第156話 ポニーテールの日

 リオナがこの世界に来てから、かれこれ6ヶ月が経とうとしていた。

 オレがこの世界に来てからで数えれば1年弱と言う事になる。


 ここ最近のオレは、1ヶ月を4週とすれば、領都シュテリオンベルグに1週間、王都フローリアに1週間、アクアスターリゾートに2週間滞在するのがルーティンとなっていた。

 飛行船が新型の『空飛ぶイルカ号Ⅱ』に代わってからは、移動時間が短縮し、楽になったが、忙しいのに変わりはない。


 オレは元来がんらい仕事人間であり、時々突っ走って、視野が狭くなることもあるが、持つべきものは良き伴侶である。

 ジェスティーナやアスナが適切な言葉でたしなめてくれるのだ。

 最近のオレは毎週必ず休暇オフを取り、自分の時間を持つようにしている。

 そうしないと新しいアイデアが湧いてこないし、明日への活力も湧かないからだ。


 さて御託ごたくはこの辺にして、この半年間の出来事を順不同で紹介しよう。

 まずは、領都シュテリオンベルグに関することだ。


 市街へ離散した領民約2万人の内、約7割がこの半年間で戻って来た。

 オレが打ち出した『租税の1年間免除』と『貧困世帯への無利子貸付制度』が評価され、効果を上げたと言われている。

 しかし、実のところ一番大きかったのは、悪政を極めた前領主エレーゼが処罰され、代わりの領主としてオレが着任し、まともな領政が期待できそうだと言う評判であった。

 元々この地の住民である彼らは、止むに止まれず故郷を捨てたのであり、先祖代々暮らしてきたこの地を出たかった訳ではないのだ。

 障害が無くなれば、元いた土地に帰りたくなるのは当然の話である。


 噂は噂を呼び、領都シュテリオンベルグへ雪崩のように領民が戻ってきているのだ。

 それとは別に元々は他領の住民であった人々の移住も後を絶たず、それを合わせると、既に以前の人口の12万人を超えるまでになっていた。

 この様子だと人口増加は今後も続くであろうと内政担当補佐官のアーロン・リセットは言っていた。


 一方、シュテリオンベルグ市庁舎の建設工事は急ピッチで進んでいた。

 オレが設計した新市庁舎は、ホログラフィによる3Dモデルでプレゼンを実施し、ブリストール領主代行と領都運営チーム、新賢人会議メンバーに承認された。


 3Dプリンターで言うところのプリント作業に相当する生成工程ジェネレートに1ヶ月弱掛かると言うことで、二人の女神にお願いして、UFO型飛行船でシュテリオンベルグまで移動してもらって作業を開始した。

 作業と言っても、オレが設計したデータを2人の女神がMOG形式に変換し、セットするだけで、あとは自動で次から次へと生成してくれるのだ。


 出来上がった建築ユニットは、反重力クレーンを取り付けて、順番に組み立ててるのだが、その工程管理はスーの担当だ。

 UFO型飛行船のメインコンピュータで建築ユニットを管理し、ブロックを組み立てるように順番に設置していくのだ。

 MOGの生成工程ジェネレートと並行して組み立て作業を行っているので、工期は約1ヶ月で完了する見込みだ。

 後は設備や備品の搬入設置作業が残っているが、これも出来上がった部分から順に搬入設置を行っているので1ヶ月半で完了する予定だ。

 庭園の植栽も並行して作業が行われ、約90%が完成していた。


 市庁舎の建物は1週間で4階分ずつ高くなって行くのだから、暫く見なかった人はある日突然巨大な建物が出現したと思うに違いない。

 12階建ての建築物が僅か1ヶ月で完成すると言うのだから、そのスピードは驚異的だ。


 数日前の情報によると市庁舎はほぼ完成し、既にテナントの入居が始まっており、市民サービスの一部はサービスを開始したそうだ。

 シュテリオンベルグ新市庁舎は2週間後にオープニング記念イベントを実施し、グランドオープンする予定だ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 領都の公務員採用試験は行政職に330名、領軍・警察職に1250名の応募があった。

 そのうち、1次試験合格者は行政職は154名、領軍・警察職では672名であった。

 2次試験の結果、行政職に100名、領軍・警察職に500名を採用した。

 早速、3ヶ月の教育訓練を開始し、終了後各部署に配属された。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 さて硬い話ばかりでは退屈だろうから、ここら辺で柔らかい話もしておこう。


 毎月7の付く日を『ポニーテールの日』に制定した。

 誰が決めたかって?

 もちろん、オレである。

 完全にオレの独断と偏見で決めたのだ。


 この日はメイドたち36人はもちろん、ジェスティーナもアスナもトリンもエミリアもリオナもアクアスターリゾートに勤務する全女性スタッフ、それにSDTダンシングチームの13名も含め、全員ポニーテールにする日なのだ。


 もちろん強制である。

 やれパワハラだ何だと言う声が聞こえてきそうだが、そんなの関係ない。


 その日は朝からオレはルンルン気分なのだ。

 気持ち悪いという輩もいるだろうが、これはオレの趣味なのだから、人にとやかく言われる筋合いはない。


 最近はポニーテールへの理解が深まり、ポニテの日以外の日でもポニーテールにしてくれる女子が増えてきたのは嬉しい限りだ。


 ちなみに『ツインテールの日』と言うのもある。

 毎月2の付く日がその日なのだが、これを提唱したのは他ならぬスーであった。

 見た目は8歳、実年齢は12歳、その実態は成人女性という希少な妖精族である彼女は綺麗な金色の長い髪が自慢であり、ツインテールがトレードマークなのだ。

 スーは『ポニーテールの日』があるのに、『ツインテールの日』が無いのは差別だと異議を唱えたのだ。


 確かにスーの言い分にも一理あると『ツインテールの日』を制定したのである。

 だから、その日はアクアスターリゾートに勤務する女性は、全員ツインテールにするのだ。

 実のところ、オレは元々ツインテールも好きだったので、反対する理由は何も無かったのだ。

 オレが『ツインテールの日』を制定するに当たり、スーに出した交換条件が1つある。

 それは何かと言うと『ポニーテールの日』にはスーもポニーテールにすると言う事だ。

 最初は難色を示していたスーであったが『ツインテールの日』が制定されると言うじつを取り、オレの要望を飲むことにしたそうだ。


 そして今日は7日、ポニーテールの日である。

 オレのリクエストに答え、ポニーテールのジェスティーナがメイド姿でオレを癒やしてくれるらしい。


 元々、ジェスティーナにコスプレの趣味はないが、まるでコスプレに目覚めたかのように今日の彼女はノリノリであった。

 オレが部屋に帰ると、虎視眈々と待ち構えていたジェスティーナがこう言ったのだ。

「お帰りなさいませ、ご主人さま…

 メイド喫茶ポニーテールへようこそ!

 今日は私がご主人さまを癒やして差し上げますね♡」


 正真正銘の王女様がメイド服を着て、しかもポニーテールで癒やしてくれるのだから、オレが萌えない訳がない。


 定番のオムライス美味しくな~れの魔法から、メイドLIVEまでフルコースを満喫したところで、最後は大人の夜のお楽しみが待っていた。

 ジェスティーナはメイド姿のまま、オレをベッドへといざなったのだ。


 メイド服姿で背中まで伸びた金髪ポニーテールの超絶美少女にオレの男の本能が黙っているわけがない。

 その夜、オレとジェスティーナがいつも以上に燃え上がったのは言うまでもない。

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