　　　　　〈七〉

　ヒズミが女を負ぶって御堂から出て来ると、ミカヅキが直ぐに駆け寄って来て、父のその腰へと抱き付いた。

「──ミカヅキ、もう少し歩けるか…？」

ミカヅキはフルフルと首を横へと振った。ギュウッと回されたか細い腕へ力が込められる。

「……幼子には、酷な道程であろう───」

　ヒズミの背から、もうだいぶ弱い声で女が言った。

「ヨミ…には、恐ろしげで乗れんだろうからな──…」

　先程よりは些か小さくなった気のする黒い山犬が、ヒズミへ抱き付くミカヅキの周りをゆっくりとした動作で歩き回りながら、その鼻先をミカヅキへと近付ける。それに怯えて益々縋り付くミカヅキの様子に弱く笑い、女は掠れる声にて闇夜へと呼び掛けた。

「出て参れ。狐共──、」

　その言葉に妖しげな面を付けた者達が二人、闇の中からユラリと姿を現す。顔は面により分からないが、十七、八程の少年達の様に窺えた。

　少年らはミカヅキの前にしゃがみ込んだり顔を覗き込むなどして、何処か戯(おど)けた様子を見せる。ミカヅキの警戒心が薄れた所で片方が背を差し出すと、ミカヅキは素直にその背中へと負ぶさった。

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