銀髪裸タオルスレンダー美少女エルフ現る
第28話 ログイン勢はイベント時期に舞い戻る
「はい、本日の継続冒険活動記録の認証は終わりました」
受付嬢はにっこり笑って、二人の手続きを済ませた。
組合の依頼を受けずとも顔を出せば、認証される。そして継続記録ボーナスはもらえるのだ。
「そろそろ冒険者ランク上げてはいかがですか?」
アーニーは未だD、ウリカもEである。
二人は冒険者組合の依頼こそ受けていないが、魔物討伐では相当数の実績と魔石換金を行っているので活動実績としてはまったく問題ない。
組合としてはSSRの二人にはランクを上げて欲しいぐらいなのだ。
しかし二人がこの町にとって重要人物でもある。組合の都合を押しつけるわけにはいかない。
「ランク上げはともかく、やばいな。最近組合の依頼なんて受けていないぞ」
言われて気付いたアーニーである。
「嘘。私たちログイン勢?」
記録認証だけ受けて依頼をまったく受けない冒険者のことをいう。守護遊霊たちによるスラングだ。
冒険者休眠状態のことではあるが、活動記録報告だけはきっちり行う者のことを言う。
「大丈夫ですよ。お二人は依頼を受けていなくても、魔物討伐実績はかなりあります」
「アーニーさん好みの魔霊石系依頼が少ないんですよね」
魔霊石はガチャに直結する。
アーニーの優先事項だ。
「それにログイ……スラングでした。登録維持者の皆様は、それほど悪くはないんですよ。いつか冒険者に復帰される前提ですしね」
そうなのだ。
登録維持者、いわゆるログイン勢は組合として否定しない。
冒険者に復帰する意思があるかこそ、組合に顔を出すのだ。
もっと言うなら王侯貴族のほとんどが登録維持者である。
「現在登録維持者の数が急増中です」
「どうして?」
「理由は不明です。守護遊霊離れとセイエン不足が言われていますが…… 冒険者は危険かつ女性が多いからね。仕方ない面もあります」
冒険者には女性が多い。町によっては五分五分ぐらいだが、極端な町だと八二ぐらいの割合だ。
理由は明白。若くて美しい女性に守護遊霊の加護が降りやすい傾向があるのだ。
守護遊霊の加護がいつ降りるかは不明だが、冒険者になってから加護を得る者も多い。
冒険者は危険だ。命賭けだし、人族全般を対象に繁殖の対象にする魔物も少なくはない。それでも女性冒険者が多い理由は、守護遊霊の加護と田舎特有の女性余りなのである。
余剰人員かつ守護遊霊の加護があるぐらいなら冒険者になって一攫千金、もしくは資金を貯めて引退したほうがいいのだ。この世界特有の人生設計である。
男は守護遊霊の加護が降りにくい。戦争で死ぬし、冒険で死ぬ。ただ、男性冒険者には通常の守護遊霊より加護が強固になりやすい。女性守護遊霊の場合が多いと言われる。
希な例はアーニーだった。友達感覚で守護遊霊と会話できる冒険者はいない。
アーニーの場合は、守護遊霊自体が変人なのだろう。
守護遊霊の加護もいつまでも続くものではない。守護遊霊の加護がなくなったことを境に冒険者を休止、引退する者も多いのだ。
「なので明日から、神々からの
「イベント!」
二人の声が重なる。
「そうです。イベントです。さらに期間限定ガチャも実装予定なのです!」
受付嬢が拳を握りしめて力説する。
「ウリカ!」
「アーニーさん!」
ガチャンで盛り上がる二人の息はぴったりだ。
二人は帰宅し、作戦会議を行うことにする。
「イベント内容は何々…… えーと、かぼちゃのお化け、ジャック君を倒してかぼちゃを集めろ……」
「収集型イベントですね」
「とっても弱いモンスター、ジャック君が大量に沸きます。拠点から離れたジャック君ほどかぼちゃを落とします、か」
「かぼちゃ10個で魔霊石1個、大かぼぎゃなんてのもあって、それが1個で1つ交換。交換レートも効率いいですね」
「かぼちゃのお化けを乱獲…… あれか。守護遊霊がいる現実世界の秋祭りか、これ」
アーニーが呆れたようにイベント内容に対して感想を漏らす。
『ありきたりだな、おい』
「守護遊霊!」
アーニーが反応する。アーニーの守護遊霊がガチャ以外で出現することは珍しい。
守護遊霊が語りかけてくること自体希なのだが。
「ありきたりってどういうことだよ」
『俺達がいる
「そっちの世界の都合かよ!」
『ログイン勢が一気に増えて、そのままフェードアウトになりやすいからね』
休止冒険者は守護遊霊が忙しい時期に多くなることは聞いたことがあった。
守護遊霊世界のスラングではケッサンキやハンボウキと呼ばれている。
『この手のイベントは眠れなくなるからな。アーニーに期待』
「眠れないってどういうこと! 俺は寝るぞ!」
『今にわかる…… 美味しいイベントが…… どんなものかということが!』
「あ、交信切れた。おい、守護遊霊! 守護遊霊!」
呆れた顔でウリカがこっちをみていた。
「相変わらず自由すぎますね」
「嫌いじゃないんだけどな」
「いえいえ、アーニーさんと守護遊霊が自由すぎるのです」
「えー」
『えー』
「っておい!」
『おっと今度こそ戻らないと』
「あはは。やっぱり自由すぎますよ!」
ウリカの指摘に、アーニーは返事に窮するのだった
。
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