オーパーツ雪だるまサーファー!

田島久護

オーパーツ雪だるまサーファー!

 俺はその日も波を待っていた。家の傍にある海岸に記憶のある頃からずっと通っている。

親父はプロサーファーで幼い俺にサーフィンを教えてくれたがある夏の日、

近所の子供が高波にさらわれ救助すべく海に出て帰らぬ人となった。


雨の日も風の日も雪の日も、ずっと俺は海岸で波を待っている。


―力が欲しいか?―


 空耳が聞こえた。今日は体調が悪いのかな。御袋にも今日は止めとけと言われたが無視して来たんでバチが当たったのか?


―汝力が欲しいか?―


 辺りを見ても誰も居ない。そりゃそうだこんな雪が降りそうな日に海に出る奴は俺だけ。


―力、欲しくない?―


 急に高めの声でチャラい感じで聞いて来たけど何なのこの空耳気持ち悪っ! 


―欲しいよねぇ~力?―


 男の声なのにギャルっぽい言い方だし最後疑問形!? こちとら生まれてこの方喧嘩もしたことないのに力なんていらねーよ!


「え?」


 俺は跨っているボードの先を見ると、小さな雪だるまを発見する。それはくるっとまわり太い眉毛と目と思われる丸が付いたものと目が合う。


―WE GO! アトサキ考えずに求めちゃえよ、力?―


 イラつくわ……どっかの声優の2020年に出した1stソロアルバムみたいなタイトル混ぜてるし最後疑問形のままだし私たちってお前だけだしどこ行くんだよ!


―お前の親父を蘇らせたくはないか? こんな日でも海に出てるのは親父を待ってる。違うか?―


 その言葉を聞いて俺はブチギレてしまい雪だるまに拳を叩きつけていた。自分の親父を生き返らせたくない訳が無い。だがそんなの無理だってガキでも知ってる。


―私は雪だるま、北国の人たちの幸せな思いを受けて長きに渡り消えることなく存在した結果、オーパーツとなった。私と共に来い康夫! 元長野県知事と同じ名前の康夫!―


 振り向くと雪だるまがボードの後ろの先に居てニヤリとしてた。要らねーだろ元長野県知事のくだり!  てか何で俺の名前知ってんだこのバカ雪だるま!


「消え失せろ糞雪だるま!」


―前を見ろ!ー


 言われた通り前を見ると海上に大量の鏡が出現こちらに向かっている。ここ異世界か!? 俺死んだの!?


―お前はこれからこの俺、オーパーツ雪だるまのパートナーとして敵と戦わなければならない!―


 こうしてここにオーパーツ雪だるまサーファーが誕生した……誰か助けて

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オーパーツ雪だるまサーファー! 田島久護 @kyugo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ