第165話 エネジウム鉱石の採掘許可

 翌朝早々、オレはアランベルグ父娘おやこを部屋に呼びつけた。


 部屋に現れた2人は、オレが激怒していることを予期しており、最初から平身低頭の平謝りだった。

 娘に何故あのような事を命じたのかロランドに問いただすと観念した様子でこのように答えた。

 マリエルの女の武器を使ってオレを攻略し、なし崩し的に側妻の地位を手に入れ、その影響力で、プロジェクトにおいて優位な立場に立とうと思ったと白状した。


 そのような卑劣な手段でオレを陥れようとは、言語道断だと二人を怒鳴りつけた。

 そしてプロジェクトから除名すると伝えると、二人は頭を床に擦り付けて、それだけは勘弁して下さいと謝った。


 セントレーニアの飲食業界で絶大な人気を誇るアランベルグ・グループを切るのはプロジェクト全体としても痛いのだが、このような悪しき前例をゆるしてしまっては、示しが付かないのだ。

 本来であれば除名が妥当な処分であるが、話を聞きつけたゼビオス・アルカディアが間に入り、オレに泣きを入れて来たので、彼の顔を立て最終的に資格停止処分で決着した。


 裁定を待つ父娘おやこにオレは6ヶ月間の資格停止を言い渡した。

 この件をメンバーに公示すると、その処分を下すに至った経緯いきさつは他のメンバーの知るところとなり、物議をかもした。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 一方、厄介なのはジェスティーナの従姉妹エレナの方である。

 あの後、オレ、ジェスティーナ、エレナで話しあった結果、この件は3人だけの秘密にして、エレナが成人してから改めて考えようと言う事になった。

 因みにエレナの成人までは、残り8ヶ月だ。

 成人した時点で改めて親を交えて話し合う事としたが、エレナはオレの嫁になる気満々なのだ。

 しかし、アルテオン公爵は長女を溺愛しており、オレがエレナと男女の関係になったことが知れたら、血の雨が降るかも知れないとジェスティーナはオレを脅かした。


 この話は、アリエスがオレの3人目の婚約者と決まる前の話だが、話し次第ではエレナがオレの4人目の婚約者となる可能性があるのだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 さて、話を現在に戻そう。


 飛行船の反重力発生装置に使っているエネジウム鉱石であるが、使用頻度が増えて調達コストが馬鹿にならなくなっていた。

 以前、ミラバス山にエネジウム鉱石の鉱床があると聞いたのを思い出し、ローレンに採掘可能か打診したのだ。

 ローレンは、大丈夫です私にお任せ下さいと、簡単に引き受けてくれたが、彼には何某なにがしかの当てがあるようだ。

 温泉だけでなく、ついには鉱山の採掘まで引き受けるのだから、こんな重宝な執事はいない。

 エナジウム鉱石の採掘場所は神域の近くなので、女神フィリア様に伺いを立てることにした。


「もしも~し、フィリア様、ご無沙汰してます」


「あ、カイトくん?

 久しぶり~、元気してた~?」


「はい、お陰様で、元気でやってます」


「そっか~、相変わらず順調そうで安心したよ。

 ところで、あのアイドルの子、リオナはどうしてる?」


「はい、最初はメイド見習いとしてソニアに鍛えてもらってました。

 そしたら、いつの間にか仲間と一緒にアイドルグループ結成して、この前デビュー公演終わったところです」


「やっぱりね~、リオナならきっとそうなると思ったよ」


「はい、今はメイド兼アイドルですが、近いうちにサクラが芸能プロダクションを立ち上げて、本格的にアイドル活動を始める予定です」


「へ~、いよいよアイドル復活ね。

 私も楽しみにしてるわ

 ところで、カイトくん、私に何の用?」


「はい、実はフィリア様にお願いがあるのですが…」

 オレはミラバス山近くの地下に眠るエネジウム鉱石を飛行船の反重力発生装置用に採掘したいので、その許可が欲しいと女神フィリアに話した。


「なるほど、エネジウム鉱石か、確かにミラバス山の地下に鉱脈はあるわね」

「ん~、どうしよっかな~」

 女神フィリアは、暫く考えた。

 そして、こう結論を出した。

「エネジウム鉱石の採掘は許可するけど、条件が3つあるわ」


「え、何ですか、その条件って?」


「1つ目の条件は、掘るのは良いけど、地下を含めて神域には絶対に入らないこと。

 2つ目の条件は、採掘したエナジウム鉱石を他に転売しないこと。

 3つ目は……」


「3つ目は何ですか?」


「私を、カイトくんの温泉ホテルに招待すること~!」


「は~?、フィリア様をですか?」


「そうよ、何か問題でもある?」


「問題大ありですよ、女神フィリア様が降臨したと知れると、みんな大騒ぎですよ」


「まあ、確かにそうだよね。

 だから、今回はお忍びで行こうかと思って」


「なるほど、分かりました。

 ところで、お1人で来られるのですか?」


「そうね、これから検討するけど、多分30~40人になると思うよ。

 だから、ホテル貸し切りにしてもらえると有り難いな~。

 そちらの都合もあるだろうし、最短で貸し切りにできる日教えてね。

 それじゃ、日程決まったら、連絡してね~」


 そう言って女神フィリアは、オレの返事も待たずに電話を切った。

 相変わらず、せっかちな女神である。


 そのような経緯いきさつで、女神フィリア様一行を温泉宿泊ツアーにご招待することとなった。


 王都のアスナに連絡し、最短で全館貸切にできる日を調べてもらったところ、5ヶ月後であれば、貸切可能だと分かり、その旨女神フィリアに通知した。


 女神フィリアから許可をもらい、エネジウム鉱石の採掘にゴーサインは出たが、ローレンの話では1000メートル以上掘らないと鉱脈に辿り着かないそうで、かなり時間がかかりそうだ。

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