第44話 カイト飛行船を買う

 それはイルカ型の飛行船であった。


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 商品名:フライングドルフィン

 型式番号:FDA18-EJ


 種別:水素燃料電動ジェットエンジン駆動飛行船

 商品説明:重力の干渉を無効化する反重力発生装置による浮力と水素エンジンで発電した電力で駆動する電動ジェットエンジンを推力として飛行する船。


 垂直離着陸が出来るので、離発着に必要なスペースが少なくて済む。

 エネジウム鉱石を利用した反重力発生装置による浮力と翼部の電動ジェットエンジンを上昇下降時には下向きに、推進時には横向きにして進むので離発着時の周囲へのダメージが殆どない。


 ※エネジウム鉱石カートリッジ(別売2, 500GOD)は飛行距離約1万2千kmごとに交換が必要。

 船体は超高強度軽量アダマンタイトとミスリル合金で作られており、軽くてしなやかで丈夫。

 船体の形状はイルカに似た形をしていることから『フライングドルフィン』の名前が付いた。


 全長18m、全幅12m、全高6m、最大積載量2トン、座席数18、貨物1.2トンまで運搬可能。

 燃料は水、排気ガス0で究極の省エネとエコを両立した汎用普及タイプの飛行船。

 電動常温ジェットエンジンで飛行高度3000m、最高時速250km、航続距離2400kmで飛行可能。


 操縦免許資格等不要。

 押しボタン(離陸、着陸)と操縦桿(上昇/下降/左旋回/右旋回)で簡単に操船可能。

 自動離着陸システム、自動操縦システム、自動航法システム標準装備により、1度飛行した目的地までの自動運転が可能となる。


 本船には、下記のシステムが標準装備されている。

 1.自動離着陸システム

  ボタンを押すだけで周囲の状況を地形や気象状況を解析し、自動で安全に離陸または着陸するシステム


 2.自動操縦システム

  1度飛行した目的地までのルートを自動操縦で航行するシステム


 3.自動航法システム

  位置情報と目的地までの気象情報を自動で取得解析し安全かつ最短な航路を計算するシステム


 4.自動マッピングシステム

  飛行した地域を自動で測量して地図化するシステム


 5.緊急安全システム

  緊急時や故障時に自動的で安全な場所まで移動し着陸するシステム


 価格:600000GOD(スター金貨1200枚、円換算1億2千万円)

 納期:2日

 在庫数:7台


 下記のシステムがオプションとして選択可


 1.ステルス飛行システム

  船体を透明化、防音化して飛行できるシステム

  価格:80000GOD(スター金貨160枚、円換算1600万円)

  ※プレミアム会員は明日まで50%オフ


 2.自動防御システム

  あらゆる攻撃を一定時間無効化できるシステム

  価格:100000GOD(スター金貨200枚、円換算2000万円)


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「時速250kmで飛ぶって言うことは、王都からこの城まで2時間半で来られるってことか」


「え、片道1週間が2時間半?

 そんなに速く着くの?」

 アスナが驚いている。


「でも、費用を比較したらどうなの?

 この前の試算では、王都から馬車で往復すると、傭車代と御者と護衛の人件費、ゲストの食事代で最低でも銀貨12枚(6万円)は掛かるという事だったけど」


「うん、馬車のような経費は掛からないけど、この船の場合、反重力発生装置のエネジウム鉱石を定期的に交換しなければならないから、その費用は掛かるね」


 表計算ソフトでエネジウム鉱石に掛かる費用を計算してみた。

 1個2500GOD(スター金貨5枚・円換算で50万円)で12000km使える。

 1km当りに換算すると0.208GOD(銅貨1枚・円換算で41.7円)

 王都往復が1200kmだから250GOD(銀貨10枚・円換算で5万円)


「ざっと計算すると、飛行船で王都まで往復するには銀貨10枚(5万円)掛かるから、費用的には1万円くらい安くなる計算だけど、往復2週間が5時間に短縮できるし、一度に18名も輸送できるのは大きいね」


「速いし、費用も安くて画期的な交通手段だけど、金貨1200枚は高過ぎね」

 アスナも飛行船購入のメリットは十分に理解したようだが、高額すぎて購入を躊躇しているのだ。


「う~ん、喉から手が出るくらい欲しいけど、やっぱり高いな~。

 うちにある資金が金貨1500枚だから、買えないこともないけど」


「オプションのステルス飛行システムは、王都での離発着時の騒ぎを避けるためにも、ぜひ付けたいし、明日まで半額って言うのは魅力的なんだけど…

 でも金貨1280枚か…、悩むな~」


「とりあえずソニアに相談してみるか」

 隣室にいたソニアを呼びに行った。


「ソニア、王都との交通の問題を解決するのに、ネット通販でスター金貨1280枚の飛行船の購入を検討してるんだけど、ソニアの意見を聞いてもいいかな?」


 するとソニアはすぐにこう答えた。

「はい、カイト様の金貨ですし、100枚も残っていれば当面の生活に困ることはないと思います。

 それに、カイト様がすぐに稼いで下さるでしょうから、先行投資ということで宜しいかと思います」


 なるほど、そういう計算をしてきたか、さすがはソニアだ。

「分かったよ、ソニア、適切な意見ありがとう。

 ソニアのお墨付きももらったし、買うとするか…

 でも、どうせなら2人で会社を作って共同経営するって言うのはどうだろう?」


「あ、それ、いいアイデアね」

 アスナはすぐに賛成してくれた。


「アスナとは、今後もビジネスパートナーとして上手くやって行けそうだし、会社作るのが一番すんなり行くと思うな」


「え、ビジネスパートナーだけ?」


「オレに何を言わせたいの?」

 アスナの誘導尋問に引っかかりそうだったが、何とか回避した。


 アスナは自分の個人資産から金貨500枚、オレはソニアが管理している資金の中から金貨1300枚を出資してレイクリゾート運営会社(仮称)を設立した。


 飛行船はオプションのステルス飛行システムを追加して、最終的に金貨1280枚となった。


 PWSのショッピングカートを確認する。

 フライングドルフィン  1台 600000GOD

 ステルス飛行システム  1式  80000GOD

 プレミアム会員限定割引 1式 -40000GOD

 合計 640000GOD(スター金貨1280枚、円換算1億2800万円)

 お届け予定日 明後日午前中


オレはマウスで『注文確定』ボタンを押した。


 すると『ご注文ありがとうございます』のメッセージ画面が表示され、ステータスが『発送準備中』になった。


 明後日の到着が楽しみだ。

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