第13話 事態は二転三転する・前編
中島義行は先日、村瀬めぐみから聞いた異物の件について考えていた。
異世界の組織からの調査の結果、犯罪組織が手にしていた異物は、魔法でコーティングされていた事が明らかとなった。つまり、犯罪組織に加担している魔法を使える者。
それは、いったいどんな人物なんだろう? どんな目的なんだろう? 分からない事に疑問を抱かせ――。
《中島さん。手が止まっていますよ》
マリに注意される。
「ア、ハイ」
中島義行
「中島さん。考え事も結構ですが、手も動かしてくださいね」
村瀬さんにも注意された。
「おっしゃる通りです」
アパートの中の荷物をダンボール箱などに入れ、梱包の準備を進めている。3人でやれば結構早い。というより、マリが凄いな。ゴーレムという性質上なのか、手際よく作業を進めている。今日のうちには必要な荷物は全て準備できそうだ。これならば予定通りの日程で引っ越し業者に頼めそうである。
《中島さん。これは何ですか?》
「!」
しまった! まだ残っていたのか!
《この形状。察するに――》
私は瞬時に<<疾走のカルマ>>を発動し、マリからそれを奪い取り、ごみ箱に捨てた。
「あー!! それね!! 捨てるの忘れてたァ! 子供の頃のオモチャだよ! まだ残ってたんだ! ごみだから捨てようね!」
《自分の欲望を満た――もがもが》
私はマリの口を塞いで人差しでシーッの合図をしながら静かに話す。
(マリ! 頼む! それは内緒にしておいてくれ! いいね?)
マリは、コクコクと頷いた。後ろで作業している村瀬さんのほうをチラッと覗くと
ダメだ。ニヤニヤ笑っている。
違う。違うんです。
私は誤魔化すように作業を続けた。
「さ、さーて。もう少しで終わるなぁー。頑張るぞー」
村瀬さんは「そうですね」と、言いながら笑いを
そんな事もあり、引っ越しの準備は無事に終わった。
~引っ越しの日、当日~
引っ越しの業者が来てくれたので、梱包した荷物は手際よくトラックに積み込まれ。無事に荷物は送られて行った。
すると、引っ越し作業を手伝うと言ってくれた飯田が車に乗って現れた。
私は車を持っていないので、飯田の車に全員乗って移動する手筈となっていた。
「やーやー。皆さんお揃いで、ササッ。車に乗っておくんなまし」
「ああ。悪いな。車まで出してもらって」
「フッ。良いってことよ。困ったときはお互い様だろ?」
私たちは車に乗り、軽い雑談をしながら次の目的地まで向かっていく。
高速道路にはいり、しばらく走っていると、マリが気になる事を言い始めた。
《変ですね、後ろの車。高速に乗る前からずっとついてきている気がしますが》
私と村瀬さんは後ろを振り返り、後方の車を確認する。
運転席の人物…。誘拐犯の一人だ!
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