9話 交差都市の神
「
「了解です」
私のツインテは水色に変わって、空中を飛びながらその場を緊急離脱。
二百メートルほど行ってから高度を下げ、
「はあっ……、はあっ……、はあっ……」
魔力を思いっきり使ったんで、疲労がハンパない。
正直、動きたくないッス。
「彩さん、大丈夫ですか?」
羽彩が気づかってくれたッスね。
誠実なその声がなんか効くッス。
「あ……、ありがとう……、ッス」
まだ息が荒いッスが、答えたッス。
しれっとデコイも置いてきたんで、少しは時間を稼げると思うッスよ。
「彩さん、あれ……」
言われて中を見ると、五メートルほどさきの床と壁の
なんの木かは分からないッスが、斜めに伸びてはいるものの、しっかりと根をはって、がっちり固定しているかんじッス。
ただ、ビル二階の中になんで、コンクリートとかだし、肌はメタリックで葉っぱもないんで、オブジェとかそんな物に見えるッス。
外にある草とかは土があって生えていたんで、これはかなり異質な雰囲気があるッス。
て。
なんか根から枝へ脈打つような鈍く青い光が一回動いたッスが──。
太い枝の一つから青い風船が膨らみ始めたッス。
いや、風船じゃない。
この形は、機製人さんッス!
パシュ、パシュ、パシュ。
バチィ──────────。
私は生まれようとする機製人さんに向けて、サプレッサーをつけたエンプレス・エリーと
頭から首、胴体、手、足、
このことから考えて、あの木は機製人さんを生み出すものってわけなんッスね。
なんか交差都市で草が生えてるのが、より納得できたような気がするッス。
そんで、この木からまた機製人さんが生まれるかもしれないッスね。
念のため、これも無くしておくッス。
……。
無くすのはいいッスが、この木って何の魔法が効くんッスかね。
「心配には及びません」
!?
不意に声が聞こえたんで、見ると同時にハローとエリーを構えたッス。
そこには神社の人みたいな装束の女の子がいたッス。
十歳くらいで、紫がかった黒髪に、白い肌でとても上品な雰囲気があるッス。
「その木は人型を生むたびに消えています。ですから、大丈夫です」
するとその言葉どおり、メタリックな木は枝先からポロポロと朽ちていって、そのまま消えたッス。
まるで、ビデオの早送りみたいに。
でも見た目が金属なんで違和感は拭えないッスね。
「わたくしはこの空間が交差した都市から生まれた神で、
丁寧にお辞儀をする都恵子さん。
確かに、この気配は神様ッスね。
「私は、
まだ疲れが残っているんで、あんまりうまく喋れないッス。
「彩様、じつはお願いがあって参りました」
「お願い?」
「はい。さきほど、この空間が作られるきっかけとなった女子が現実世界へ帰りましたね?」
「ええ。私が転移魔法で送ったッス」
「それを知れば翼のものの勢力、人型のものの勢力ともに引き上げ、この交差した空間、都市は消滅するでしょう。そうなればわたくしも消えることになります」
なるほど。
神様が生まれやすくなったこの世界では、こういうことでも神様が生まれるんッスね。
そして、その存在がなくなれば一緒に消えしまう。
「それが運命というのならば受け入れますが、わたくしもできれば在り続けたい。それには依り代となるものが必要なのです」
「依り代、ッスか」
「わたくしの場合、都市の神ですから住む者が必要になります。たとえ一人でも住民という存在があれば都市の空間を確保し、存在することができるのです」
つまり、住む人がいれば都市の神様として存在意義ができるから、この都市は残せるし、都恵子さんも消えなくてすむってわけッスね。
でもその話の流れだと──。
「私に、この交差都市の住民になれということッスか?」
「いえいえ、そうわけではありません」
両手を振って言う都恵子さん。
なんかちょっと顔が赤いッスね。
「彩様はすでに、上位神である
「たしかに、都市神との付き合いはけっこうあるッスからね。それに仕事をする意味でも、都市神との関係は良好に続けたいッス」
私が能力を覚醒させ、
そして、無害を証明してから私らしく仕事をしているのも都市神のおかげ。
だから都市神は私にとって恩人なんッスよね。
それでいて、よその神様の住民になるってことは、決別するのと同義になるッス。
都市神がそれを望んだり、出向みたいに認めるならいいッスけど、私の意思に任されるなら、住民というかたちではない方法で都恵子さんの力になりたいと思うッス。
「ですから、わたくしが彩様にお願いしたいのは、その……」
なんかもじもじしてるッスね。
「彩様の子を生ませてほしいのです」
「!?」
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