月と騎士と死を

@sakurahiro0226

月立つ

 ───桜が散り、夜に溶けていく。

 その木のふもとには、四肢を分割され、胴体も裂かれた無様な肉塊が一つあった。

 そんな、異様な光景を背に、少女がゆっくりとオレに歩み寄りながら手を差し伸べてくる。

 オレ達が追われてる時とはうってかわった、余裕のある笑みに若干、イラつく。

 あの時の弱りきった顔は演技だったのかよ、騙された。


 ───あぁクソ、しかしなんて綺麗なんだ、思わず惚れちまったじゃねぇかよ。

 人形、なんてものじゃない。一つの芸術作品のように少女の顔立ちは美しいものだった。

 そんなヤツに微笑まれて、惚れない男は男としてどうかしてる。本当に。

 この沈黙を、我慢できないとばかりに、少女が訊ね始める。


「ねぇ、貴方、結局どうするの? 私に協力してくれる?

 ───それとも、血を吸われて、アレと同じように自我が失ってみっともなく暴れ回るだけの存在になっちゃう?」


 脅しじゃねぇか、ふざけんな。

 死ぬか、苦しんで死ぬかの二択なんて我儘なんてレベルじゃない。暴君、暴君だ。

 ったく、なんで、こんな目にあったんだっけな。

 たしか、アレは───────

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