異世界転生してケツからカレーを出すチート能力を得た俺、食糧難を解決していたら王国の救世主と呼ばれるようになりモテモテになりました

なかうちゃん

カレーは万能食である

 俺の名前は尻辛しりから 可礼かれい

 友達からはケツカレーのあだ名で親しまれている。


 突然だが俺は大好物のカレーを食っている最中に喉を詰まらせて死んだ。


 気がついたら真っ暗な空間にいて、目の前に神々しい雰囲気の女が立っていた。


 あ、これ小説家になろうで見たことあるやつだ!

 異世界転生の予感に俺は胸を躍らせた。


「ケツカレーくん、ごめんなさい……あなたはまだ死ぬ運命じゃなかったのに、私が寝ぼけてこいつ死ねボタンを押してしまったがために死んでしまいました……」


 初手からあだ名で呼んでくる、やたらフレンドリーな女神(仮)だった。ていうか何そのボタン、そんなので人間の生き死にって決まってんの? 怖すぎるんだけど。


「死んじゃったもんは仕方ないですよ、はは! で、あれですよね、俺はこの世界で生まれ変わるか、チート能力を持って異世界転生するか選べばいいんですよね!」


「話が早くて助かります。どちらを選びますか?」


「もち、異世界転生っしょ!」


「分かりました。どんな能力が欲しいですか?」


「うーん、そうだな……異世界に行ってもカレーは食いたいから、カレーを生み出す能力がいいかな!」


「では、そのように致しましょう。良い異世界ライフを!」


 女神(仮)がグッと親指を立ててきたので、俺もそれに応えて親指を立てる。


 次に気がついたとき、俺は見知らぬ女性に抱かれていた。どうやら赤ん坊からスタートのようだが、意識ははっきりとしている。不意に便意を感じた。この体ではそれに抗うことができず、俺は粗相をしてしまった。


「あら、この子うんちしたわ! 何だかちょっと水っぽいわ! それに何かしら、すごくいい匂いがするわ!」


 母親らしき女性が驚きの声をあげる。


「なんだって!? どれどれ……本当だ! 何だこのとても食欲をそそるいい匂いは! 味も見てみよう!」


 父親らしき男が俺のケツから出たものをを食べる。


「うまぁぁぁぁぁぁい!! 何だこれは!? こんなに美味しいものは今まで食べたことがない!」


 部屋に充満するいい匂いには覚えがあった。

 これは間違いない……カレーだッッッ!

 俺はなんとケツからカレーを生み出す能力者として異世界に生まれ落ちたのだった。




◇◆◇




 この世界では十六歳になると成人し、見聞を広めるために旅に出るという習わしがあった。

 俺も例に漏れず、旅立ちの日を迎えた。

 俺が家を出ることが寂しいのか、両親は咽び泣いていた。


「息子よ……おまえのうんちをしばらく食えないかと思うと父は悲しいぞ……」


「やれやれ。父さん、これはうんちじゃなくてカレーだって何度も教えただろ」


「カレー……そうか、そうだったな……」


「もう、あなたったらうっかりなんだから! うふふ!」


 そんな両親に見送られ、俺は旅に出た。


 この十六年で俺なりに能力の解析を試みて分かったことがいくつかある。その一つは、このカレーはうんちではないということだ。

 うんちが変化したとかそういうわけでもないらしい。俺は何も食べなくてもカレーを無限に出すことができた。


 そして、能力によるものなのか、食べても食べてもうんちが出ることはなかった。カレーを出すときに便意に似たものを感じるが、俺はこの世界で本当の便意を感じたことがない。


 数日歩き、隣の村にたどり着いた。

 俺はカレーが好きだが、たまにはカレー以外のものも食べたくなる。そう考えて村の飯屋に立ち寄るが、どの店も何故か閉まっていた。


「何かあったんですか?」


 通りがかった男に訊ねると、困った顔で事情を説明してくれた。


「あんた、旅人さんかい? ああ、参っちまったよ……近くに魔物の群れが発生してな……畑を荒らされるわ、備蓄してた食糧も全部持っていかれるわで散々なんだ……おかげでもう村の者は何日もの間、水しか飲んでいない……」


「それは大変ですね。分かりました。その問題、俺が解決しましょう」


 ブリブリブリブリ!!

 俺はおもむろにケツから少し固めのカレーを生み出し、手に取ってその人に差し出した。


「てめぇ! 俺たちにクソを食えってのかよ!?」


「これはうんちではありません。カレーです」


「カ、カレー? 何だそれは、聞いたこともないぞ……」


 この世界に本来カレーは存在しないので、当然の反応だ。


「だが、何だこの食欲をそそる香ばしい匂いは……」


 男がごくりと生唾を飲む。


「これはれっきとした食べ物ですよ。どうぞ食べてみてください」


 男は半信半疑といった様子だったが、空腹も限界だったのだろう。俺が差し出したカレーを指ですくい、恐る恐るといった様子で口に運んだ。次の瞬間。


「うまぁぁぁぁぁぁぁいッッッ!!!」


 男は絶叫して感涙に咽び泣き、ガツガツとカレーを食べ始めた。何事かと周囲の村人たちが集まってくる。


「みんな、この少年は救世主だ! 美味いものが食えるぞ!」


 男の言葉に飢えた村人たちが次から次へと群がってきた。


「はは、皆さんそんなに慌てなくても、俺のカレーは無限ですから安心してください」


 歓喜に湧く村人たち。

 俺はこうして村の食糧問題を解決したのだった。


 その晩、宿屋の部屋でカレーを食べているとドアがノックされた。

 ドアを開けると、同い年くらいの少女がそこに立っていた。この子はたしか村長の娘だったはずだ。


「どうしたんですか? またカレーが食べたくなりましたか?」


「あなたはこの村の救世主だから、せめて何かお礼ができないかと……でも見ての通り何もない村ですから、差し出せるとしたら私のこの体しか……」


 少女が目の前で服を脱ごうとするのを止める。


「そんなことで恩返しされても、俺は嬉しくありません。もっと自分を大切にしてください」


「きゅ、救世主様……」


「そういうのは、あなたが愛する男が見つかったときにするべきですよ」


「私はあなたを愛してます! 抱いてください!」


「そっか、じゃあ抱くわ」


 俺は村長の娘を一晩中抱き続けた。




◇◆◇




 俺のカレーの話は近隣の村々でも噂になったようだ。

 この村と同じように魔物の被害により食糧難にあえぐ村というのは珍しくないらしく、俺はあちこちに引っ張りだこになり、あちこちの村で女を抱いた。


 村の救世主と呼ばれた俺はいつからか王国の救世主とまで呼ばれるようになり、ついには国の王様に呼び出されるまでになったのだった。


「そなたの活躍は聞いている。ところで、わしもその噂のカレーとやらを食してみたいのだが……」


「お安い御用ですよ、陛下」


 ブリブリブリブリ!


「き、貴様! 国王陛下の前で脱糞するなど、万死に値するぞ!」


 護衛の騎士っぽい男がいきり立ち、胸ぐらを掴んできた。


「離せよ。これはうんちじゃない、カレーだ。……カレーをバカにすると、殺すぞ」


 俺はたった今生み出したカレーを口に運び、騎士を睨んだ。


「き、貴様ぁぁぁ!」


 騎士が殴りかかってくるが、ひょいとそれを避けて足を引っかけてやった。騎士が盛大にこける。

 本来なら、ただの村人であるはずの俺が訓練をしている騎士に敵うはずもないのだが、俺はこうなることを見越してカレーに身体能力超強化の効果を付けておいたのだ。


 俺のカレーは美味いだけではなく、食べたときに様々な能力を発現させることができる効果をつけられるのだ。


「く、クソ……今ので腕が折れた……!」


「そうか。これを食え」


 回復能力を付けたカレーを生み出し、腕が折れたという騎士の口に突っ込むと骨折があっという間に完治した。


「うまぁぁぁぁぁぁぁいッッッ!!! しかも怪我が治ってるぅぅぅッッッ!」


 騎士が感涙に咽び泣いた。


「……決まりだな。わしももう老い先短い。そろそろ次の王を探さなければと考えていたところだ。どうだろうか少年、わしの次の国王になってはくれまいか?」


「陛下、そんなことを仰らないでください。まずはこれでも食べて、元気を出してくださいよ」


 俺は国王の口にカレーを突っ込んだ。

 見る見るうちに国王が若返っていき、二十代の青年へと変化した。


「うまぁぁぁぁぁぁぁいッッ!! ……はっ!? こ、これは……わしはいったい……!?」


 カレーに若返りの効果を付けておいたのだ。


「これでまだまだ頑張れますね」


「そなたは……そなたはわしの……この国の恩人じゃあああああ!」


 その夜、国をあげての盛大な祭りが開かれた。

 国王の娘である姫が俺に惚れたと言ってきたので抱いた。


 数年後、なんか魔王が現れたが俺のカレーの力でやっつけて、俺は改めてこの国の救世主と呼ばれることになった。


 そう、カレーは美味しいだけじゃない。

 万病にも効くし、食べると不思議と力が湧いてくる万能食なんだ。


 みんなもカレー、食べような!!

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