第16話 嵐の前の静けさ・後編

 ミーティングが始まった。私は横で黙って聞いている。会議の内容は順調に進められていった。


 要約すると、解析班のようなものがあるらしく、


 (1)魔法でコーティングされた異物を調べた所、隠蔽に使われた魔法が判明した。

 (2)その魔法の残滓を目標として探知魔法が発動する実験を試み、成功した。

 (3)よって、コーティングされている異物を目標物として探知魔法を使用する事ができる。

 (4)しかし、隠蔽に使われた魔法の性質を変えられてしまうと、再び探知すことができなくなる。


 ちなみに今回、その特殊な探知魔法を使うのは森繁未央もりしげみおさんが担当した。そのためもあって、こちらに派遣されくることになった。と、本人が言っていた。そして、事前に森繁さんが偵察した所、探知魔法で敵のアジトの位置は判明している。

 

 今回の作戦目標は、


 (1)犯罪組織に加担する魔法使いの捕縛、その後、異世界へ送還

 (2)異物の回収

 (3)能力犯罪者を警察へ引き渡しする


 と、なっている。今日初めて知ったことだが、一部の警察関係者だけ異物関連による犯罪を認識しているとのことで、事後処理は問題なさそう。その辺のことについてはあまり教えてもらえなかった。

 

 あとは人員を導入して、作戦を実行に移すだけ。その作戦には私と、村瀬さん、マリも参加する事になった。細かい取り決めが行われたところで、ミーティングは終了。決行日は明朝だという。

 集合場所は現地になるので、森繁さん含め、ミーティングに参加していた異世界人の人たちも方々ほうぼうに解散していく。ここにはいない人たちも実行部隊として参加する人がいる。そのために、連絡網を敷いておく必要があると森繁さんは去り際に言っていた。


 通信設備の横に設置された転送装置に、作戦で使われる装備品が異世界から送られてきた。

 その中には、村瀬さんや、マリの装備品も含まれていた。マリの装備に関しては専用の物のようだ。

 一緒に使い方が書かれた説明書も用意されているが、異世界の言語なので私には分からなかった。


 村瀬さんいわく、普段、異物を異世界に送り返している魔法は例外的に特殊な魔法だそうで、世界を跨いで物体を転送するには補助となる転送装置が必要だそうだ。

 異物は厳密に言うと、直接異世界に飛ばされるわけではく、こちらの現実世界の転送装置を経由して異世界に行くというのが本当の手順になるとの事。


 何も知らない事ばかりだと痛感する。あえて聞かない方が良いのかと、今まではそこまで関わろうとしていなかったのも悪かったのかもしれない。これからは、必要なことはドンドン聞いていこう。


 朝は早い。今日は寝る事にして明日に備えよう。

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