第198話 迎賓館での歓迎の宴
鮮やかなオレンジ色の夕陽が山影に消え、夜の
迎賓館のメインホールは、天井、壁、床に至るまで、白大理石に
その夜、歓迎の宴に招かれたのは、王太子の婚礼に出席のため迎賓館に滞在中の7カ国の王族とその関係者である。
定刻になると招待客は、三々五々メインホールに設置されたフラワーアーチを
この夜、ジェスティーナは金色の髪をアップに結い上げ、エメラルドを散りばめた銀のティアラを戴き、純白とスカイブルーのパーティドレスで着飾っていた。
一方、アリエスも金色の髪をアップに結い上げ、ルビーを散りばめた銀のティアラを戴き、
オレはロイヤルブルーのタキシードで決め、2人の王女を両脇にエスコートしながら、フラワーアーチを
入口ではアプロンティア国王夫妻が、オレたちを
「ようこそ、ソランスター王国使節団の皆様、お待ちしておりましたぞ」
滋味溢れる微笑みを讃え、オレたちを迎えたのは、レオニウス国王とグレイス王妃を始めとする王室一家(王太子を除く2人の王子と3人の王女)の面々であった。
「レオニウス国王陛下、王妃殿下、王室の皆様、お初にお目にかかります。
当使節団の代表を努めます、カイト・シュテリオンベルグでございます。
本日は、お招きに預かり、光栄に存じます。
陛下、こちらがソランスター王国第2王女のアリエス、その隣りが第3王女のジェスティーナでございます」
オレが王女たちを紹介すると、アリエスは
「国王陛下、王室の皆様、お初にお目に掛かります、アリエスでございます。
この度は、お招きいただき有難うございます」
続いてジェスティーナも
「レオニウス国王陛下、王妃殿下、皆様、お目に掛かれて、光栄に存じます、ジェスティーナにございます。
この度は、お招きいただき光栄に存じます」
因みに
「あなた方は花嫁の身内、言わば主賓なのですから、当然のことです」
「この度は、王太子殿下のご成婚おめでとう御座います」
オレは、国王に祝いの言葉を述べた。
「シュテリオンベルグ伯爵のお噂は、アプロンティア王国にも聞こえておりますぞ…
それに、こんなお美しい王女姉妹お二人とご婚約されているとは、噂通り中々のやり手のようですなぁ」
そう言って国王は豪快に笑った。
レオニウス国王と会うのは、今日が初めてであるが、思っていたよりも親しみやすそうな人物だ。
「国王陛下、後が支えておるようですので、お話はまた後ほど…」
そう言ってオレたちは、アプロンティア国王の傍を離れ、侍従に案内され席へ付いた。
定刻になると、会場の照明が一部を残して落とされ、中央の雛壇付近にスポットライトが当てられた。
するとレオニウス国王とグレイス王妃が立ち上がり、歓迎の言葉を述べた。
ご列席の皆様方、この度はようこそアプロンティア王国へお出で下さいました。
また、王太子ライアスの婚礼の儀にご参列のため、遠路遥々お運び下さいましたこと、重ねてお礼申し上げます。
本日は
なお、後ほど王太子ライアスと花嫁となられるフローラ王女が、登場して皆様にご挨拶する予定で御座います。
2人に祝福のお言葉を賜れば、幸甚に存じます」
その後、外務大臣のライゼン子爵が乾杯の音頭を取り乾杯した。
出席客がワイングラスを掲げ、グラスを合わせる甲高い音が辺りに響いた。
それが合図のように宴が始まった。
今夜の宴の出席者は、全部で70名程度であろうか。
アプロンティア王国王太子とソランスター王国第1王女の成婚の儀に出席するため、各国から派遣された代表団であり、その殆どが王室関係者である。
その他にこの国の王子や王女、重臣たちが出席しているのだ。
自席に供された前菜、スープ、メインディッシュ5種以外は、会場の左右に並んだ12の
その中から自分好みの品を選ぶと担当の侍女が皿に取り分けてくれるハーフビュッフェスタイルなのだ。
特にスイーツビュッフェは36種類も有るそうでアリエスとジェスティーナは、各テーブルをつぶさに見て歩き品定めしていた。
スカイブルーのパーティドレスで着飾ったステラが、護衛として王女たちの後ろに控えているので安心して見ていられた。
ステラもリーン伯爵家の令嬢なのだから、この席に違和感なく溶け込めるのだ。
しかし、もし戦闘となれば、恐らくこの場にいる誰よりも強いのは間違いない。
アリエスとジェスティーナは、好みのスイーツを幾つも持って戻って来た。
「カイトー、このケーキとっても美味しそうよ」
「見てみて、こっちのケーキ、初めて見るケーキよ!」
などと言って2人とも燥いでいる。
気を効かせて、オレの分まで持って来てくれたそうだ。
ちょうどその時、アプロンティア国王が主だった王族と家臣たちを引き連れ、オレたちのテーブルへやってきた。
「ソランスター王国使節団の皆さま、遠路遥々お越し下さいまして、ありがとうございます」
国王とは思えない物腰の低さで、オレたちに語りかけた。
その両脇にはグレース王妃、第2王子のジュリアス、第3王子のレナード、第1王女のセリーナが立ち、オレたちに自己紹介した。
「ところで、シュテリオンベルグ伯爵は、女神様の加護を受け、温泉リゾートを開業し、飛行船の元締めをしていると聞きましたが、本当ですかな?」とレオニウス国王が聞いた。
「陛下、どこでそのようなことを…」
「どこでも何も、
アプロンティア王国でも、当然情報収集を行う部署はあるだろうし、特に秘密にしていることでも無いので、それ位の情報を持っていても不思議ではない。
「今度、その辺の話をじっくりと聞きたいのだが…
婚礼の儀の後にでも時間を取ってはくれぬだろうか?」
「レオニウス陛下、承知致しました。
後ほど、日時をご相談させて下さい」
「おお、そうであるか。
シュテリオンベルグ伯爵、楽しみにしておりますぞ」
そう言うとレオニウス国王は、隣のテーブルへ向かった。
宴も盛り上がってきた頃、王太子とフローラ王女が到着したとアナウンスがあった。
「皆様、ライアス王太子殿下とフローラ王女のご登場でございます」
「拍手をもってお迎え下さい」
数分後、場内の照明が落とされ、中央の
すると扉が開き、赤い絨毯が敷かれた階段を1組の男女が、ゆっくりと下りてきた。
女性はオレたちが良く知るフローラ王女、男性の方はライアス王太子であろう。
2人は階段を下りながら、にこやかに手を振っていた。
それを見てオレとジェスティーナとアリエスは、お互いの顔を見合わせた。
フローラの隣にいるのは、昼間バザールでアリエスとジェスティーナをナンパしてきたチャラ男ではないか。
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