第16話 温泉が出たぞ~
オレがこの世界に来て、3週間が経過した。
最初は何もすることが無く、時間を持て余すかと思ったが、少しずつ忙しくなって来た。
まず、朝一で自分のステータスを確認することだ。
このリゾートに居れば、働かなくてもダラダラと生きていけると思っていたが、
1日当たりLP100ポイントが消費されることが最近分かったのだ。
因みにLPとはライフポイントのことである。
LPが0になった時点で、このリゾートから追放されるのだ。
そして錬金術師のトリンを雇用した結果、消費LPが20ポイント上昇し、毎日120ポイント減るようになった。
イベントをクリアすればLPは増やせるが、簡単なことではない。
毎日『釣り』と『収穫の補助』の2つの常設イベントをこなせば、一応50ポイント増えるが、それだけでは消費ポイントに及ばないのでイベントクリアは必須なのだ。
ちなみに現在のLP残高は3130ポイントだ。
何もしなければ、4週間弱でこのリゾートから追放される。
今のところ可能性のありそうなイベントはこれしかない。
『温泉発掘、難易度E、付与ポイントHP100、LP1000』
ポイントにはもう1種類、HPというのがある。
HPとはエッチポイントの略で、1回100ポイントでメイドたちから性的なサービスが受けられる。
最初のイベントで付与されたHP300ポイントは、何の説明もなかったので、一度に消費してしまい、しばらく0ポイントが続いた。
しかし、2週間ほど前に『
正しくは、使いたいが使えない状況と言った方が正しいだろう。
砂浜に漂着した美少女錬金術師トリンは、嵐で遭難した影響からPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、一人で寝られないから一緒に寝て欲しいと、オレのベッドに来るようになり、
トリンは、ただ単に安眠を求めて来るだけなのだ。
魅力的な美少女を目の前にして、オレは禁欲を続け、既に2週間もの間、蛇の生殺し状態にされているのだ。
それを知ってか知らずか、トリンは毎晩オレの隣でぐっすりと眠り、爽快な朝を迎えている。
オレを信頼しきって毎晩オレのベッドに来るトリンに今日はダメと断って、メイドたちから夜のサービスを受ける訳には流石に行かないのだ。
何か良い方法は無いかと考えてみたが、何も思い浮かばない。
そういう訳で、この世界で18歳のヤリたい盛りの体に転生した今のオレは、極度の欲求不満状態なのだ。
それはさて置き、お抱え錬金術師トリンの工房は、薬草園の隣に建設中だ。
オレは日課となっている、湖での釣りに出かけた。
トリンに釣りに行かないかと誘ってみたが、大きな水溜まりにトラウマが有るようで丁重に断られてしまった。
代わりに今日はメイドのレナがカヌーに同乗して釣りを手伝ってくれた。
本当は手伝って貰わなくても釣れ過ぎるくらい釣れるのだが、気分転換に連れてきてみたのだ。
「ご主人さま、また釣れました~」とレナがリールを巻いている。
今日のオレは釣りのサポート役に徹し、釣るのはレナに任せている。
釣り初心者のレナにも面白いように釣れるのだから、この湖の魚には警戒心が欠如していると言わざるを得ない。
そろそろ戻ろうかと、帰り支度をしていると、誰かが大声で呼んでいるのが聞こえた。
それはローレンだった。
「カイトさま~、おんせん、おんせんが、でましたあぁぁ~」
確かにそう言っている。
「レナ、ローレンが温泉が出たって言ってない?」
「はい、私にもそう聞こえました」
「そうか、やっと出たんだ」
オレは急いでカヌーを漕ぎ、湖岸に上陸した。
「ローレン、ついに出たんだね」
「はい、少し前に勢い良く吹き出しました」
釣りの後始末をメイドたちに任せ、オレとローレンは走って温泉に向かった。
温泉の掘削現場に着くと、温泉が勢いよく噴出しており、トリンがその様子を見ていた。
「カイトさま、温泉出ましたよ、おめでとうございます」
「ああ、ようやく出たね、これでも早い方だと思うよ」
ローレンに聞くと約700m掘って温泉に当たったそうだ。
早速、湧出した温泉を用意していた温泉用のパイプラインに繋げた。
湖畔に造った石積みの浴槽は、3日前に完成しているので、あとは湯を入れれば、いつでも温泉に入れるのだ。
後日ローレンが湧出した温泉の諸元を教えてくれた。
◎泉質 アルカリ性単純温泉(アルカリPH10)無色澄明無味無臭
◎源泉温度 47℃
◎湧出量 毎分2500リッター(自噴)
◎効能 筋肉痛、腰痛、神経痛、打撲、捻挫、冷え性、末梢循環障害、疲労回復、健康増進などなど
「ローレン、いつ温泉に入れそう?」
「そうですね、今ドロイドが源泉に蓋を被せて配管に繋げる工事をしておりますので、夕方には入れると思います」
「それじゃあ、温泉に入れるようになったら教えてくれ…
あ、それから、この温泉だけど、ローレンやメイドたちも24時間いつでも入っていいから」
「え、私たちも入って宜しいのですか?」
「だって、入るのオレくらいだし、せっかくの温泉だから、みんなで楽しもうよ」
「ありがとうございます、みんなに伝えておきます」
「あ、あと露天風呂は混浴ね…
内湯は男女別に造ったけど、露天は1つしか無いから男女共用にしよう」
この温泉は湧出量も豊富で
「泉温も47度で、パイプの中を通って温度が下がっても、42~43℃位の温度だから、24時間いつでも入れるよ」
リゾート自慢の温泉は、オレ自ら設計し、湖畔に近いところに造ったインフィニティ露天風呂となっており、湯に浸かりながら湖や周辺の森、山々の絶景を眺められるのが売りだ。
夜は月や星を見ながら入れる絶景露天風呂なのだ。
有料でも入りたいと思う人はきっといるだろう。
これは商売にも繋がるかも、とオレは思った。
因みに温泉の排水は環境に配慮して湖に流すこと無く全て回収し、浄化槽で処理してから川へ流すようになっている。
暫くするとステータス画面が開いてファンファーレが鳴り『イベント達成おめでとう』の文字がスクロールした。
今回のイベント達成でLP1000ポイント、HP100ポイントが加算された。
少し時間をおいて、今度はステータス画面のメッセージが点滅した。
そのメッセージはこうだ。
『温泉発掘により、消費LPが130ポイントにアップしました』
え~、また消費LPアップするのかよ。
今回のイベントクリアでLPは1000ポイント付与されたけど、ポイントが毎日10ポイントずつ多く消費されるのは痛い。
『温泉発掘』と『露天風呂が使用人も入浴可』の噂は瞬く間に広がった。
やはりメイド達も温泉に入りたいのだ。
トリンと一緒に昼食をとり、昼からは農園を手伝い、ジムで汗を流しているとローレンが呼びに来た。
「露天風呂のお湯が一杯になりました。
カイト様、ぜひ一番にお入り下さい」
「ありがとう、すぐに行くよ」
オレはエアロバイクを切り上げ、露天風呂に向かった。
衣服を脱いで、何度も掛け湯して、足から徐々に温泉に浸かる。
ちょっと熱めだが、柔らかくてとてもいいお湯だ。
温泉の中で自分の腕に触ってみると「ツルツル・スベスベ」する。
効能には美肌効果もあるようだ。
これから毎日24時間温泉に入れるので、それだけでも幸せだ。
見回すと湖が一望できる。
インフィニティ露天風呂なので湖と一体となって見えた。
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