理由は話さなかった。


次の日、いつもの公園にケイタくんがいたので、ちょっかいを出してみた。

「あ、ケイタくんじゃん」

偶然見つけた風を装って話しかけてみた。

「ロキ!」

ロキ『さん』だろ?

「なんか暗い顔してるけどどうしたの?」

敬称については一旦置いとこう。

「実は昨日タカハシさんに怒られちゃった」

「へー、どうしてー?」

「お花をイジメちゃったから」

「なんでお花をいじめたの?」

「寂しかったから」

グサっときた。

昨日はタカハシさんには言わなくて、おれに言ったこと。

それに、なんとなく共感できてしまったからだ。

「そうなんだ」

「うん」

そのあとは特に何も喋らずに一緒にベンチにずっと座ってた。


ケイタくんが帰ったあともずっとベンチに座っていた。

『寂しい』という感情について考えていた。

「オレも素直にならないとなー」

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