肆話:なきり外泊 其の壱
ー壱ー
「うんうん、皆時間通りに集まったみたいだね!さあ、いざわたしの家に、レッツラゴー!!案内はわたし達、『ハルハルコンビ』にお任せを!!」
「……僕、
おおよそ11時、予定通り
合計人数は
「あら?
「ほんとだ。今日来るって言ってたのにね」
同じ反応をしたのは
「
「そのと~り!!流石は文武両道の優等生、
「そんな俺、褒められるような質じゃないけどな。ただの一般的な体育系男子だし。それと最初の台詞、どこぞの大手ピアノ制作会社みたいだな」
「うん、参考にした」
「参考どころかそのまんまだけどな」
このガタイの良い男子は
生徒からの信頼も厚く、一部の間では『一年部の番長』とも呼ばれているらしい。
参加の経緯は以前より
「さてさて、いつまでも立ち話も何だし、ささっと家まで行っちゃおー!!えー、まずぅ、皆様の目の前に広がる此処はぁ、磐戸の交通拠点、
「すまない、一つ質問する。
「えへへへ、わたしね、一度ガイドさん、やってみたかったんだー。どぉ、セイギ君。わたしのガイド、上手いかな?」
「残念だが俺はガイドさんがどのような職業なのか把握しきれていないのだ。なのであくまで私的な感想となるが……中々に才能があるのではないか、と」
「ほへぇ、セイギって口調は堅苦しいのに優しいんだね!!褒めて貰えて、感謝!感激!ビックハグ!!」
「な!!止めてくれ!!公共の場だぞ!!」
状況としてはセイギ君の身体に
もう一度言うけど、此処は公共の場。
いちゃいちゃしている一方はクラスのイケメン5に選ばれる程の顔立ちを持つタダシノセイギ。
もう一方は一学年の可愛い系女子代表の
勿の論、目立たないわけがない。
二人を除いた全員がすぐさま距離を取り、巻き添えから逃れる。
セイギ君には悪いけど、犠牲になっておくれ。
他県や他市の境目に位置する地区として多くの人々が行き来する。
その上、観光名所として有名な湖【
そんな所で人々からの注目なんて集めたくもない。
「やぁ、
背後から見覚えのある声が掛かる。
相手はご存知、
イケメン5の一角にして、私の仲良い男子の一人。
「いつき君こそ参加するんだ」
「あはは、誘われちゃったからね、
「……
「うーん……普通に会話する程度かな。まぁ、彼女にとっては仲良し判定だったみたいだね」
なるほど、
このイケメンまでもを言い包めて連れてくるとは。
「へぇ、
……そっちは名字+さん付けなのね。
私も名前呼び捨てがいいけど、指摘するほどじゃないか。
「あの後って?」
「ほら、この前道端で
「それの事か。暫くは
あの日以降、下っ端ポジのツクバは絡んでくるが、
彼が私に何故近づいてくるのか、結局未だに判明していない。
うーん、ほんとに私、何もしてないんだけどなぁ。
「そっか。何かあったら教えてね」
「うん。そうするよ」
やっぱ、不思議だなぁ。
話してる感じ、恋愛感情とかとも違うっぽいな。
さっきの話のように、
……ていうか、待て待て、落ち着け
今何故恋愛どうのこうのを考えた?
思い返せば、朝に聞いた『青春』の二文字以降、こうして少しばかり変な思考回路になってるな。
あれ、おかしいな?
『青春』って誰の台詞だっけか。
確かに聞いた覚えはあるんだけどな。
……朝の『お目覚めNEWS』の占い結果だったけ?
「みこと、ちょっといいかな……って、あれ?君は
「あ、君は『ハルハルコンビ』の一角、
「頼むから止めてくれ、その呼び名」
へぇ、
てっきりクールキャラだと思い込んでたよ。
「……
「あはは、そんな事謝らないでよ。許可したのは俺だしさ。どうせ休み時間はやる事あるわけじゃないから」
「それならいいんだが……一様、後で猿にキツく言い聞かせとくよ」
あー、
ある意味、そのお猿さんに感謝しなくちゃ。
「はるま、私に用事があるんだよね?」
「あぁ。だけどお邪魔みたいだし、失礼するよ」
「勘違いされるってば、その言い方!」
「ん?二人っててっきりそういう仲なのかと」
「雑に冷やかすんじゃないよ!はるま、私の性格知ってるでしょ?」
こやつ、そっち系のノリもいけるクチであったか。
うーむ、意外。
まだまだ
「いやいや、違うよ。
「
理解してるのか、理解していないのか。
ふざけてるのか、それともふざけていないのか。
彼の感情はとても読み取りにくい。
顔に浮かんでいるのは常にイケメンの笑顔のみだ。
「ふふ、さぁどうでしょう。じゃあ、お邪魔者は退散しますかね」
そう言って
……ふざけてたんだね、やっぱ。
地味に
うん、10点中9点。
マイナス1点は私の多少の憤り分。
「
「
「……猿は猿さ。賑やかで面白いお猿さんだよ」
回答になっていない。
今度話しかけてみよっと。
「で、あの件、だよね?」
「ご推察の通り、あの件だよ。クラス内の【霊能者】の件。前にも言ったけど、このお泊り会に相手も参加してる可能性があるから……」
もし例の【霊能】関係者が私達の存在に気が付いていたとしたら。
その場合は、向こうから接触を図る可能性がある。
その時、クラスの一部が集まるイベントに相手が参加しない手は無いはずだ。
私達を知らなかったとしても、偶然参加している可能性だってある。
どれもこれも可能性の話だ。
しかし、もしも相手が紛れているのであれば……。
「そろそろ家に向かうぞー!!おーい、皆どこ行ったのーー!!早く集まってー!!」
駅の構内に
「時間みたいだね、行こっか」
「うん……お互い、慎重にね」
多くの人が過ぎ去る駅のホーム。
クラスメイトとの交流の為、クラス内の【霊能者】を探す為。
私達はこれから起こるお泊り会での物語に、少しの不安と期待を抱く。
これから交わる【縁】を、まだ私達は知る由も無い。
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