第180話 ASR39の王都デビュー公演
ASR39の王都デビュー公演当日となった。
王都民に『アイドル』と言う聞き慣れない言葉を浸透させるために、オレたちが準備したプロモーション活動が功を奏し、2日間4公演、32000枚のチケットは見事に完売した。
そのプロモーション活動とは、ASR39の特大ポスターと楽曲のループ再生と言う手法である。
オレがアクアスター・リゾートのステージ上でASR39 の広告用写真を撮り、それを画像編集ソフトを駆使し、文字を入れたりして4種類のポスターに仕上げたのだ。
最大で幅2.2m✕長さ300mまでプリント可能なオンデマンド・プリンターでプリントしたのである。
このプリンターは、
オレが製作したA0サイズ横(横841mm✕縦1180mm)の特大ポスターをバレンシアカフェ、バレンシアストアなどバレンシア商会の系列店に貼ってもらった。
因みにASR39のポスターは3種類あり、リオナ、トリン、マリンがそれぞれセンターを務めるバージョンである。
また『アクアスター王都アリーナ』のメインストリート側の壁面に、メンバー全員が実物大で写っている高さ2.2m、幅10mの巨大ポスターを掲示してPRしたのである。
恐らく王都初の広告宣伝手法である筈で、それが話題にならない訳がない。
チケットはバレンシア・カフェとアクアスター王都アリーナのチケットセンターで販売した。
チケットが完売したのは『アクアスター王都アリーナ』のグランドオープン記念イベントとして価格を小銀貨2枚(2千円)と低価格にしたことも功を奏したようだ。
オレは、このプリンターを活用すれば広告業もできるなあと思ったが、手を広げすぎても自分の首を締めるだけなので、しばらくは様子を見ることにした。
ASR39はシュテリオンベルグ伯爵領の領都エルドラードでデビュー公演を済ませているが、王都から1200kmも離れているので、彼女たちの領都デビューを知る者は、ほとんど居なかった。
ASR39の王都デビューとなる初日ステージには、メイドロイド36名を含め、メンバー39人全員が登場し、それはそれは圧巻であった。
普段はアクアスター・リゾートを営業している関係上、メイド達全員が揃って公演に参加するのは不可能であろうと思っていたが、アスナが予約をうまく調整してくれて2日だけ全休日を設定してくれたのだ。
そのような事情で、フルメンバーが揃うのは、これが最初で最後かも知れない。
「皆さ~ん、こんにちは~」
「私たち、ASR39の王都デビュー公演へようこそ~!」
そう言って39名の美少女たちの真ん中でマイクで握り、魅力的な笑顔を振りまいているのは、ポニーテール姿のリオナであった。
ASR39は『歌って踊れるメイド』のリオナがメインセンターを務め、『歌って踊れる
会場には若者を中心に8000人が集まり、初めて見る『アイドルグループ』の登場に戸惑っていたが、何れ劣らぬ美少女揃いと分かると男性客を中心に熱狂的な歓声が上がった。
その満員の観客に臆することなく、リオナが爽やかな笑顔で言った。
「みなさ~ん、私たちASR39のデビュー曲『ポニーテール記念日』聞いて下さ~い」
するとスピーカーからアップテンポなイントロが流れ、それに合わせてメンバー全員が踊り始めると、会場は異様な熱気に包まれた。
美少女たちが、歌や踊りで爽やかなお色気を振りまくのを見て、男性客は一瞬にして彼女たちの虜となった。
もちろん、曲に合わせてメンバー全員がポニーテールなのだ。
因みにデビュー曲の『ポニーテール記念日』はオレが作詞し、作曲と編曲はサクラで、リオナが振り付けした。
ある日、リオナから、カイト様ポニーテールお好きですよね、だから歌詞を書いて欲しいんですと依頼され、最初は断ったのだが、何度も頭を下げるリオナに根負けして引き受けたのだ。
ポニーテールと言うモロにオレの趣味に合った題材に興が乗り、僅か3時間で歌詞を書き上げた曲だ。
その歌詞に高校時代、軽音楽部だったと言うサクラが、作曲アプリを駆使してアイドルっぽいメロディーを付け、完成したのがこの曲だ。
オレは初回公演をステージの袖で見ていたが、デビュー曲『ポニーテール記念日』の演奏が終わると大きな拍手が沸き起こり大歓声の嵐だった。
メインMCはリオナが務め、それにトリンとマリン、ときおりメイドたちが絡むと言う形で進んでいったが、さすがはリオナ、MCも上手いのだ。
続く2曲目は『恋するメイドロイド』と言うメイドロイドの心情を歌った切ないバラードで今日のメインボーカルはメイドのリアが努めた。
3曲目は『
4曲目は『憧れのリゾートライフ』、この曲のメインボーカルはマリンが務めた。
5曲目は『無重力Lover』という曲でリオナがメインボーカルを務めた。
6曲目は『ツインテール記念日』はポニーテール記念日に対抗して作った曲だ。
7曲目は『お願い!、女神さま』はリオナがボーカルのアップテンポな曲だ。
8曲目の『Sweetジェラート』はバレンシア・ジェラートのCMタイアップ曲でイメージ・キャラクターをリオナたちASR39が務めているのだ。
9曲目の『恋人たちの星空』は、リオナが作詞作曲の新曲でオレと一緒にジャグジーから見た星空を思い出して作ったラブバラードだそうだ。
その曲をオレの横で聞いていたサクラが言うには、リオナのボーカルに爽やかな色気が加わったような気がしますと感想を述べた。
オレに抱かれたことで、大人の階段を1歩上り、プラスに働いたのだろうか。
10曲目は『パレット39』はASR39のテーマソングで39人の個性を色に例えた曲である。
用意した10曲が終わっても、誰も帰ろうとせず拍手は鳴り止まなかった。
今回はアンコールは想定してリオナが元居た世界で所属していたアイドルグループのヒット曲を2曲披露し、最後にもう一度『ポニーテール記念日』を唄って、初回公演は終了した。
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