アナタ告白したでしょ?

俺はなんだか気まずくなり、彼女と距離を取ろうと逆にゆっくり店を出ていく。

店を出た所で女の人に声をかけられた。


「あの〜 チョットいいかな?」


なんと先に出ていったはずの鈴木里奈が俺の事を出口で待っていた。


「翔くん、学校まで一緒に歩かない?」


「あぁ 別にいいけど・・・」


なんで待っていたのかはだいたい予想はつく。

歩きながら里奈は話しをきりだした。


「あの〜 この事は黙っていて欲しいんだけど・・・」


「コンビニでコン○ーム買った事?」


「ハイ、そうです。」


「別にいいけど・・・ なんであんなモノ買ってたの?」


「え〜っと〜 簡単にいえばお守りです。」


「ん?お守り?コン○ームが?」


「赤ちゃんが出来ない様に護ってくれるじゃないですか?」


「エッ〜? アナタ、ビッチなの?」


里奈は首を横にふった。

「違います。私は経験がありません。」


あんなモノ買っておいて、こんなとこで彼女はキッパリと堂々としている。


「じゃ〜 なんであんなモノを?」


「それは・・・ 私って見ためが、かわいいじゃないですか? 万が一襲われたりしたらと思って・・・」


自分で自分の事をと言う人はテレビの中だけだと思っていたが、まさかこんなところで出くわすとは・・・

とりあえず聞いてみる。


「襲われたりしたら?」


「赤ちゃんなんて出来たら大変でしょ! その時の為の保険です。」


なんだか話しを聞いていてバカバカしくなって来た。


「そんな事でそれ買ったの?」


「そんな事じゃないですよ! 赤ちゃん出来ちゃたら女性は大変なんですから!」


「それはね・・・ 普通は使用する時に買うモノなんだよ。だいたい使い方分かるの?」


「分かりません! 翔くん教えてください。」


ちょっと心配したのに今度はハラが立ってきた。

「ハッ? 意味分かんないんだけど?なんで俺が?だいたいつきあってもいないアナタにどうして?」


「あの〜 つきあってると思いますよ。翔くんは覚えていないかもだけど・・・ 10年前、翔くん私に『俺が一生、君の手をひっぱってあげる。』って言ってましたよね。これって告白ですよね。」


「10年前って保育園の年長じゃないか?」


「私も『ウン、お願いします。』って言ったんだけど・・・」


「そういえばそんな事が・・・ でもそれ、子供の戯れ言だろ。そんなの今頃になって・・・」

だんだんと俺の記憶ももどってきたが・・・


里奈は思い出し笑いを浮かべている。

「私が年長の時、何をするにも遅くていつも置いてけぼりだった。でも、翔くんだけがいつも私と手を繋いで引っ張って行ってくれたよね。そんな翔くんが私は好きだったんだ。」


その頃の俺の記憶が戻ってきてハッとした。

「俺は小学校で別々になって悲しかったけど、里奈ちゃんも同じ気持ちだったんだね。」


「そうだよ! だから・・・ 私達ってつきあってるよね?」


本当につきあってるのだろうか?

確信が持てなくて言ってみた。

「エッ、じゃ〜、も一度告白していい?里奈ちゃん俺とつきあってください。」


「ハイ、よろしくおねがいします。」

里奈は満面の笑みをうかべていた。


「なんだか凄く恥ずかしいんだけど・・・」


そこで里奈は追討ちをかける様に・・・

「じゃ〜 後でアレの使い方教えてね。」


「アレ?ん? ってそれが一番の問題だ。」

俺は最初の話しをすっかり忘れていた。


彼女はアレの箱を開けると一つだけ取り出し、コットンと一緒に仕舞って「ふふふ お守り」って言った。


笑顔が可愛くて倒れそうだったが・・・

その小悪魔は残りの箱を俺に手渡してきた。

・・・こんなモノどこに隠しておけばいいんだ?

慌ててカバンの奥の奥の方にしまいこんだ。



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