第186話 アンジェラとの愛の資本提携

 アンジェラと男と女の関係になってからは、彼女が帰るまでの1週間、足繁く部屋へ通った。


「最近はアンジェラさんに随分ご執心ですこと…」

 ジェスティーナにそのような嫌味を言われるほどである。


 その理由は、アンジェラの体だけが目的ではなく、サエマレスタ・リゾートに導入する予約管理システムの打ち合わせをすると云う名目もあるのだ。


「アンジェラ、ところでサエマレスタ・リゾートにホテルは幾つあるの?」

 既にオレとアンジェラは、名前で呼び合うまでに信頼関係を築いていた。


「グループ傘下のホテルは7つで、全てサンドベリア海岸沿いにあるの。

 でも、それなりに離れているから、予約状況を共有するのが大変なのよ」


 サエマレスタ・リゾートのホテルは、最短で500m、最長で7kmも離れているので、毎日1度、1週間先までの空室状況をスタッフが馬車で行き来して聞き取り、それぞれのホテルに知らせていたそうだ。


「なるほど、それは大変だね」

 と云うことは、本社にサーバーを置いて7つのホテルそれぞれをネットワークで繋ぎ、クライアントPCを置く必要があると云うことか。

 当初は、本社のみを想定していたので費用は少なくて済むと思っていたが、そうなると初期費用は4倍、ランニングコストは7倍も掛かるのだ。


 アンジェラにその事を伝えると困惑した表情を見せた。

「えっ、そんなに掛かるの?

 予約が共有できるのは嬉しいけど、あまりコストが掛かるのは困るわ」


 便利だとは言え、費用が掛かり過ぎるのは考えものだ。

 アンジェラの言葉は、経営者としては当然の感想である。


「何か良い方法はないかしら?」


「ん~、他の方法がないか、考えてみるよ」


 考えが行き詰まり、することが無くなると、あとはベッドの上でアンジェラとひたすら愛し合うのみである。

 これまでは、ビジネスパートナーとしか見ていなかったが、一線を超えてみればオレと彼女の相性は良すぎる位に良く、アンジェラが帰るまでの1週間、お互いをむさぼるように愛し合った。


 アンジェラの極上ボディは、大人の女を感じさせ、官能的で実にエロく、素晴らしいの一言であった。

 鮮やかな桜色の頂きを持つたわわな2つの果実、トップモデルのように見事なウェストからヒップにかけての芸術的な曲線、きめ細かく吸い付くような白く滑らかな肌、腰まであるチェスナットブラウンの美しい豊かな髪、理想的な顔の輪郭、上品で綺麗な鼻筋、カールした長いまつげ、サファイアブルーの知性的な大きな瞳、魅惑的な光沢を放つやや厚めの唇、しかも才媛の誉れ高き美女とくれば非の打ち所がない。


 加えてオレと繋がった時の感度は抜群で、オレにゾクゾク身震いする程の快感を与えるのだ。

 オレはいつの間にか彼女に夢中になっていた。

 そのことをアンジェラに伝えると『うれしい…』と言ってくれた。


 その日は朝、昼、晩の3回お互いの体を貪りあったが、性欲は全く衰えなかった。

 トリンの造ってくれたスタミナポーションが優秀だと言うのもあるが、もうすぐ離れ離れになるという事もあり、時間を惜しむように愛し合った。


 近くにいれば、毎日でも体を重ねたいと思うが、彼女も責任ある立場にあり、自分の本拠に戻らなければならないのだから、そうもいかないのだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 アンジェラの部屋を後にし、深夜森の露天風呂に入り、オレはひとりで考えた。

 ランニングコストが増えるのであれば、それをカバーするだけの売上と利益が増えれば良いのではないか?


 それをベースに色々と考えを巡らせている内に、突然ひらめいた。

 サエマレスタ・リゾートの予約を王都でも受付れば良いではないか。


 飛行船の定期航路開設により、ソランスター王国には、旅行ブームが起きており、王都からの旅行客は増加傾向にあるのだから、これに乗らない手はない。

 これまでは、旅行客が現地に到着してから宿泊先を探すしか無かったが、出発前にホテルが予約できれば便利だし、何よりも安心だ。


 それに『バレンシア・リゾートサービス』と云うアクアスター・リゾート専用の予約受付会社もあるのだから、これを発展進化させて他のホテルの予約も受け付け出来るようにすれば良いのだ。


 サエマレスタ・リゾートに予約手数料の負担は発生するが、独自のサーバーを置く必要がなくなり、端末PCとネットワーク機器を設置すれば済むのだから、初期コストは大幅に削減できる。

 もちろん毎月ネットワーク利用料等のランニングコストは発生するが、費用を平準化できるから、ホテル側にも十分にメリットは有る筈だ。


 更に一歩進めて、ソランスター王国内にあるホテルに予約システムを売り込めば良いではないか、と云う考えが浮かんだ。


 例えば、セントレーニアのアルカディア・グループだ。

 恐らく、予約管理は、アルカディア・グループもサエマレスタ・リゾートと大差ないレベルであろう。

 それに、これから建設計画を進めているエメラルド・リゾートの予約も、これで一気に解決するではないか。


 そのためには、各ホテルごとの空室管理が必須であり、予約管理システムの大幅な改良が必要となる。


 翌日、オレは『バレンシア・リゾートサービス』を王国内全土をカバーする旅行代理店とするアイデアをアスナに伝えた。


「カイト、それ、ナイスアイデアよ」


 王国内のホテルと『バレンシア・リゾートサービス』が代理店契約して、ホテル予約を代行すれば、ホテル側は独自で予約管理する必要が無くなるし、顧客側は旅行代理店に行けば予算や立地、設備など好きなホテルが選べるようになるので、両者にメリットがあるのだ。

 アスナは、これが如何いかに有望なビジネスか、一瞬で理解したのだから、さすがは王都でも有数な商家の娘である。


 将来的に旅行予約サイトとして発展進化させることも視野に入れて、オレはその準備を開始することにした。

 当面の課題は予約管理システムの機能拡張であるが、オレが要件定義してスーに説明すれば、すぐにでも作ってくれるだろう。


 また『バレンシア・リゾートサービス』の店舗数を増やして、他の都市にも旅行代理店を展開して間口を広くできる。

 それに営業マンを採用して、各地のホテルに代理店契約のメリットと予約システムの優位性を売り込めば、将来的に旅行市場トラベルマーケットの主導権を握れるはずだ。

 これは、この世界初となるビジネスモデルの創出と言っても過言では無い。


 次の日、アンジェラに『バレンシア・リゾートサービス』との代理店契約とホテル予約ネットワークについて、その内容と優位性を説明して理解を求めた。


「なるほどね~、そんな方法があるなんて思いもしなかったわ」


「アンジェラ、それで色々と考えたんだけど、うちと業務提携を結ばないか?」


「え、業務提携?」


「うん、お互いの弱いところをカバーし合って、共に発展して行くための提携だよ」

 オレは業務提携の内容について説明した。

 ①アクアスター・リゾートからはコンピュータ・システムのノウハウを提供する

 ②サエマレスタリゾートからはサービスやホテル運営のノウハウを提供する

 ③両グループの人材交流


「ちょっと待って、業務提携だけで良いのかしら?

 そこまでするなら、資本提携の方がいいと思うの」


「なるほど…

 その方がお互いに経営に口出しできるし、良い関係を築けるかもな」

 と言うことで業務提携を資本提携に発展させ、条件がひとつ追加された。

 ④会社の株式をお互いに10%ずつ交換する


 こうしてアクアスター・リゾートとサエマレスタ・リゾートはお互いにWin-Winな関係を目指して資本提携することとなった。


 資本提携成立の証として、その夜もアンジェラの部屋で深夜まで愛の人事交流を行った。

 当然、その事はジェスティーナやアリエスにも知られたが、『資本提携頑張ってね』と意味深な応援をされる始末であった。

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