第34話 スターライトソード

「ハヤミ・カイト様に、お荷物が届いております」


「はい、私がハヤミです」


「女神フィリア様から、お届け物です。

 こちらにサインをお願いします」

『え、もしかして』と思いながら、伝票にサインして箱を受け取る。


「まいどありー」

 異世界宅配便の配達員が帰って行った。


『至急』と書かれた箱を開けると丁寧に梱包された『スターライトソード、ステルスモード付き』と書かれたパッケージが出てきた。

「やっぱり、これだったか」


 ルイス隊長は不思議そうに、こちらを見ている。


「隊長、先程の問題は解決できるかも知れませんよ」


 早速、箱を開けて中身を取り出す。

「見てて下さい」


 そう言って取り出したスターライトソードを構え、スイッチを『ON』にする。

 すると、眩いばかりのプラズマのやいばが出現し、ブーンと言う音を立てた。

 おお~、○イト○ーバーそのまんまやん。


 強烈な光を発するやいばに手を近づけてみたが熱くはない。

 9999℃の筈だが、安全装置が付いており、持ち主は触っても大丈夫なようだ。


「なんか、凄そうな武器ですね」


「見て欲しいのは、ここからです」

 そう言うとオレは『ステルスモード』と書かれたスイッチを『ON』にした。


「き、消えた…

 こ、これはどういう事ですか?」

 ルイスが不思議そうに聞く。


 オレはステルスモードをオフにして言った。

「これは女神フィリア様が下さったマジックアイテムで、持っている人の半径2m以内が透明になるんです。

 周りから見えないので、これを使えば敵のアジトに潜入して偵察できます」


「なるほど、それは良い考えです」


「私とソニアで、敵のアジトを偵察しに行こうと思うんですが、隊長も一緒に行きませんか?」


「分かりました。私もお供します」

 

 アジトの情報収集は成功の鍵を握る最重要課題だ。

 オレたちは、アウリープ号に乗り盗賊団の砦近くまで走った。

 人気のない場所でアウリープ号を降り、スターライトソードのステルスモードを『ON』にした。

 スターライトソードは、本来の機能であるプラズマのやいばを『ON』にしなくても、ステルスモードだけでも使えることが分かった。


 盗賊団の砦に向かう細い道を歩く。

 極力戦闘を避けたいので、見張りを避けながら、ゆっくりと進む。


 ステルスモードの便利なところは、相手からこちらが見えないし、こちらの音も聞こえないところだ。

 しかしステルスモードの中で話をしていても、外に音は漏れないのだ。


「私から離れないように」

 そう注意しながら、細い道を慎重に進む。


 やがて盗賊団のアジトがある砦が見えてきた。

 砦は2階建てで、上には見張りが4~5名おり、周囲を警戒していた。


 ゆっくり進んで行くと入口の扉は開いており、容易たやすくに中に入ることができた。

 内部には幾つかの部屋があり、慎重にひとつひとつ見ていく。

 1階の奥は食堂で大勢の盗賊たちが食事をしていた。

 1階に捕虜の姿は無い。

 突き当りの階段を下がっていくと地下牢を発見した。

 そこには見張りが2名いて、合計6つの牢があり、中に捕虜が監禁されていた。

 王国の女性兵士や王女付きの侍女など全部で18名が監禁されており、その他にも20名ほどの女達がいた。


「うーん、思ったより捕虜が多いな」


「そうですね、捕虜の開放には時間がかかりそうです。

 何か策を考えねば」


 2階に上り、部屋を見て回る。

 中央は広間となっており、周囲の部屋に扉はない。

 その中の大きめの部屋で、幹部と思しき男二人が酒を飲みながら合議の最中だった。

 オレたちは、その部屋の入り口で聞き耳を立てた。


「王女を逃したのは、実に手痛い失態だぜ」

 首領格と思しき男が低く唸り声を上げ、悔しがっている。


「親方様に何と報告すればいいのだ…

 女剣士が突然現れ、驚いている内に王女が消えたでは、申し開きに成らん」


 それを聞いていた、もう一人の男が言った。

「あの女戦士は、前に見たことがある。

 あれはステラという王国のSクラス冒険者だ。

 確か、『颯雷そうらい剣姫けんき』とか言う魔法剣士だ」


「その凄腕が、突然俺らの前に現れ、俺たちの邪魔をしてる最中さなかに王女が消えるとは、いくら何でも出来すぎじゃないか?

 それに、一番前にいた奴らが、見えない壁に衝突してぶっ飛んだとか言ってなかったか」


「ああ、オレもそれは聞いた

 きっと他にも仲間がいたに違いない」


「遅かれ早かれ、王国軍が捕虜を探しに来る筈だ。

 この砦は目立つからなあ、奴らが来る前にズラからねえとな。

 捕虜の女どもは馬車に詰め込んど連れていけばいい」


 盗賊共は、そのような話をしていた。

 幹部の顔を忘れないように、しっかりと頭に焼き付けておこう。

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