第71話 厳しい目

大輔さんと会ったあの日、彩幸が熱中症で寝込んだのに、外出していたことからなんとなく潤が勘づいている気がした。


それからの私は隠れるように大輔さんと連絡をとっていた。

会ったあの日の夜、ほとんど眠らず、大輔さんとやりとりをしていた。

連絡が遅くなったのは、次女が具合が悪くなったから病院に連れて行ったと大げさにしておいた。

大丈夫だった?といった話から、私は5人の子供それぞれのことを話したり、結婚は二回目だということを話していた。

大輔さんは、前の奥さんは、とてもいい人だったと。

ただ、奥さんはとても浪費家だったと。借金まではないものの、お給料をちゃんと渡していて、奥さんも働いていたけれど、貯金もされていなかった。

貯金をしてくれていると思って、何でも許してきたと。

買いたいものや食べたいものを我慢させたくなかったと。

もちろん、お互いに子供をもったときのために保険のことなども考えていたそうだが、そのお金が足りない理由はお酒だった。

飲みに行っては、すぐ、そこにいる男性と仲良くなっては浮気をしていたと聞いた。

お酒が入らなければとてもいい奥さんだという。

ってことはお酒が入らなくてもいい奥さんではないのではないかと思った、お酒はどこにでもある。種類もそれぞれある。そのお酒に飲まれてしまうのだから、もともとからお酒がなければではなくて、お酒があってもなくても、ということだ。


自分のことを棚に上げてしまっているから人間とは面白い。


子供たちはまだ夏休み中だから、毎日があわただしい。

とはいえ、お手伝いをさせているから、私の優先するべきことは裕彩のことがほとんどだった。

きょうだい喧嘩をしていても、もう放置していた。

裕彩の保育園がお盆休み以外はやっていることが救いだった。

お昼ご飯も自分たちで用意させるようになり、段々と、子供たちも自分でできることが増えてきて、楽しそうにもしていた。


私はお迎えのタイムリミットまで、大輔さんとやりとりをしたり、外回りだよという連絡があると、電話して、ずっと話していた。

はしゃいでもいい、可愛くいられる、大輔さんとはそんな自分でいられることが嬉しかった。


潤といると、世帯じみた、子沢山のママになってしまう。

それがどうしても面白くない時がある。


潤がある休みの日に、言った。

「ねぇ、さやか、このレトルトカレーの量は何?」

と、こちらを向いて聞いてきた。

厳しい目で見つめられると、動けなくなるような感覚だった。




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