ケッコンソーダンジョンへようこそ!
大橋 仰
第1話 いざ、ダンジョンへ
ここは結婚を夢見る独身冒険者が訪れる迷宮。
人呼んで『
このダンジョンを攻略した者は、幸せな伴侶に恵まれるという。
「まったくバカげた話だ。そんな噂、誰が信じるものか」
そう言いながらダンジョンに向かうのは、34歳独身女魔導士。
「こんなインチキなダンジョンがあっては、国のためにならない。国民救済という崇高な目的のもと、私が攻略してやる!」
そう、多くの独身冒険者は、なんだかんだと理由をつけて、このダンジョンにやって来るのだ。
彼女がダンジョンに入ろうとしたところ——
「このダンジョンに入るためには登録料が必要です」
受付係のモンスターにそう言われ、入場を止められた。
彼女は当たり前のように登録料を支払い、慣れた手つきで登録申込書に必要事項を記入した。
そう、彼女はいろんな意味で、経験豊富な女魔導士なのだ。
♢♢♢♢♢♢
受付でもらったパンフレットを読む。
『当ダンジョン最奥地には『相談の間』があります。そこへ至るまでの道中、多くの試練があなたの前に立ちふさがるでしょう。しかし、多くの困難を
「フッフッフ、上等だ」
彼女は不敵な笑みを浮かべ、ダンジョンの奥へと向かった。
ダンジョンに入って間もなく。
スライムの群れに遭遇した。
「フッ、まずは低級モンスターでこちらの実力を試すつもりか。いいだろう」
彼女は魔法のカードを取り出した。
「くらいなさい、ソロソロオハダノ・マガリ・カード!」
彼女は最近、化粧水を変えたそうだ。
カードから不思議な水が周囲一帯に放たれる。
不思議な水を浴びたスライムは溶け出した。
「フッ、やはりスキンケアは大切だな」
魔法の効果とは何の関係もない一言をつぶやき、彼女は満足げにその場を後にした。
しばらく歩みを進めると、目の前に毒々しい臭いを放つ沼が現れた。
これまで多くの冒険者の行く手を阻んできたようだ。
「フン。くだらない」
置換魔法を使うことにした。彼女お得意の魔法だ。
彼女は美容院でママさん雑誌を手渡されたとき、いつも魔法を使いさりげなくティーンズ雑誌に取り替えていた。
彼女は誇り高き女魔導士なのだ。
毒の沼の向こう側にある大岩と、自分の体が入れ替わった。
「フッ、経験の差ってヤツだな」
彼女は少し切ない笑顔を浮かべながら、ダンジョン奥へと歩みを進めた。
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