第142話 UFOと二人の女神
朝、目覚めると既に10時を回っていた。
横を見ると左にジェスティーナ、右にはトリンがオレに腕を絡ませたまま、安らかな寝顔で、まだ夢の中であった。
2人の腕を振りほどき、起き上がろうとすると、ドアがノックされアスナが入ってきた。
「カイト、いつまで寝てるの、異世界宅配便が来たわよ」
「え、もう来たの?」
「今、エントランスで待ってもらってるから急いで」
オレはボサボサの頭を手ぐしで解いて、Tシャツと短パンのまま、エレベーターでエントランスへ向かった。
そこには異世界宅配便のパルム・シントラが待っていた。
「お待たせしてすみません」
「まいど様で~す、ハヤミ様にお届けものです。
伝票にサイン、いただけますか?」
オレが伝票にサインすると、それを受け取りながらパルム・シントラが言った。
「今日のお届けものは、大物で数もあるんですが、どこに下ろしますか?」
大型飛行船フライング・ホエール4隻と、飛行船ステーションキット22セットなので、確かにその通りだ。
「う~ん、置き場所かあ…」
すぐに思いついたのは湖岸の砂浜、湖の上、中島の平らな場所くらいだった。
飛行船は浮くと思うが、ステーションキットは浮くだろうか?
聞いてみると、金属だし浮かないでしょうと言うので、湖岸の比較的平らな場所に重ねて置いて貰った。
飛行船は、とりあえず湖上の岸寄りに係留してもらったが、
建物が増えてきて敷地内の平地が手狭になったので、ローレンに森を少し開拓してもらわないと。
オレの異次元収納に入るかステータスを見てみたが、いつの間にか容量が大幅アップして、ステーションキットと飛行船は余裕で入る事が分かった。
最近はステータスを確認してないが、大小幾つものイベントをクリアした通知は来ていたので、恐らくかなりレベルアップしているのは間違いない。
早速、ステーションキットと飛行船4隻を異次元収納に入れた。
ソランスター飛行船公社で就航予定のフライング・ホエールは、明日にでも乗り心地を見てみよう。
その時、上空から別の飛行船が急降下してきた。
近くまで降下してきた船体はイルカ型でもクジラ型でもない、下から見ると真円で中央部分がやや膨らんでいる。
例えるならば、円盤型UFOみたいな形と言った方が早いかも知れない。
飛行船は地上に近づくにつれ、降下速度を落とした。
大きさは直径20~30m位、厚さは5m位だろうか。
オレは、この飛行船が何故飛来したか、心当たりがある。
きっと、恐らく、例のあれが来たのだろう。
どうやら着陸地点を探しているようだが、無いと判断したのか、砂浜ギリギリの湖上に音もなく着水した。
暫くすると側面のハッチが開き、
中から、赤と白の派手なチャイナドレスを着た2人の女性が降りてきて、タラップを渡ってオレの方に歩いてくる。
チャイナドレスが風で揺れる度にスリットの隙間から綺麗なお御足が見え隠れする。
どちらも非の打ち所のない美女だ。
「え~っと、ハヤミ・カイトさんは、いらっしゃいますか?」
「はい、私ですが」
「私は女神フィリアの要請でMOGの技術指導に来た女神フィオナ、隣が女神フィリスです」
「え~っ!、女神様がわざわざ、お越し下さったのですか?」
「あら、フィリアから聞いてませんでした?」
「ええ、誰が来るのかは全く聞いていません」
「それじゃ、温泉入り放題で、美味しい食事付きって言う話も?」
「え、そんなの聞いてませんけど…」
「まったく、あの
聞くと2人の女神は、フィリアから毎日温泉入り放題で、しかも美味しい食事付きの楽な仕事だから休暇を兼ねて行ってみない?、と言われて来たそうだ。
「まあ確かに、ここに居れば温泉は入り放題だし、
「良かった、そう言うことなら問題ないわ」
女神たちは飛行船内に居住スペースがあるので、客室は不要とのことだった。
1日3食、
「ところで、お2人は何故チャイナドレスなんですか?」
「あ、これは単なる趣味です。
今日は気分がチャイナだったので、着てみただけです。
因みに毎日変わるので、お楽しみにね!」
なるほど、女神たちはコスプレが趣味なのか。
「ところで、この船はどこに停めればいいの?」
「あの建物の向こうにガレージがあって、その横に飛行船が停泊できるくらいのスペースはありますので、そこをお使い下さい」
「分かったわ」
「ところで、MOGはどこにあるんですか?」
「異空間収納に入れてあるので、ご心配なく」
女神たちはUFO型飛行船に戻り、すぐに浮上してリゾートの建物を飛び越えて、指定したスペースに着地した。
オレが歩いてその場所に行くと、そこには円柱型の建物が建っており、ちょうど扉から女神たちが出てくるところだった。
「え、何だコレ?」と思わず口に出た。
そこに、突如高層ビルが出現したからだ。
「ああ、これね、初めて見る人は驚くんだけど、私たちの
女神たちの説明によると、この飛行船は縦方向に伸縮自在だそうで、飛行中は大部分を異空間に収納しているのだとか訳の分からない説明をしてくれた。
高層階は住居として使い、残りのフロアは様々なジャンルの研究施設と工房になっているそうだ。
因みに1フロア丸ごと衣装部屋の階もあるそうで、コスプレへのこだわりは半端ないレベルのようだ。
「女神様、今日は到着したばかりなので、まずは温泉に入っていただいて、その後一緒に夕食でもいかがでしょう」
「いいわね、それじゃ早速、温泉に入らせてもらいましょ」
「温泉は湖畔の湯、森の湯、天空露天風呂の3つあって、それぞれ泉質が違いますので、飽きないと思いますよ」
「へ~、3種類の温泉があるなんて、素敵ね~」
温泉の入り方やマナーが分かるか心配だったので、近くにいたメイドに女神様をご案内して、作法をお教えするように言った。
女神たちは、温泉に行く用意を整え『湖畔の湯』方面へ歩いて行った。
『湖畔の湯』は混浴だと伝え忘れたが、あのメイドがきっと教えてくれるだろう。
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