第8話 予想された未来、予測できない未来・前編
主人公、中島義行は。病院の前に来ていた。医者に怒られる為に…。
受付を済ませ、待合室で待機後、担当医とご対面。案の定、「何故ギプスをしていないのか」の質問から始まり、「何考えているんですか。無事治っていたから良かったもののウンヌンカンヌン」と、返す言葉もございません。
一通り儀式を済ませ、病院を出た帰り道で妙な三人組を発見した。私は何か変だなと思い、さり気なく通り過ぎるように遠くまで距離を歩いた所で、向こうから気づかれないように三人組を観察してみた。
何やらブツブツと話しながら握手をした後、一人はその場から去ってしまったが、残りの二人は道路の方を見ている。これはもしやと思い、私はスマホの録画ボタンを押した。その時、一人が死角に隠れ、もう一人が、車が通ったタイミングで。
いきなり車の前に飛び出した――。
当然の如く、男は車の正面と接触し、ゴンという鈍い音と共に跳ね飛ばされ。車は舵を失ったかのように道路脇の壁にぶつかった。
男は地面に横たわり、横から二人組の片割れが驚いた表情で近づいてきたかと思いきや…。急いで救急車を呼ぶように、車の運転手に指示していた。
一連の流れを見ていたから分かる。跳ねられた男は衝撃と共に自ら飛んでいた。これは、当たり屋というヤツだ。それにしても、車も決して遅いスピードで走行していたわけではないし、ベッコリと凹んだ
交通事故ではあるが、奇妙だ。奇妙ではあるのだが、犯罪行為を目撃してしまった以上。目撃者として警察に真実を告げねばなるまい。しばらくして救急車と警察が来たかと思いきや、跳ねられた男性は救急車と共に後を去り、車の運転手と、二人組の片割れと、警察で、事故の実況見分が始まった。
私はタイミングを合わせて、その場に声を掛けに行き、警察の人に先ほどスマホで録画した犯行の証拠となる二人組の動画を見せ、真実を告げた。二人組の片割れは、オドオドした動きを見せ、車の運転手は、気鬱な表情から一転、怒りの顔をあらわにしていた。警察官が持っていたスマホに、証拠となる動画を提供した後、私は軽い会釈をしてその場を去った。
しかし話はここで終わらなかった。
自宅までの帰り道の途中、路地を曲がった所で、背中に痺れる痛みが急激に走った。
何事かと確認する間もなく、視界は塞がれ、太い紐のような何かで縛られたかと思うと私は……。
誘拐にあってしまった。
どうやら、車でどこかに向かっているようだ。頭に袋を被せられているせいで、方向感覚が全く分からない。一つだけ分かる事は、私の他にも、同じように縛られて横たわっているであろう人間が、傍に何人かいるという事だけ。
私たちを選別するかのような目で見ている男が喋り始めた。
「おい、お前らは、ここから逃げることは出来ない。ただし、運が良ければ生きて帰る事もできるだろう。だから、大人しくしておけ」
そう言うと男たちは、私たちを閉じ込めている部屋から出て行ってしまった。誘拐された人数は……1、2、3……。私含めて3人だ。
部屋の中を見渡すと、端っこに申し訳程度に簡易トイレが置かれ、天窓から外の光が入ってきている。ジャンプしても届かなそうだ。連絡手段となる携帯電話や、財布は盗られてしまった。入口には、外から鍵が掛かっているように思える。生きて帰る事もできる……そのようなギャンブルに身を投じている場合ではない。
この人たちと共に、ここを脱出すると決めた私は。自身の能力<<膂力のカルマ>>を発動し、縛られたヒモを無理やり引きちぎり、同じく縛られている人たちも解いてあげることができた。
(ちなみにヒモを引きちぎった時に腕に傷を負ったが、<<治癒のカルマ>>ですぐ治している)
「ありがとうございます」
「あんた、凄いな。紐を引きちぎるなんて」
「いえ、どういたしまして。それよりも先ずはここを脱出しましょう。私の名前は中島義行――」
軽い自己紹介を済ませ、私は、佐藤さんと鈴木さんと3人で脱出するという事になった。
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