雑踏にて
@memokaki
001.中学生・男子
彼はA駅から乗車し、おそるおそる2人掛けシートに座った。
物慣れぬ様子で、そぉっと、車内の吊り広告や乗客を見回す。スマートフォンを取り出す様子は、ない。所持を許されていないのだろう、彼はまだ中学3年生だろうから。今日は公立高校入試日。彼は入試のため、会場である志望校へ行く途中なのだ。
濃紺のブレザーに白シャツ、首元に
彼はまだ未成熟だ。華奢ではないけれどアジア系の体躯は細く、筋肉もさして感じさせない。なめらかでニキビ一つない肌。顔立ちの
だが、彼はもう子どもではない。
自信――できることはしたという落ち着き。
不安――己の未来が未確定なことへの恐れ。
その二つを目元に同居させた彼は、
筆記用具や参考書が詰まったカバンを抱き、彼は入試会場である未来へ向かう。
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03.01 雨のち晴天
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