ローグライクの世界でとんでもないバグを発見しました
小者
Prologue
今から300年前、何にもない荒野に"ダンジョン"が出来た。誰がどのような目的で作っのかは不明。ただ1つ分かったことは、ダンジョン内で死んでも生き返ること。
どんな理屈で生き返っているのか、安全なのか、それは300年経った今でも定かではない。
・・・・・・
ダンジョンに潜る人々が集まってできたダンジョン都市、ミノス。
そこには様々な欲望を叶えるためにたくさんの種族が集まっていた。人間はもちろん、普段は森に引きこもるエルフや頑固者のドワーフまで、多種多様な種族が街を賑わせている。
そして、ここにも1人、欲深い人間がいた。
「これがダンジョン都市ミノス……!!」
武器、防具、アイテムなどのダンジョン用のものから、美味しい食べ物までなんでも買えるようだ。
人が沢山通れるように大きく舗装された道を歩いていると、美味そうな匂いが常に流れてくる。
男は財布の中身をチラリと見る。しばらく悩んでいたが、欲望には逆らえず、ジュージューと肉が焼かれている店に足を運んで行った。
この男は、欲望に忠実で、どこにでもいるような人間だ。
男とまるで正反対のような人間が居た。
家に恵まれ、環境に恵まれ、才能に恵まれた女。挫折を知らず、また失敗もないまま成長してきたこの女は、男と同い年ながら顔つきが既に違っていた。
「ダンジョン都市……か。僕を失望させないでくれよ」
些か、調子に乗りすぎているのだけが難点だった。
対称的な2人が出会うのはまだまだ先のことである。
♦
2人は偶然にも同じ時間に食事を済ませ、ギルドに向かっていた。
ダンジョンに入るには、ギルドの会員になり、許可を得なければいけない。面倒だがその分報酬もあり、蘇り保険が効く。ダンジョンに潜るのなら必須と言えるだろう。
男は意気揚々とギルドに向かっていた。焼肉を食べ、心が満たされたのだろうか。そんな彼に、声をかける者がいた。
「やぁ、そこの陽気なお兄さん。少しお茶でもしないかな?」
イケメンと自覚して顔を利用する者は裏がある。その直感に従い、男はイケメンを敵と判断する。若干の嫉妬もあるかもしれない。
「男と飲むつもりはない」
「それは困ったな。君はギルドを目指しているんだろう?見たところミノスに来たばかりだ。僕に着いてくればクランに推薦するよ」
魅力的な内容で男を誘う。
「断る」
「……そうか。残念だよ、本当に」
イケメンは大人しく諦めて帰って行った。それを見届けた男は、安堵のため息を漏らす。
「さすがダンジョン都市、強者がゴロゴロいやがる」
男は口元を歪ませると、再びギルドに足を向けた。もう、彼を妨げる者は居なかった。
一方、女はどうしているのかと言うと……。
「もし、荒野に咲く一輪の花のように可憐な貴方。私と良いお茶を飲みませんか?」
不思議と注意を引くような声に、ピクリと女が反応する。
「それは僕のことか?」
「えぇ、もちろんです。貴方ほど美しい方は見たことがない。ミノスの誰であろうと、貴方より美しくはないでしょう」
「そうか、そうか。良い気分にさせてくれるじゃないか。……まさか、お茶で終わりなんて言わないだろう?」
「っ!」
少しの威圧にも怯む様子の少女を見た女は、ふっ、と顔を緩めて言った。
「そんなに怯えるな。悪いようにはしないさ。ほら、案内してくれ」
本人は優しい顔を作っているつもりなのだろうが、少女からしてみれば悪魔以外の何者でもなかったのだった。
・・・・・・
とある部屋にて
「あぁ、まただ。一体どうすればクリア出来るんだ。雑魚の癖に突撃したがる奴とか、強い癖に力を温存して死ぬ奴とか、こんなゴミキャラをどうやって使えばいいんだ!」
ピコン
「あ?なんだこれ……?チュートリアルが解放されました?」
ピコン
「ふざけんな!俺を舐めやがって…いつか後悔させてやる!!このクソみたいなゲームも、お前も!必ずぶっ壊してやる!!!」
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