40年前の転売ヤー
桃太郎
第1話 40年前の転売ヤー
昨今ようやく、転売ヤーへの反撃が始まった。そうもてはやす方々もいよう。
が、私は知っている。転売ヤーなど、40年前から存在した。
その手の話しは、既に通過している!
人類とは、同じ過ちを繰り返さないと気が済まない生物だ。
これから、転売ヤーにまつわる昔話と蘊蓄を少々語っていこう。
* * *
1979年4月7日……。
それこそが、そもそもの始まりの日だった。
その日から放送されたアニメ番組こそが、火付け役だった。タイトルは……
『機動戦士ガンダム』
で、バンダイナムコグループ(当時、バンダイ)が『機動戦士ガンダム』のプラモデル商品化権を取得し、製作販売を手掛ける運びとなった。
しかし、バンダイの唯一の過ちは、『機動戦士ガンダム』の人気を過小評価した事だ。
すると、全国の小売店では、ガンダムのプラモデル……『ガンプラ』が、飛ぶように売れた。文字通りの意味でだ。
結果、品切れが頻発し、『ガンプラ』を買いたくても『買えない』子供達が大勢いた。
ここまで説明されれば、勘の良い読者諸君は、お気づきであろう。
そう、これこそが、転売ヤーが、誕生する土壌であると……。
しかし、当時の教職員、PTAなどの『大人達』は、こう言っていた。
「子供同士で、『商売』をするとは何事ぞ!」
更に、ホームルームなどの場で、『ガンプラ』を『売る事』を止める様『指示』した。
確かに、『転売』と言う行為には、『その商品を必要としている人物の権利』を『阻害』する。その側面が、必ずついて回る物である。
今から見ても、何を頓珍漢な議論かと思う。
自分で、『商売』をした事が無い人間特有の『ズレた』考えに他ならない。
勿論、子供の『ガンプラ転売ヤー』は、早々に駆逐された。
それは、教師や親から『指示』された訳ではない。
ましてや、当時の子供達が、己の罪悪感や良心に従った訳でもない。
賢明なる読者諸君は、お気づきであろう。
そう、バンダイが、『ガンプラ』で儲けたお金を生産力に投資して、増産したのだ。
結果、供給量が増え、安定的な在庫を持つ事が、可能になったのは、小売店だ。
需要と供給、そのバランスと、結果として出力されるのが、小売価格である。
それこそが、資本主義の原理原則であり、原拠とも言える。
この辺りで、40年前の話しを締めくくろう。
* * *
では、『40年前の転売ヤー』から、我々は何を『学ぶ』事ができようか。
そこを、少々掘り下げていくとしよう。
ある意味、『転売ヤー』とて、『資本主義』の産物だ。広義ではな。
が、昨今の『転売ヤー』は、すっかり『奇形化』してしまった。
買い占めと、それに伴う高騰を狙った『悪質』なやり口。
まさしく、『その商品を必要としている人物の権利』を『阻害』している。
かつては、『転売』とは、『目利き』だった。
「この商品は、値上がりするのか。するとして、いつまで『寝かせて』おくのか。」
その判断を『自己責任』で行い、トランクルームを自腹で借りて『寝かせる』。
それも、年単位の時期を待つ事もありえる。
或いは、『ダフ屋』と呼ばれる者達もいた。
これは、スポーツや、コンサートなどのチケットを、専門に『転売』していた者達だ。
しかし、彼等とて『買い占め』などしないし、出来ない事を知っていた。
ネット注文が、出来なかったからな。
故に、『過剰』な『手数料』を『上乗せ』などしなかった。
池波正太郎と言う人物の話しをしよう。
大正生まれで、平成逝去の小説家だ。現在でも、根強い人気がある。
彼が、発表した小説に、あった。
時は、江戸時代、盗賊には3つの掟があった。
1つ、殺さず
1つ、犯さず
1つ、金持ちだけから盗む
だそうだ。
しかし、時代が下ると、そう言った『掟』に従わず、『急ぎ働き』をやる輩が増殖した。
ちなみに、『急ぎ働き』とは、押し込み強盗に近い。
中に入ればこっちのもの、とばかりに、店主の家族を人質に取って、蔵の鍵を出させた挙句、全員惨殺。などとやりたい放題だった。
そこで、幕府はそのカウンターとして、火付盗賊改方の権利を強化し、盗賊は見つけ次第、斬り捨てる。その方向へと舵を切った。むしろ、その方針を、強化せざるを得なかった。
これらを総じて、言うべき言葉が、1つある。それは……
『節度』
そう、『転売』も『目利き』として『節度』を守っていれば、批評も批正も批判もされないだろう。
私も、只の『目利き』や、『ダフ屋』を『悪』とは、考えない。
賢明なる読者諸君も、同感である事を切に願う。
では、この辺で締めくくろう。
<終わり>
40年前の転売ヤー 桃太郎 @MOMOTAROU_
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