第258話 航空産業省の懸案事項

 オレは、航空産業大臣の拝命により、新庁舎の設計と国際航路開設のルール作り、それに伴う既存事業の権限委譲と言う難問を抱え、それからの1週間寝る間も惜しんで働いた。

 そして、頭をフル回転させて、まずは2つの大きな課題に目処を付けた。


1.航空産業省・情報省が入る新庁舎の設計

 新庁舎は、王都初となる地下2階、地上12階建ての高層建築とした。

 実は、領都エルドラードの複合商業施設併設型市庁舎のデザインを流用したのだ。

 1から図面を起こせば、それだけでも時間は掛かるが、規模的に似ていたのでお誂え向きだった。

 それに、どうせ建てるなら、今までにないインパクトのある建物にしたいし、地域活性化にも繋げたいと思ったのだ。

 【複合商業施設併設型合同庁舎(案)】

 B2F 動力室、倉庫、書庫、給水槽、浄化槽

 B1F 警備員駐在所、簡易駐車場、多目的ホール

  1F 受付、ギャラリー、フードコート、医務室、セキュリティゲート

  2F 空中庭園、レストラン、カフェ、ショッピングモール

  3F 空中庭園、レストラン、カフェ、ショッピンクモール

  4F 空中庭園、レストラン、カフェ、ショッピンクモール

  5F 航空産業省事務室

  6F 航空産業省事務室

  7F 航空産業省事務室

  8F 航空産業省事務室

  9F 情報省事務室

 10F 情報省事務室

 11F 大会議室、中会議室、小会議室✕3、大食堂

 12F 大臣執務室、副大臣執務室✕2、秘書官控室、展望ラウンジ

  RF 飛行船ポート、飛行船待合室、展望露天風呂


 屋上には、飛行船ポートがあり、専用エレベーターでそのまま、大臣執務室へ直行できるが、今は『ゲート』があるので用途は限られる。


 商業施設部分と庁舎部分は、直接行き来できないよう入口やエレベーターも分離し、セキュリティは万全を期した。

 領都エルドラードの複合商業施設併設型ビルと大きく違うのは外壁の色が白いのと5~6階部分のコンサートホールが無いこと、12階に展望露天風呂を設置したことくらいなので、設計変更に掛かる時間を大幅に短縮できたのである。

 当初予想していたよりも大きな建物になったが、国王に複合商業施設併設型庁舎のメリットを説明して設計と施工の承認を得た。

 工期は1ヶ月半を予定している。


2.国際航路開設の際の身分証明の問題

 ①身分証明の代わりにステータスカード(ステカ)を使う

 『身分証明書』の問題は、女神フィリアから提案されたステカとステリンを採用することで解決した。

 航空券の購入をキャッシュレス決済に限定することで、飛行船に乗りたい客はステカまたはステリンを作る必要があり、結果的に搭乗客は全員『身分証明書』を所持することになる。

 ステカは複数枚作成することが可能なので、忘れてもその場で作れば良い。

 ステカは落としても登録者本人が持っていなければステータス情報は表示されないし、使えないからセキュリティ的にも安心だ。


 ②ステカ(ステリン)の発行手数料

 ステカの発行手数料は、キャッシュレス決済の普及促進を目的に、小銀貨2枚(日本円で2000円)と安く設定した。

 リング型のステリンの発行手数料は、小銀貨3枚(日本円で3000円)とした。

 原価はステカが小銀貨1枚(1000円)、ステリンが小銀貨1枚と大銅貨1枚(1200円)なので、かなりの利益が出る。


 (※余談その1:キャッシュレス・チャージ)

 ステカにネットバンクを登録すれば口座からチャージできることが分かり、オレが契約しているパラワバンク(正式名称:パラレルワールド・ネットワークバンク)を登録してキャッスレスでチャージできるようにした。

 ただし、この世界にはネットバンクが存在しないので、今のところこの機能を使えるのはオレだけである。

 (※余談その2:ポイント還元 )

 ステカでキャッシュレス決済を利用すれば、ポイントが還元される。

 ポイントは、200ポイントで1GODと交換できる。

 因みにGODは、仮想通貨の単位で1GODは日本円換算で200円である。

 ポイント還元率は1GOD利用で2ポイントなので1%だ。

 (※余談その3:ステカの契約種別)

 ステカの契約種別は3種類あり、ステカ自体で契約種別が変更できる。

 ◎ステカ・スタンダード

  年会費は無料

  ポイント還元率は、1GOD当たり2ポイント(1%)

  年間1千GOD(金貨2枚)以上使うと、別途1000ポイント還元される。

 ◎ステカ・プレミアム

  年会費は5千GOD(金貨10枚=100万円)

  ポイント還元率は、1GOD当たり6ポイント(3%)

  年間5千GOD(金貨10枚)以上使うと、年会費分が返金される。

 ◎ステカ・VIPプレミアム

  年会費は5万GOD(金貨100枚=1000万円)

  ポイント還元率は、1GOD当たり16ポイント(8%)

  年間5万GOD(金貨100枚)以上使うと、年会費分が返金される。

 異世界ネット通販パラワショップでもキャッシュレス決済は使えるし、金貨100枚位など1回の買い物で使うこともあるので、ステカVIPプレミアムにしておけば、かなりお得に使えるだろう。

 因みに、どれか1種類のステカをプレミアムカードに変更すると、他に所有するステカやステリンもプレミアムカード(カード・リング自体が金色に光る)となるのである。


 ③ステリンの販売会社

 ステカとステリンの販売会社、アクアスター・ペイメント株式会社を設立した。

 こういう分野が得意そうなアスナに社長をお願いした。

 アイドルの写真をプリントした限定ステカの販売や、宝石を飾ったジュエリーステリンの販売など、アイデア次第で有望なビジネスに成長しそうだ。


3.飛行船搭乗時の手荷物検査、通関、検疫等の対応

 ①搭乗並びに持込み禁止品リスト

 飛行船ポートと飛行船自体に搭乗・持込拒否判定する機能があるので、乗船時の手荷物検査が不要であるが、何を禁止物に設定するかリストアップする必要がある。

 因みに持ち込み禁止品の設定は、飛行船ごとに設定可能であることが分かった。

 それも客室と貨物室に分けて禁止設定が可能であり、飛行船の用途に応じて柔軟に設定し、不具合が発生した場合、順次項目を追加変更することにした。

 ◎一般客室の搭乗拒否リスト

  盗賊、窃盗犯、傷害犯、殺人犯、強盗犯、放火犯、性犯罪者、精神異常者、詐欺横領犯、脅迫恐喝犯、著しい体調不良者、手荷物規定違反者

 ◎一般客室の持ち込み禁止品リスト

  銃、刀剣、先の尖った金属製品、凶器、麻薬、劇毒物、火薬、爆発物、病原体、攻撃可能な魔導具

 ◎一般貨物室の搭載拒否リスト

  凶器、麻薬、劇毒物、火薬、爆発物、病原体

 ◎適用事例

  例えば乗り合い飛行船に護衛が業務で乗船する場合は、ソードは貨物室で預かり、到着地で返却する仕組みを作る。

  他の持ち込み禁止品も同様。


 ②船内持ち込み手荷物

  大きさ:3辺合計130cm以内(縦60cm、横40cm、高さ30cm以内

  重 量:12kg以内

  個 数:1個まで

  備 考:上記の何れかを超える場合は、貨物室に預ける必要がある。

      その場合の料金は、1個まで無料、2個以上は有料(運賃の8分の1)


4.飛行船のチェックイン及び予約等について

 ①チェックイン規定

 搭乗可能時刻:飛行船離陸予定時刻の60分前から10分前

 チェックイン:上記時間内に飛行船ポートの当該搭乗ゲートを通過すること。

 予約認証方法:ゲートの自動チェックイン機にステカを翳し、認証を行う。


 ②搭乗券の予約・購入・発券・予約変更・キャンセル

  予約場所:飛行船ポートまたは提携代理店(※1)のキオスク端末で予約可能。

  購入方法:予約端末にステカを翳し、日時、行先、枚数を指定して購入する。

  購入枚数:購入できるのは、1人2枚までで、事前の座席指定も可能。

  支払方法:ステカまたはステリンによるキャッシュレス決済のみ。

  チケット:チケット情報はステカに記録、チケットレスでチェックインできる。 

  提携代理店:アクアスター・トラベル、バレンシア商会他

  予約期間:離陸予定日時の90日前から60分前まで購入可能。

  予約拒否:ステカの情報が搭乗拒否リストに該当する場合は、購入不可。

  予約変更:不可、予約変更する場合はキャンセルして再予約が必要。

  登乗者変更:不可、変更する場合はキャンセルして改めて予約が必要。 

  キャンセル:離陸予定日時60分前までキャンセル可能。

  キャンセル料:無連絡・当日100%、前日50%、前々日25%

  

 ③ホテルとレストランの予約

  航空券の購入と同時に宿泊地のホテルやレストランが予約可能

  ただし、アクアスター・トラベル提携先のホテル、レストランのみ。

  因みにこのキオスク端末でASR39等の公演チケットも購入できる。

  (※余談)

  このキオスク端末はオレがシステム設計し、スーが開発した機械。

 

 ⑥プレミアムシート

  飛行時間6時間を超える長距離便にはプレミアムシートを10席程度設ける。

  プレミアムシートは船体前列展望席のセミフラット・リクライニングシート。

  クジラ型飛行船(座席数240席以上)にのみ座席の設定がある。

  価格は一般席の4倍とし、茶菓と食事のサービスを提供する。


5.飛行船の運行に関して

 ①乗務員

  基本的に全自動運行。

  飛行時間4時間を超える長距離便は100名当たり2名の乗務員が搭乗する。

  上記の飛行時間以下の航路は、無人または1名の乗務員で運行する。


 ②使用機材 

  主要都市間はクジラ型飛行船(定員100~360名)を使用する。


 ③航路

  3王国王都間周遊(正逆2ルート)、その他は別途検討


 ④航空管制

  航空管制は飛行船ポートと飛行船のメインコンピュータ間で自動的に調整する。


 このような感じで文書化した創案を国王に説明して了承を得たのである。

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