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〈四〉
家の者もまだ起き出さぬような早朝──。それでも使用人達は朝餉(あさげ)の支度に追われているらしく、手際の良い音が響いて来る。
井戸の水を勝手ながら汲ませて貰い、その水にて顔を洗う。秋の近い夏の終わりの朝特有のヒンヤリとした空気が清々しかった。
ヒズミは一人、まだ朝焼けを微かに残す澄み渡った空を見上げる───…。
…………………………
……………………
あれは今から数日前の事だった───。
いつの間にやら日も短くなった夕暮れ時、小さな集落を見掛けたが宿を取るような金も既に無く、幼いミカヅキの為にもせめて雨風を凌げるような寝床を求める内、あの御堂へと辿り着いた。
「ミカヅキ、今夜は彼処(あそこ)で休ませて貰おうか。神様のおウチだ…、怖いモノも入って来られないから安心だよ───」
すっかり日も暮れ、空には細い月が昇っていた。
御堂の直ぐ側まで来た時だった──…。
ヒズミは嫌な、妙な気配を感じ取った。その場へ一歩踏み込むまでは、確かに何の気配も感じられなかったというのに……。
「とうさま、何か怖い………」
ミカヅキもそれを感じるらしく、自分の腕へと縋って来た。その気配は他ならぬ、その御堂の中から。
ヒズミはミカヅキを自分の後ろへと庇(かば)い、ゆっくりとその御堂へと歩みを進めた。
「───とうさまっ!、血…!」
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