7、ブラック村の働き方
「かなり順調であるな」
村長の間、玉座に座り収支報告書を見ながら村長。
「そうなのか?」
まるで報告書が理解出来ない勇者マルチナ。
「奥方様、カークス村のダンジョンや宿屋、その他の施設全ての経営は大成功に御座います」
ニコニコする勇者マルチナに叩かれながら、跪くガーゴイル。
「チラシの効果も出だしたようだな」
ダンジョンの受付には、長蛇の列が出来上がっていた。
宿屋も連日満員御礼、宿に泊まれない勇者達はカークス村を囲んで野宿を余儀なくされていた。
「宿の増築、労働者の増員が急務である。またこれをばら撒いて来てくれ」
村長は一枚の紙をガーゴイルに渡す。
【カークス村は新しい仲間を大量募集中】
アットホームな職場で、楽しい仲間達と一緒に働こう!
未経験でも大丈夫、必要なのはやる気と笑顔と根性だけ。やる気があればなんでも出来る、笑顔で乗り切ろう!
正社員登用制度も有るので将来も安心。いつかはカークス村の村人になれると信じて一緒に頑張ろう!
休日に仲間達と一緒に、ワイワイ楽しく働けるのも職場の魅力。
夢に向かって頑張る貴方を、私達は応援します。
【勤務地】
カークス村
【職種】
面談にて貴方に最も適した現場で働いて貰います。幹部採用もあり。
【給与】
貴方の頑張り次第で一攫千金も夢じゃない。能力・スキル考慮します。
【待遇・福利厚生】
まかないあり
可愛い制服あり
各種イベントあり(決起会、反省会)
住み込みの寮あり(24時間監視体制なので安全も保証。他の街と遠い為、必ず入寮してもらいます)
カークス村一同、貴方にお会いできる日を心待ちにしております!
お気軽にお越し下さい。
採用担当:村長
「沢山作ったから街の上空からばら撒いといて」
「‥‥‥ブラックな匂いがプンプンしますな」
チラシに目を落としてガーゴイル。
「私は凄く働きたくなったぞ!」
目をキラキラさせる勇者マルチナ。
「奥方様は何か大事なことを決められる時、必ず村長か私に相談して下さいませ」
嬉しそうな顔の勇者マルチナに肩を叩かれながら、ガーゴイルは頭を下げた。
「街の増築などの指揮をしながら、暫く村のことを頼む」
勇者マルチナに叩かれるガーゴイルを見て村長。
「どこかに行かれるのですか?」
「ダンジョンに挑戦する勇者達があまりにも多く、把握するのが面倒になってきた。全ての勇者達に番号を付けて管理しやすくしたい」
「‥‥‥それはまた、大掛かりな。大変な労力になりそうですな」
「故に人間の王にやらせる。元々勇者を任命してるのはそいつであろう? 直接話して勇者を量産している責任を取って貰う」
玉座で足を組みニヤリと笑う村長。
「‥‥‥魔王と人間の王が会談など、聞いた事がございませんが」
どう考えても敵同士。
「今の余はカークス村の村長である。会談ではなく嘆願に行くのだ」
「‥‥‥屁理屈もここまでくると凄いですな。留守はお任せ下さい」
首を垂れるガーゴイル。
「勇者マルチナよ人間の王に話がある、案内せよ」
「一緒に行けるんならどこでも付いていくぞ、任せろ!」
勇者マルチナはニコリと笑いながら大きく頷いた。
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