アルケミスト・レクイエム
波多見錘
EP0 俺の幼馴染を傷付けたのは誰か
第1話 俺という名の錬金術師
『今すぐに
このメールが来たのは、ほんの5分前のことだ。
メールの差出人は
明日香は、俺より頭一つ分小さいくらいの身長で、女子の中ではかなり高身長だ。
スタイルも他の女子たちが羨むほどの抜群さで、学園の有名人の一人である。
そんな彼女は前述したとおり昨日から家に帰ってきていない。
毎日、11時には寝るような彼女が連絡も入れずに帰ってこないのはおかしい。という事で明日香の両親は明日行方不明届を出しに行こうと話していた。
俺的には、朝の時点で行くべきだと思ったが何も言わなかった。
「加峰マンション……ここか…。」
まあ、そんなこんなで明日香の言っていた場所――――――加峰マンションに到着した。
このマンションはオートロックなので、エントランスのインターホンで呼び出しチャイムを鳴らす。
すると、すぐに扉が開かれる。
しかし、明日香はこんなマンションと関わりあったのか?
俺は少しだけ疑問を持つが306号室を目指す。
三階程度なら、階段の方が速いな。
俺は、ランニング程度で階段を駆け上がる。全力は周りに迷惑がかかるかもしれないからな。
「ついた……インターホンは、っと…。あったあった。」
俺がインターホンを押すと即座に扉が開かれる。
しかし、出てきたのは明日香ではなく、いかにも素行が悪いガラの悪い男だった。
「お、きたきた。ジンさーん!きましたよー!おら、早く入れ、面白いものが見れるぞ!」
「はあ…。」
部屋間違えたかな?いや、あっちも俺の顔を見てから判断してるから間違えてはないはずだ。
玄関に入ると、すぐに俺の鼻に異臭が侵入してくる。
俺は本能で気付いた。いや、生物ならなんとなく察しがつく匂い。行為後の匂いだ。
ドクン
俺はその匂いで何が行われていたのか、察しがついた。でも、信じたくない。しかし、状況が物語っている。
男に誘導されるがままに部屋に入ると、もう一人の男が話しかけてくる。
奥の部屋に、もう4人いる…。
「お?てめえが逢坂理来か?」
「そうですけど…。」
「あいつ、最初の方はお前の名前を叫びながら泣いてたぜ。そりゃあ、もう傑作だったよ。」
男はそう言いながら大笑いする。
ドクン
やめろ……やめろ…。
そんな思いとは裏腹に男たちは俺を奥の部屋へと誘導する。
「はーい、今朝大人の女になった明日香ちゃんの幼馴染の御入場ー!」
そう男が言って、俺が入れられた部屋には……
床には脱ぎ捨てられた大量の衣類や破られた女性ものの服。
机の上には、そういったことに使われる大量の玩具、かなりの量が使われた媚薬の瓶。そして、謎の白い粉。
いや、謎なんてことを言うのはよそう。俺には見ただけで分かる。あれは砂糖や塩なんて生ぬるいものじゃない。
覚醒剤だ。
そして、クイーンサイズのベッドの上には……上には――――――
裸に目隠しをされ、手を拘束されて、痙攣しているのか腰回りが震えている明日香がいた。
「明日香!」
俺は明日香を認識した瞬間、飛びつくように彼女の下に駆け寄った。
「あ………………あ………………。」
明日香につけられた目隠しをとってやると、明日香はわずかに声を発したが、ほとんど声を発さず、目も虚ろだった。
俺は明日香の腕を見て、気付いた。注射針の跡?まさか……
「その女はなあ、最初こそは嫌がってたけどちょっと叩いて調教してやったらすぐにアンアン言ったぜ!気持ちよかったなあ。幼馴染のお前にもこの気持ちが分かる日がきっと来るさ。」
「なあ…。」
「あ?なんだ?やっぱり幼馴染の処女は惜しいか?でも、残念。俺がもらっちゃいましたー!」
ドクン
我慢だ。あの男がどれだけ下衆だろうと、下品であろうとも今は明日香が最優先だ。
「明日香に……覚醒剤をうったか?」
「ああ、勘が良いな、お前。うったな。でも、媚薬の方が大量に飲ませたぜ。おかげで、明日香ちゃんの意志に関係なく、出来たからなあ。」
覚醒剤をうったのか…。これから明日香は後遺症に悩まされることになる。
だが、俺ならこの状況を打破できる。
なぜなら俺は、錬金術師だからさ。中二病じゃないぞ。
詳しい話は後にして、俺の扱う錬金術は、視界内にある生物以外の物質を変形、変質させ、無から物体を精製し、物体を無へと還元するものだ。
それ以外にも、視界内に入れば見えなくても使用可能や汗などの体液は物質として扱われることなど、他にも色々なルールがある。
体に目に見えて変化が現れるのは、使用時に俺の瞳孔が赤く光ることくらいだ。
今回はそれを利用する。
まず、覚醒剤だが、少しづつ薬品量を減らしていく。一気に減らすと、血管内に空洞が出来てしまう。
薬品を抜いて、体全体に広がってしまった幻覚作用や中毒作用を持つものも還元し消滅させる。ついでに媚薬も同様に抜き取る。
次に明日香に放たれた、奴らの体液たちだ。
全くってほどでもないが関係ない話をしよう。
危険日があるからと安全日があるという勘違いをしている奴らがいるがここで正しておきたい。
安全日なんてない。出来る時は出来る。ちゃんと避妊しろ!
まあ、そんな話は置いといて、ご多分に漏れず明日香は避妊してもらってない。
これでは妊娠の可能性がある。そんなの明日香が受け入れられるわけがない。
俺は、明日香の中にある、精を水に変質させ、体外に放出する過程で消滅させる。
と、同時に薬の影響が完全になくなったのか明日香の意識が戻る。
「あ…………リク…………?は!?なんで此処に!?」
本来いるはずのない俺がいることで明日香はすっかり混乱してしまっている。
「意識が戻ったか。どこか悪いところはないか?」
俺はそんな質問をするも、明日香の反応は全く違うものだった。
「わ、私は……嫌だ、見ないでくれ!見ないでええええええ!」
大分気が動転している。当たり前か。むしろしてない方がおかしい。そいつはもう異常性癖者だ。
そういう人を否定するわけじゃないが、明日香はそんな人間じゃない。
「明日香…。」
「嫌…、見ないでくれ!お前には、リクだけには見られたくないんだ!」
「明日香!」
「ひゃ、ひゃい…。」
あまりにも話を聞かない明日香に俺は一喝する。
明日香は俺の大事な人。別に、俺は明日香の処女が欲しいわけじゃない。ただ、一緒にいて欲しい。
中学あたりから、モテる明日香は俺から遠い存在になっていった。
でも、彼女は俺とずっと一緒にいた。
勉強するとき、映画を見に行くとき、買い物に行くとき。
母さんが亡くなった時も明日香は俺を慰めてくれた。父さんが失踪した時、明日香は家で俺を一人にしないように、一緒に寝てくれた。
幼馴染によくある「大きくなったら結婚しよう」なんてことは言われてないが、彼女は一緒にいた。
明日香は、クールで恥ずかしがり屋だから、自分の好意は表に出さない。でも俺は知ってる。明日香が俺のことを好きだってこと。
何年一緒にいると思ってる。気付かないわけないだろ。
俺だって、明日香のことが好きだ。一日中抱きしめていたい。
でも、明日香は傷付いた。
この傷を癒せるのは俺しかいない。というか誰にもやらせない。
ドクン
「明日香、愛してる。」
「ふえ?」
俺の告白に明日香は素っ頓狂な声を上げる。
「俺と結婚するのを前提に付き合ってくれ。」
俺がそう言うと、明日香は涙を流す。
「待ってた…。ずっと、その言葉を…。喜んでつきあお…………ん!?」
明日香の言葉は俺の手によって遮られる。
「その言葉は、今から見せる俺の姿を見てから、決めてくれ。俺は明日香の意見を尊重するし、優先する、それがたとえ拒絶であっても…。」
「そ、そんなことするわ……ひ!?」
必死の否定を言おうとした彼女の言葉は恐怖に塗り替えられてしまう。
なんだ?と思うよりも先に俺の方に手が置かれる。汚い手だ。
「なあ、愛の告白は終わったか?なら、どいてくれよ。お前の目の前でその女を犯せると思うと、また興奮してきちまったよ。」
下衆が…。どこまでも自分本位な奴め。
「『ぶっ飛べ』」
瞬間、俺の方に手を置いていた男の腹の辺りで爆発が起こり、男は壁まで吹っ飛ばされる。
「ぴぎゃ!?」
「え、リク?」
壁にたたきつけられた男は、情けない悲鳴を上げて意識を手放す。
威力が足りなかったか…。次はもっと強く行こう。
「サル!?てめえ、なにしやがった!」
「近づくな…。」
「あ?」
「近づくな。てめえらみたいなクズが、明日香に近づくな。」
俺のその言葉に男たちは激昂する。
「なんだ?正義のヒーロー気取りか?ダセえんだよ!」
集団で、人の尊厳を踏みにじるような奴らよりはマシだ。
「俺は、正義のヒーローじゃない。」
「てめえら、やってしまえ!」
「明日香のヒーローだ!」
「り、リク…。カッコいい…。」
明日香が、こんな状況なのに頬を赤らめている。うちの幼馴染は俺さえいればよさそうだ。
「くたばれえええええ!」
男たちの中の一人が、ナイフを持って俺に突っ込んでくる。
もう、こいつらを生かしておく理由はない。早々に――――
「『潰れろ』」
グチャッ
ナイフ男は両側から迫ってくる壁に押しつぶされ、この世から永久退場した。
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