第269話 7人目の婚約者
レオニウス国王に、まんまと一杯食わされたオレは、セレーナ王女と一緒に『ゲート』でシュテリオンベルグ公爵領公邸へ戻った。
そしてそのまま18階の『ヴィーナス・ラウンジ』へと向かった。
ヴィーナス・ラウンジとは、オレの正妻となる
因みに、17階には側室専用のエンジェル・ラウンジもあるが、両方ともハーレムメンバーであれば、誰でも入室することできるルールとなっていた。
ヴィーナス・ラウンジには、6人の
ラウンジに入ると、ジェスティーナが気づきオレに声を掛けた。
「カイト、お帰りなさい。
あら、お連れの方はどなた?」
「ただいま…
みんなに紹介するよ、彼女はセレーナ…
7人目の
「えっ、7人目って、どういう事!」
「そんなの聞いてないわよ」
「あらっ、あなたは…」
「カイト、猫の子を貰って来るみたいに次から次へと…ホントにもぉ~」
などと女性陣は騒然となった。
「猫の子とは、失礼な…
こちらは、アプロンティア王国第2王女セレーナ王女殿下だ」
オレがそう言うとセレーナがカーテシー(屈膝礼)の姿勢を取り、礼を尽くしてみんなに挨拶した。
「初めまして、
この度、ご縁がございまして、シュテリオンベルグ公爵閣下の婚約者として末席を
「えっ、ホントにアプロンティアのお姫様なの?」
「また、カイト好みのキレイな方ねぇ」
「ご丁寧な挨拶ありがとうございます」
「こちらこそ、宜しくお願いします」
6人の
「セレーナ王女は、マリウス王子の婚約者セリーナ王女の双子の妹なのよ」
フローラ王女とリアンナ王女は、既にセレーナ王女と面識があり、同じ
「2人ともそっくりで、一緒に居るとどちらがどちらか分からなくなるくらいなの」
見分け方は首筋にあるホクロの位置だそうで、姉が右で妹が左だそうで、普段は腰まである長い髪に隠れて見えないから分からないそうだ。
身分が王女である婚約者はセレーナ王女で5人目となり、オレの称号『プリンセス・キラー』もレベルがまた一段上ったようだ。
紹介が終わった後、セレーナが使う部屋をオレ自らが案内した。
セレーナの専用室は120平米ほどの広さで、専用のスカイテラス、クイーンサイズのベッド、テーブル&ソファ、壁面収納、ウォークインクローゼット、ジャグジーバス、トイレが付いている。
「こんな広いお部屋、私一人で使っても宜しいのですか?」
セレーナは余りの広さに驚き、感激していた。
そして、オレが先導してルームツアーを開始すると、見慣れない室内設備を発見する度に質問してきた。
「カイト様、これは何ですか?」
「これは、エアコンと言って、部屋の温度を自動的に調節してくれる装置だよ」
「え~っ、そんな夢のような装置があるのですか?」
セレーナは、次々とオレに質問して、ここの生活に少しでも早く慣れようとしていた。
その後、ヴィーナス・ラウンジにあるダイニングバー&キッチンや温泉ジャグジーを案内し、17階のエンジェル・ラウンジで愛妾たちにセレーナを紹介した後、16階の領主執務室などを見せて歩いた。
それから、14階のスタッフ専用ラウンジにいた人達にセレーナを紹介して、最後に屋上の空中庭園、ドーム型ペントハウス、展望露天風呂、プライベートプール、プールサイドバーなどを見せて今日の館内ツアーは終了となった。
ホテルやロープウェーなどの紹介は、また後日だ。
セレーナの部屋へ戻ると、アプロンティア王宮の自分が住んでいた部屋へ一瞬にして戻ることができる『ゲート』を設置するかどうか尋ねた。
「カイト様、私の家は今日からここです。
ですから、そう簡単に元いた場所に戻る訳には参りません」
そう言って『ゲート』は必要ないとオレに断った。
オレは、セレーナの覚悟のほどを思い知らされた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日、アプロンティア王国第2王女のセレーナ王女がオレの
国王は、マリウス王子に第1王女のセリーナ王女との縁談があった際に、レオニウス国王から内々にこの件を聞かされていたそうだ。
「クラウス国王陛下…
私は、アプロンティア王国国王レオニウス3世が次女、セレーナに御座います。
本日は、拝謁の栄を賜りましたこと、恐悦至極に存じます。
此度、私はシュテリオンベルグ公爵閣下の7人目の婚約者となりました。
姉のセリーナ共々、宜しくお引き回しの程、お願い申し上げます」
セレーナ王女は、さすがは王族と思わせる凛とした立ち居振る舞いと言葉遣いで、クラウス国王に拝謁した。
「セレーナ王女、良くぞソランスター王国へ参られた。
カイト殿の嫁となると言うことは、儂の娘たちとも縁を結ぶこととなる。
此奴は儂の娘を3人共掻っ攫いおった極悪人であるが、根は悪い男ではないから、きっと良くしてくれる筈じゃ、新しい住処に早く慣れて心安らかに過ごされよ」
「心優しきお言葉、恐縮でございます。
クラウス国王陛下と縁続きと成れましたこと、たいへん嬉しく存じます。
今後とも、何卒宜しくお願い申し上げます」
これほど、立派な口上を延べられる女性は、そうは居ないはずだ。
王族として厳しく躾けられたに違いない。
その後、国王に相談してセレーナの専属護衛を2名選定することとなり、セレスティーナを通じて聖騎士隊で人選を行って貰うことにした。
既に王都に来ていた双子の姉のセリーナ王女が呼ばれ、再開を喜びあい、二人は隣室で手を取り合って積もる話に花を咲かせた。
その間、オレは国王と懸案事項について打ち合わせをした。
「カイト殿は、レオニウス国王にまんまと一杯食わされたと思っておろう。
しかし『女神の使徒』である貴公と縁を結びたいと思う勢力は、今後も手を変え品を変えアプローチしてくるであろう。
簡単に引っかからぬよう、今後は十分に気を付けるのじゃぞ」
「はい、陛下のお言葉、心に刻みまする」
次に
「それにしても、数百年に1度の災厄に遭遇するとは、運が悪いのう」
国王によると、前回
それは、ソランスター王国が建国するより150年も前の話だ。
その当時、現在のソランスター王国一帯を支配していた一族が、支配地域を拡大しようと目論見、ミラバス山の北側に進出して、都市を作ろうとした矢先に
「ほれ、カイト殿も知っておろう…
海辺にある盗賊共が使っていた石作りの砦、あれは270年前にあの辺に都市を作ろうとした連中が作った名残だそうじゃ」
なるほど、そう言うことだったのか。
女神フィリアから神域一帯の権利を任せると言われたのは、クラウス国王にはまだ内緒にしておこう。
「それにしても、アクアスターの温泉は、ほんに良い温泉じゃったのう。
暫く入れんと思うと、余計に湯に浸かりたくなるわい」
「はい、恐らく掘り直しになる思いますので、泉質も若干変わるかと存じます」
「それも、致し方あるまい。
復旧工事が早く終わって、客が戻ってくれれば良いのじゃが…」
確かに、その心配はある、
営業再開までに対策を立てて置かねばなるまい。
「陛下、別件でご報告がございます」
「うむ、カイト殿、申すが良い」
「省庁舎建設の件でございますが、明日から工事に入る予定でございます
工期は約1ヶ月半を予定しております」
「そうかそうか、儂もどんなモノが出来るか楽しみにしておるぞ」
後は、王室も出資しているエメラルド・リゾートが完成し、従業員の実地訓練期間に入ったことを報告した。
「カイト殿、オープンする前に儂もそのエメラルド・リゾートを見てみたいんじゃが、それは可能か?」
「はっ、最上階に陛下専用のお部屋をご用意いたしておりますので、いつでもご滞在いただけます。
それに地下から温泉も湧出しましたので、アクアスター・リゾートとは違う温泉が楽しめます」
「うむ、そうか、そうか…
それは楽しみじゃのう。
では、日程を調整するとしよう」
クラウス国王は、満面の笑みを浮かべた。
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