第286話 スカイテラスでのガーデンパーティ
水平線にオレンジ色の見事な夕陽が沈む頃、ガーデンパーティが幕を開けた。
参加者全員で乾杯することとなって、ジェスティーナがオレに言った。
「ここはパーティの主催者が乾杯の音頭を取るべきよね」
「え~、またオレかよ」
オレは何も考えていなかったので、アドリブで乾杯の音頭を取った。
「え~、本日は急遽お誘いしたにも拘わらず、こうしてたくさんの方にお集まり頂き、ありがとうございます。
本日は、リゾートのレストランで作ってもらった料理の他に、王都の宿『踊る銀ねこ亭』のオーナーシェフにお願いして銀ねこ亭名物の美味しい料理の数々を作っていただきました。
腕に撚りをかけて作って下さったシェフに感謝しながら召し上がって下さい。
さて、旅行は今日で3日目ですが、皆さんリゾートのアクティビティは楽しまれましたか?
もし、まだの方がいらっしゃったら、帰るまでにぜひ1度お試し下さい。
私は個人的にジップラインがオススメです。
さて、美味しい料理が控えていますので、挨拶はこれくらいにして乾杯しましょう。
皆さん、グラスをお持ち下さい。
準備は宜しいですか?」
オレが周りを見回すと、みんな準備は整っているようだ。
「それでは、今日ここに集まった皆様方のご健康と、青い海と美しいオレンジ色の夕陽に、カンパーイ!」
全員がグラスを掲げて、周りの人々と乾杯し、それが終わると一斉に拍手した。
今日のパーティは、大きなクーラーボックス5つに冷え冷えのドリンクが用意され、料理は好きなものを自分で取るセルフサービススタイルである。
オレは、銀ねこ亭の女将と亭主のところへ行って料理の礼を述べた。
「今日は、無理言って料理を作ってもらい、ありがとうございます」
「カイトさん、いいんだよ~…
この人ったらさぁ、仕事してる時が一番生き生きしてるんだから。
若い時から仕事ばかりだったから、遊び方を知らないんだよ」
「そうなんですか…
ん~、遊びじゃないアクティビティとなると…
釣りなんてどうですか?
けっこう釣れるって言う話ですよ」
亭主はオレに恐縮しているのか、何も喋らず頭をぺこぺこ下げるだけだった。
「今日はホテルの珍しい料理もありますから、楽しんでいって下さいね」
「カイトさん、気を使ってくれてありがとうね~。
パーティ、じっくり楽しませて貰うよ」
そう言うと、2人は頭を下げながら、料理を見に行った。
「カイトさま、何かお料理取ってきましょうか?」
エミリアが、オレに気を利かせて言った。
「エミリア、ありがとう。
ん~、銀ねこ亭の料理が食べたいな、何か適当に見繕ってくれるかな」
「了解しました」
エミリアは、料理を取りに行ってくれた。
今では、アクアスター・リゾートの社長になったエミリアをメイドのように使って申し訳ないと思ったが、滅多にない機会なのでオレの傍で世話を焼きたかったのだろう。
「カイトさまぁ~!」
誰かが大声でオレの名を呼んでいる。
振り返ると、オレが苦手なクラリスが手を振り、豊満ボディをブルンブルン言わせながら走って来た。
「会いたかったですぅ~」
クラリスは、人目も憚らずにオレの片腕を掴み豊満な胸を押し付けて来た。
「く、クラリス、何故ここに…」
「なぜって、カイト様が呼んでくれたんじゃないんですか?」
「えっ、呼んだっけ?」
そう言えば、ジェスティーナがオレに新しい秘書を紹介するからパーティーに呼ぶと言っていたが、クラリスもフローラの秘書として採用していたのだった。
「もぉ~、酷いですよぉ、私がこんなにお慕いしているのに~」
「クラリス
少し静かにしろ、カイト様が迷惑してるじゃないか」
そう言ったのはステラであった。
オレの専属護衛を務めるステラは、クラリスとは旧知の仲で、同じ冒険者パーティの元メンバーであり、気心が知れているのだ。
「もぉ~、ステラまで…
わたしだって、一応傷つくのよぉ~」
クラリスは、頬を膨らませ、怒っている振りをした。
そこへ、料理を取りに行っていたエミリアが戻ってきた。
「カイトさま、こんな感じで宜しいですか?」
「あ、あれ、このメンバーって…
もしかして、あの旅行の時のメンバーじゃない?」
クラリスが言った。
言われて見ればその通りだ。
オレの最初に旅に護衛のステラと案内人のクラリスが同行し、途中旅亭アルカディアで働いていたエミリアを半ば強引にスカウトし、その後一緒に旅を続けたのである。
「ホントに懐かしいわね~」
「あの時カイト様、エミリアを引き抜くのに必死でしたよね~」
クラリスが笑いながら言った。
「わたし、カイト様があんなに強引だとは思いませんでした。
でも、今は引き抜いて下さったこと本当に感謝してます」
エミリアがしみじみと言った。
「カイト様、次に旅に行く時も、わたしが案内人努めますからね」
エミリアがオレの腕を引っ張りながら言った。
「えっ、でも秘書の仕事はどうするんだ?」
「あ~、そっか~。
でも、どんな事をしてでも付いて行きますからね!」
クラリスは本気のようだ。
因みに次の旅の予定はまだ無い。
「カイトさま~」
今度は、リオナ、トリン、マリンの3人がアイリスとレイチェルを連れてやって来た。
「カイトさま、うちの有望新人アイリスをご紹介します」
リオナがオレに紹介してくれた。
アイリスと話すのは、今回が初めてだ。
「カイト様、アイリス・リーンです。
どうぞ宜しくお願いします」
アイリスは、人懐っこい笑顔でオレに挨拶した。
細身の割には美しくボディラインで、美脚モデルのような綺麗な脚、背中までの金色のポニーテールが良く似合う超絶美少女である。
「こちらこそ宜しくね。
そう言えばアイリスは、ステラの
「はい、ステラ姉様は父の兄の長女なんです」
「へ~、やはり血は争えないと言うか、やはり似ているけど、雰囲気は全然違うね」
「そうなんです、私は幼い頃から大人しい物静かな子でしたが、ステラ姉様は小さい時からやんちゃで手が付けられなかったって、叔父様が話してました」
「あ、アイリス…
今の言葉、もう一度言ってごらん。
誰がやんちゃだって?」
そう言ったのは、当のステラであった。
オレの背後で、護衛しながら今のやり取りを聞いていたらしい。
「あら…、ステラ姉様、そこにいらしたのですか?」
「何を白々しい、わたしがここにいるのを知ってて言ったんでしょ。
後でお仕置きだからね」
「怖い~、カイトさま、助けて下さ~い。
ステラ姉様のお仕置き、手加減なしなんです」
「何を人聞きの悪い、いつも手加減してるでしょ」
ステラは普段よりも饒舌で、まるでアイリスと掛け合い漫才をしているようだった。
「ところでアイリス、君は歌がとても上手だとサクラから聞いてるけど、ここで何曲か聞かせてくれないかな?」
「えっ、歌ってもいいんですか?」
「もちろん…」
「伴奏は、レイチェルにお願いしていいかな」
「はい、カイトさま!」
レイチェルは笑顔で、オレの願いを承諾してくれた。
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