第3話 四次元ポケット的なのが実装された件について

「腹減ったなぁ」


 どこを見ても廃墟とかした街並み。

 そんな荒廃した世界を見ているとどこか寂しく思い無性にお腹がすく。 お刺身食べたいなぁ。


 ここ数日はレベルアップの為にひたすらにゾンビ狩りをしていたが、他にやらなければいけないことは沢山ある。ともかく、この状況を生き残る為にはまず食料の確保を優先すべきだろう。

 この世界のライフラインがどこまでもつかは知らないが早急に手を打つ必用がある。野菜や肉など新鮮な食材は腐るから無理だとしても、可能な限り保存食や缶詰め等の物は確保したい所だ。


 いずれは自分で自給自足する必要も出てくるかもしれない。まだネットは生きているし、今のうちに調べておくか?

 でも最近のインターネットって広告ばかりで大した情報はないんだよなぁ。もういっそ図書館とかにでも行くのもありか。

 まぁそこら辺はおいおいとして、ともかく食材や保存食が手に入りそうなスーパーに向かう事にしよう。



 ◆



『レベルアップしました』

『インベントリが解放されました』


 最寄りのスーパーに向かう道中、ゾンビに遭遇することすること。奴らは僕が普通に生きている人間と気づくや否や一目散に駆け込んでくるのだ。アイドルじゃないんだから勘弁して欲しい。

 何体目か分からなくなったゾンビを薙ぎ倒すといつも通り、またあの通知が脳内に響き渡る。しかし、その通知はいつもと少し違うものだった。


「お、なんか新しいのが解放されたっぽいな」


 RPG関連の機能や詳細はスマホで基本的に確認は出来る。例えばこの大剣とかであれば 、


 %♯?凸喰い《イーター》


 攻撃力:55


 不死特効

 悪食

 何かを認めないと常に唸り声を響かせる大剣。



 こんな風に出るわけである。

 この大剣自体、初期の頃は攻撃力30しかなかったのだが、いつの間にか55に増えている。唸りもするし、心なしか大きくなっている気もする。いつ壊れても可笑しくないぐらいひび割れだらけなのも含め、つくづく変な大剣だ。


「さてさて、今回のはどんな性能かなーんと」


 僕の問いかけに応じてスマホ画面にインベントリの詳細がポップアップした。


【インベントリ】

 所持品を保管できる。中に入れたものは時間経過しない。

 容量:無制限

 備考:生物不可。

 ※中に入れる物の一つの大きさは最大で成人男性程度


「おお、つまり四次元ポケットみたいなもんか。てか無制限で時間経過しないとか高性能過ぎない?」


 パねぇな、これ。

 多少制限はあるものの、現代科学では実現不可能なほど高性能にも程がある。時間経過しないのであれば、スーパーをいくつか走り回れば数年の食料には困らないだろう。


「でも、こういうのって現実に使おうと思うとどうやるんだろ。入れるための穴があるわけでもないし」


 試しにここら辺の石ころに入れとか念じてみた。すると石ころは目の前からパッと消え去ってしまった。そしてスマホのインベントリ画面の中に小さく石ころの欄が追加された。


「おお……まじか」


 更に石ころは出ろと念じたら、今度は掌に現れた。こりゃ使い勝手がいいや。色々な事が出来そうな予感がするね。食料以外にもキャンプ用品とかそういうのもここに入れるのもいいかもしれない。


「っと、色々想像を膨らませる前にやることがあったわ。とりあえずスーパーに向かうか」


 インベントリの機能を色々試すのは後にして、まず気になっていた食料問題を解決することにしよう。



 ◆


「フヒヒ、こりゃ笑いが止まりませんわぁ!」


 付近のスーパー等を回瑠こと数時間。時間が経つのも忘れ一心不乱にインベントリに目につく食料品等をぶち込んだ。順調も順調で、順調すぎて概ね一○年ぐらいは食料に困らないのではなかろうか。

 回収中は大変気分が良く『ウヒョヒョヒョデュフフフフ』と大層気持ち悪そうな笑みが溢れていた気もしなくもないが、誰も見ていないのでセーフ。無駄な衝動買いを楽しむおばちゃんの気持ちがよく分かったわ。まぁ、僕は一銭も払ってないんですけどね。

 ちなみに全部の食料を回収した訳ではないからあしからず。きちんと日持ちするような保存食は残しておいた。生き残った人がいるかもしれないしね。


「にしても、全く人に会わないね」


 スーパーを出て辺りを見回しても人の気配などろくに無い。皆無だ。

 ここ数日、ゾンビを斬り伏せながら自宅周辺を練り歩いているが一度も生きた人間とは会わなかった。基本的に陰キャなので人に会わないことに越したことはないが、ここまで会わないと不安になってくる。

 僕が引き込もっているうちに全員避難したか、はたまた既にゾンビと化したか。


『ウルルルルルル』


 また背負っている大剣が唸った。試しに振り返ってみると、そこにはまたゾンビさんの集団。

 あー大体分かってきた。前々からなんとなくは思っていたけど、この大剣はゾンビ達に唸っているのだ。スマホに出た説明文にも不死特攻とか書いてあったし、この線で間違っていないだろう。


「アぁaアァ……!」


 そしてお馴染みの呻き声を上げてこちらに駆け込むゾンビさん達。いい加減に空気を読んで欲しい……と言いたいところだけど、食料回収した後に現れているから一応は空気を読んでいることになるのか。


「まぁ、空気を読んだところで結果は変わらないんだけどねっ」


 手慣れた動作で大剣を肩に担ぎ上げる。目の前にはゾンビの大群。普通の人であれば失禁レベルの光景だが、僕にとっては真逆。自然と口端がつり上がっていく。

 さぁて、楽しい楽しいレベル上げの時間だ!!


 ◆


 北原ムンク

 Lv9

 職業:不死殺し


 HP 260

 MP 19

 SP 39


 筋力 20

 耐久 18

 俊敏 21

 魔力  9

 運  12(-999)


 skill –


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