第2話
子供は年々大きくなる。今年は着物でやって来た。
「ナリ。少しは大人に見えるでしょう?」
「いつも通り、子供に見える」
嘘がつけない男なわけで、ポロンがぷりぷり怒ってもどうしていいのか分からない。
「ナリは変わらない」
ううっと息をつまらせる。
「……子供じゃないからな」
「そっか。大人かあ」
屈託なく笑うポロンも、いつかは気づく。
ちっちゃくて、まんまるだった子は、瞬く間に背が伸びた。
男は何年たっても年をとらない。夢は続かない。いつか壊れる。
祭りが終わり、ポロンと別れるその時に。
男は、らしくないことをした。
「来年も来るか?」
ポロンは大きな目を、こぼれそうなほど見開いた。
そしてほっぺたを真っ赤に染めて、大きくうなずく。
「あー。何やってんだかね」
相棒が男に口を出す。
「あの子さー」
「わかっている。皆まで言うな」
男は相棒を止める。
わかっている。いつか来なくなる日がくると。
でもどうか、来年までは来てほしい。
願いを叶える神の使いなのに、自分のために祈ってどうする。
一年間、祭り嫌いな男のはずが、祭りを待てずに右往左往。
そんな日がくるなんて、お稲荷様でもわかりゃしない。
待ちに待った秋祭り。日が沈み、夜の帳が下りていく。
ポロンは姿を現さない。
来なくなるのは今日だったかと、男は鳥居の下に座り込む。
眼下の夜店をぼんやり眺めるが、なにやら階段を上る影がある。
「ナリ。ごめん」
泣きじゃくる姿は、初めて会った夜のよう。
「なぜ泣いている」
「髪が上手く結べなくて」
男はポロンの頭を見た。いつも通りくるくる髪のてっぺんに、緑のぼんぼりが止まってる。
「いつもと同じだぞ」
「違うようにしたかったの!」
ポロンの大きな目からぽろぽろ水がこぼれても、どうすりゃいいか、分からない。考えた挙句。
「着物が違う。良い紺だ」
ポロンの頬はますます濡れる。男はますます途方に暮れる。
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