第19話 カンティル
元将軍のカンティルが四谷友助と会ったのはジフォン島でのオーク戦が最初だ。
彼は卓越した指揮官で武人だったが彼の祖国はディオック王国との闘いで滅んだ。将軍の身でありながら、無謀な戦争を挑む貴族連中を止めることはできなかった。
国家と国家の戦争とは、戦争が始まる前の準備段階で勝敗の行方はほどんど決まっている。どれだけ多くの将兵を集めるかが勝敗を左右する。なまじ優秀な指揮官であったからこそ、カンティルが居る部隊は連戦戦勝をしたが、敵はカンティル隊との勝負を避け、機動力のある騎兵部隊で後方連絡戦=補給路を断つこと・・・そして首都への直接攻撃で勝敗は決した。
彼の部隊も、そして のちにジフォン島で共に戦った傭兵ライスが属した部隊も、戦力を有しながら待機中に国が滅んだ。戦争で最も損害が出るのは落ち武者狩りだ。
いままで味方と思っていた民衆まで、敗者に容赦なく牙をむける。どんなに強靭な部隊でも士気阻喪してしまえば多くの脱走者をだす。補給が絶たれれば食料不足で栄養失調・餓死者が続出する。飢えた将兵は村邑を略奪するが、たちまち討伐隊がむかってくる。ライスの部隊は彼一人を残して全滅した。
戦争は始めるのは簡単だが、終わらせるのは何十倍も難しい。まして、ここは人権など皆無の中世世界。戦争に負けた国の民は殺されるか、奴隷になるかの世界だ。
『奴隷にされるくらいなら、戦って死ぬ』
そしてカンティルは亡国の将軍から傭兵になりジフォン島で四谷たちと一緒にオークたちと戦った。その最中、島の火山は噴火し、海底地震で津波が彼を襲った。津波に流されて瀕死の彼を、大魔法使いファティマが偶然みつけ助けることになった。
カンティルは以後、ファティマの元で魔法使いとしての修行を積み、竜術士と戦うためにゴールディア王国・イハル・ネモアの麻薬戦争に介入した。そして宿敵・竜術士の一人を四谷や鳥居と共闘して倒した。
彼は四谷友助に問うた。君の正義は何かと。
彼は答えた。「公平であること」四谷の正義感は強いが、それは幼く偏っていた。
彼にとっての「悪」とは何だ。本人は公平中立な価値観を持とうとしているようだが、善悪の基準は人や国、時代や宗教によって大きく異なる。
その彼が、この世界を変えようという傲慢や危険性。そもそも彼はこの世界の住民ですらない。家族や友人・恋人や郷土を守ろうという心は彼には薄い。
目的の為なら平気で仲間を見捨てる男、経験値が沢山入るモンスターは1人で倒し経験値を独占する男。本人に自覚はないようだが、彼もまた身勝手な男であった。
四谷友助は この異世界の救世主にもなり、破壊者にもなりうる。今はまだ子供だから人間的に成長する機会もあるだろうが、逆に絶望し闇落ちする場合もありうる
グレンダ・カーター
彼女のいう事だけは友助はきちんと聞く傾向にある。
カンティル「グレン殿。友助は目的のために暴走しがちだ。彼を正しい方向に
導いて欲しい」
グレン「・・導くという大それたことは出来ないが、彼が道を外れないようにちゃんと見ているつもりだ。大人だからね。」
カンティル「よろしく頼みます」
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