第14話 人工肛門になったお話 8

 緊急外科手術の時は、直ぐにに手術室に連れて行かれた感じだったのですが、

 今度の人工肛門閉鎖手術は予定していたことですから手術前日の朝に入院し前回とは全く違う念入りな検査があり驚きました。


 歯科の受診をして歯磨きの仕方を指導されました。

 酸素の管が喉まで差し込まれるので口腔内の菌が肺に入らないように、みたいな説明だった気がします。(よく覚えていない)

 血液検査とか麻酔の種類と説明とか面倒なことが沢山あり、これらをクリアしたらICUには入らないということでした。

 手術が済めば直ぐに病室に戻って行きます。


 麻酔科の先生が出産時に使う麻酔と同じ硬膜外麻酔を同時に使うと術後の痛みが少ないと教えてくれました。


 この麻酔は背骨の間から入れるとのことでしたので悩みました。

 まず背中に注射をするのです。

 それから細い管をかなり奥の方まで入れて痛み止めの薬を手術中に入れるとのことでした。


 緊急手術の時はしなかったことなのですが、痛みが少ない方が治りが早い気がして硬膜外麻酔もすることにしました。


 そして次の日、手術当日、手術室。


 ベッドの上で横向きになり背中に注射を打たれ後悔しました。背中って注射するの痛いんですよ。



「直ぐに痛みが無くなりますからね。」

 と言われて、その通り痛みは無くなりました。


 しかし不快な感じがして、やめとけばよかったと直ぐに後悔しました。


 麻酔医が

「少し、下腹が押される感じがしますよ。どうですか?」と聞きました。

 私はよくわからなくて


「下腹?」と聞き返しました。

「そうです。下腹が押されている感じがしますか?」

「うーん?どうかな?」

 みたいな曖昧な返事をした途端、

「はい、中止します。上向いてください。」

 と言われ上を向いた途端に麻酔のマスクを口に当てられ意識を失いました。


 気が付いた時は手術は無事に終わり病室に運ばれていたような気もします。


 また、麻薬を入れてもらい天国気分を味わえると思い楽しみにしていました。


 ところが地獄が待っていました。

 硬膜外麻酔のせいかもしれません。


 麻薬のボタンを押してもらうたびに吐き気との闘いです。

 術後なので身体を起こす事が出来ません。


 麻薬で痛みを無くせば吐き気。

 吐き気を無くすために麻薬を止めれば痛み。


 どちらにしてもしんどい術後でした。


 そして夜中。

「術後ですからナースコールを遠慮なく押してくださいね。」

 と言われていたので吐く入れ物の用意とティッシュを手の届く場所に用意してもらおうとナースコールを押しました。

 吐き気と戦いながら1時間、とうとう顔を横に向けて胃液を吐いてしまいました。

 吐き気は少し落ち着きましたが気持ち悪いまま、更に1時間耐えました。


 やっと来てくれた夜勤の看護師さんは忙しそうで大変申し訳なかったのですが、夜中に吐いたものの処理と温かい濡れタオルで首の回りを拭いてもらいました。

(点滴で片手しか動かせない)

 夜中なのに電気を点けて同室の他の患者さんも起こしてしまったことでしょう。


 次の日、硬膜外麻酔の先生が来て

「中途半端にやめたのでその影響での吐き気かもしれません。」と言われました。


 今後、手術することがあっても硬膜外麻酔はするまいと思いました。


 切っていた腸を繋げてお腹の中に戻してもらったという実感が湧くのは、まだまだ先のことになります。

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