第104話 お別れの後
潤はまだ私を愛してくれているのかな。
どこまでの何を知っていたのだろう。
養育費は裕彩の分だけだと思っていたが、二か月に一回は子供たち全員の分を支払ってくれた。
私はできるだけ頼らなくていいように働いていたが、どうしても子供が熱を出したりすると休まなければならなくなり、休職することにした。
大輔さんに久しぶりに連絡をしてから、離婚したという話をして、会った日に、いろんなことがあるけど、ずっと支えてあげたいと思ってるのに、連絡がなくて嫌がられたのかと思ったと言われた。
あの時は子供たちのことを見なさ過ぎていた。
子供たちのことをきちんと心の目で見てやれなかった。
だから向き合おうとすると、時間が無くなるのだ。
その説明だけでも理解してくれている。
それからは毎日のようにまた大輔さんと会っている。
家には連れてこないし、大輔さんからも家に行きたいと言われたことはない。
それは子供たちへの最良のエチケットだ、と大輔さんは言っていた。
私は考え方はそれぞれだけど、それもそうだと思いながら、ありがたいなと思っていた。
ある日の土曜日の午後、裕彩はパパの家に泊まりに行くからと金曜日の夜から潤の家にいて、彩斗は元夫の家に遊びに行っている。
彩幸は学校のグランドで遊ぶと出かけて、家には私と彩南、愛彩がいた。
いつものように大輔さんとの電話に夢中になっていた。
この家は潤と私が名義変更しただけで何も変わっていない。潤の荷物がないくらいだ。
少し広々としてきたから、部屋を自室にしたいという彩斗や愛彩のためにもと掃除をしていた。
土曜日や日曜日は、それを手伝うように言っていた。
彩南がいるから大丈夫だろうと思って、任せていたら、愛彩が、泣きながら何かを投げつける音がしてきた。
「ママ、あいがなんかいきなり怒り出したんだけど」
彩南がいそいそとやってきた。
なんだろう、どうせ喧嘩でもしたのかなんなのかと、大輔さんと電話をつないだままで様子を見に行ったら、ぬいぐるみが飛んできた。
携帯をひとまず置いて、愛彩に近づいて、
「ママー!!あいちゃんのがないのーー!!」
一度大輔さんの電話を切り、愛彩に聞いた。
何を探してるの?と。
でも、泣いてばかりで全く話にならない。
泣いたまんまだったけど、環境を変えてやろうと思って、愛彩を外に連れ出した。
泣いたまんまの愛彩と、少し歩いていたら、
「あいちゃんのね、えんぴつがないの」
ぽつりと言った。
確か学用品はきちんと一緒に寝る前までに確認させているし、なければ買うからと言っていた。
「あいちゃん、鉛筆が小さくなって書けなくなったのを集めてたよね?」
少し思い出したことを聞いてみる。
「それ・・・それがなくなったの。」
ビニール袋に入れて振り回していたから、目に入ってもケガしても危ないからと私が取り上げたものだ。
それも、一年以上前の話。
「あいちゃん、それ、ママが預かってるよ、危ないからママが預かっててあげるって」
愛彩が私の顔を見上げて、少し笑顔になり、きちんとおいてあることを伝えると、さっきまでの大泣きはなんだったんだというくらい、楽しそうにしている。
愛彩が段々どんなふうに育っていくのか、難しい時期になってきたのだと思った。
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