第17話 苦戦

熊と遭遇してから10分。いまだ俺達は防戦一方であった。なにせ熊【正式名称:ビッグフレアベアー】は魔法耐性が異常なほどに高く、俺が撃った魔法がほとんど通らないのだ。たまに雷属性の『麻痺』を放ったりしているが、全く効いている様子はない。ザラが必死に剣で攻撃しているのだが、それですら効いている様子はないといった具合だ。


「ちょっとあいつ強くないか?」


「…だね。タイガ君の魔法が一切通ってないもんね…」


「今のところ俺は援護しかできないや…」

そんな会話をしながら俺は、熊が火を飛ばしてきたので『魔法障壁』で防ぐ。この魔法は属性が付与されていないため、魔法が使える人ならば大抵の人は使える。…個人差は勿論あるが。


「でもザラ、このままだとジリ貧だぞ。俺が攻撃しようにもあいつの魔法耐性高すぎるし…」


「…僕がなんとかするしか方法はないってことね…」


そんな会話をしていたが全く光が見えない。こんな感じで持久戦になってしまうのだった。



「お、あいつ火吐かなくなったぞ」


「魔力切れかな?」


2、熊が火を吐かなくなった。しかし魔法耐性は相変わらず高いままなので俺の攻撃は一切通らない。


「…どう?ザラ。やつに攻撃食らわせることができる?」


「最大限努力してみるけど、無理なら…」


「無理なら俺が最大級の魔法を放ってみるから」


「…わかった」


そういってザラは熊の前に出る。火は吐かないと判断し、俺は最大限ザラの攻撃に援護しようと考えた。


「(…先生。やつに拘束系の魔法は効くか?)」


《賢者の知識:いけないこともないかと。しかしやつの苦手属性である水である必要があると思います》


「(そうか…やってみる!)」

そういって水属性の最強拘束系魔法を出す。『無詠唱魔法発動』スキルにより無詠唱での魔法発動はできるが、今回は念には念を押して声に出す。


「ザラ、いくぞ!『流水鎖アクアバインド』!」


この魔法は対象の足元に水属性の沼を発生させ、対象の動きを止めるという水属性で最大級の拘束魔法だ。「最大級」と名がついているだけあって魔力をバカみたいに喰うが、その分効果は抜群で大抵の動いているものなら捕らえることができる。それが魔法耐性のバカ高い【ビッグフレアベアー】であろうとも。


「これでどうだァァァァ!」


俺が魔法で動きを止めたその瞬間、ザラは動き始めていた。【アクアバインド】で動きを止めるまで雷魔法を使っていたせいか、『雷遁』スキルが発動し視力強化されている俺の目にも見えないほど速いスピードで。そしてザラの剣が熊の首に届いたその瞬間、熊が雄叫びを上げた、と同時にザラは熊に振り落とされる。俺は瞬時に判断し、強力な水攻撃魔法を発動させる。


「これで止めだ!『水槍アクアジャベリン』!」


コントロールでザラがつけた首の傷に命中させる。俺は熊に高い魔法耐性がついているのは毛皮だけだろうと判断し、そこを狙ったのだった。すると、


「…ねぇタイガ君、あの熊動きが止まった?」


「うん。なんとか倒せた…みたいだな」


こうして、地獄の昇級依頼は幕を閉じたのだった。

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