温もり

ヴィンセントさんと2人になって沈黙が流れる。僕はどうしたらいいのか分からなくて、ただ大人しくしていた。


「ねえ、僕の名前、覚えてる??」


唐突に問われて、一瞬反応が遅れた。


「、、ヴィン…セントさん」


「そうだけど、違うよ。みんなに何て呼ばれてるって言ったか覚えてない?」


あれは親しい人が呼ぶやつだと思う。会ったばかりの僕が呼ぶべきじゃないと思うんだけど………


「呼んでくれないの?親しくされるの嫌?」


嫌なわけがない。頭を撫でられたの何て初めてだったし、凄く嬉しかった。そんな意味を込めて頭を激しく横に振る。


「ふふっ。じゃあ、呼んで?言ったでしょ。僕は君の兄様になりたいの。」


そこまで言われれば断る理由もなく、


「……ヴィーさん。」


素直に呼ぶと、嬉しそうに破顔された。


「ありがとう。お腹、空いてない?空いているなら、何か持ってきてもらうけど。」


そう言えば、一昨日くらいから何も食べてない。でも、お腹空かないし、何かだるいし、食べれる気がしない。


「空いて………ない。」


僕が答えると、また、頭に手が乗せられた。


「遠慮してる訳ではなさそうだね。もしかして、体調悪い??今の自分の状態、言える?」


「何か……ぼーって。少し……だるい。」


「うーん。少し、寝っ転がろっか。僕は、エドさん呼んでくるから。」


「……やっ、、!」


手から伝わってくる温もりが消えそうになって、思わずヴィーさんの手を掴む。凄く申し訳ないけど、人の温もりを知ってしまうと、離れていかれるのが怖かった。今までは平気だったのに、怖さから身体が少し震える。すると、不意に全身に温もりを感じた。抱きしめられたのだ。


「体調悪いなら寝転がった方がいいんだけど、怖いのは良くないし、エドさんがくるまではこうしててあげる。」


ヴィーさんから伝わってくる体温が心地よくて、自然と心が落ち着く。いつの間にか、身体の震えは無くなっていた。

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