第14話 鈍感なオヤジ達。
階段の前で身構えた時に正午を迎えた。
ダンジョンリセットにより今まで登ってきた階まで魔物が蘇ってしまう。
運悪くイイヒートの横にはゴブリンの群れがいる。
今のイイヒートにゴブリンは何の問題もないが突然横に群れで発生をされるとイイヒートは驚き「わぁっ!?」と声をあげる。そのまま慌てたイイヒートがゴブリンを斬り殺すとそれが合図のように14階の魔物達が一斉に襲いかかってくる。
飛び出そうとしたイブとライブに「イブ、ライブ!見てるだけでいい」と制止するミチトは「イイヒートさん!シヤ!シーシー!連携してみせてくれ!」と言った。
イイヒート達は振り返ることもなく「スティエットさん!?」「マスター!了解!」「うん!イイヒートさん!後ろと遠距離は守るから近場から切って行って」と言った。
イイヒートの剣は約1年前に比べたら雲泥の差だった。
ナンパした女性達にキャーキャー言わせるためだけに学んでいた剣も立ち振る舞いも全てライブをナンパして使用人と間違えてミチトに喧嘩を売った事でサルバン騎士団に送り込まれてカタコトの言葉しか話せなくなるまで追い詰められたイイヒートは目の前でミチトとアクィの訓練を目の当たりにする。
イイヒートに言わせると達人同士の真剣勝負のような訓練を見て自身の剣がいかに見た目だけの物だったかを悟り心を入れ替えた。
キチンとした剣筋で迫りくる蜥蜴人間を一刀両断する。
イイヒートが魔物達の気勢を削いだところでシヤがシーシーを見て「シーシー!合わせるんだ!」と声をかける。イイヒートのバックアップに入ろうとしていたシーシーは「シヤ?」と聞く。
シヤは深く言わずに「来い!」と言うとシーシーも「うん!」と言ってシヤに抱き着く。
シヤに抱き着いた瞬間、シーシーの中にシヤの行いたい攻撃が見えた。
確認するようにシヤが「見えるな?」と聞く。
頷いたシーシーは「うん。イイヒートさんをかわすんだね」と言いシヤも頷く。
そして呼吸を合わせて2人同時に「「フレイムウェイブ!!」」と言う。
シヤに抱きついたシーシーがシヤのやりたい事を理解して同時に術を使う。
シヤとシーシーの合体攻撃。2人の出した火の壁、火の波は魔物達を見事に飲み込んでいた。
後ろで見ていたライブが「合体技いいなー」と言って口を尖らせる。
横のイブが「イブとライブでやりますか?」と聞くとライブは即答で「マスターとやりたい」と不満げに言う。
それを見たイブは「うふふ、ライブは本当にマスターが好きですね」と言ってニコニコと微笑んだ。
14階の魔物が全ていなくなり、ライブが収納術で魔物の死骸を回収している間、シヤが「マスター」と声をかけてきた。
ミチトは「なにシヤ?」と聞くとシヤは「シーシーはなんでか俺に抱かさらないと合体攻撃が出来ないんだ。シイやシヅ達は手を繋げばいけるんだけど…」と言う。
それはシーシーが意識してか無意識かは別としてシヤに抱きつきたいからでシヤはその事に気付いていない。
ミチトは「最初に合体攻撃した時に抱きついたからかもね」と言って説明をする。
シヤ達を攫ったり買ったりして術人間にした貴族エグゼ・バグ。
少女趣味でシーシーたちを凌辱していたエグゼを約1年前にミチト達は痛めつけた。
その際にミチトがリナを抱きかかえてリナのイメージする術をミチトが放つ合体攻撃を見てシヤとシーシーも真似た。
その時の事を思い出したシヤは「それか…」と言って困り顔になる。
ミチトは「シヤは抱きつくの嫌なの?」と聞く。シヤの後ろでシーシーが暗そうな顔をしていてここでの回答ミスはいただけない。
イブたちがフォローに入る用意をしているとシヤは首を横に振って「いや、違うんだよマスター」と言う。
「ただ周りに迷惑がかかると思って、シイ達となら手だがシーシーとは抱きつかないとダメだから、今もイイヒートに負担がいったし」
この言葉を聞いた瞬間にイイヒートは「それは個性だよ。気にしないでいいって」と声をかける。
シヤは不思議そうにイイヒートを見て「個性?」と聞き返す。
優しく頷いてイイヒートは「グローキさんは足は速いけど目は悪いだろ?シヤはグローキさんと組むのは嫌い?」と聞く。
グローキ・サワサンと一緒に訓練をしたり魔物を倒す時の事をイメージしながらシヤは「全然、グローキさんは良い人だし優しいし楽しい」と答える。
イイヒートは貴い者の顔で「だろ?なら俺達もシヤとシーシーが抱き合うのは嫌じゃないよ」と答える。
この答えでホッとした顔のシヤは本来のシヤ…ディーサンの顔になって「そうか…、シーシー、嫌じゃないって言われた。これからも合体攻撃を行えるね」と言ってシーシーに話しかける。
シーシーもホッとした顔で「…うん…」と言うとライブは「シーシー、良かったじゃん」と言って頭を撫でる。
イブはシヤの所に行って「シヤ君はシーシーちゃんを抱きしめるのは嫌じゃないですよね?」と聞く。シヤはキチンと「はい」と返事をした。
この言葉にイイヒートはニコニコとして、シーシーは真っ赤になり、ライブはニヤニヤが止まらない。
だが次の瞬間、シヤは「抱きしめるとキチンと重いとか軽いとかわかるから、重いと安心します」と言い切った。
皆が唖然とするなかシーシーは「あ…、それでこの前の訓練の後に唐揚げ一個分けてくれたの?」と聞くと頷いたシヤは「あの日のシーシーは軽かったから、少しでも食べてもらいたかったんだ」と言った。
そのやり取りを見たライブとイブは「なんかシヤって」「オヤジマスターに似てますね」と言う。
「ここにクラシまで合わせたら最悪かも」
「言えてます」
ここでクラシの名前が気になったイイヒートが「クラシってクラシ・ヤミアールですか?」と聞くとライブが「うん、そうだよ」と答える。
シヤがミチトに「トウテに居たけどマスター以外に支配権の強奪が出来る貴族ですよね?」と聞く。シヤが助かった数時間後…シヤが助かる数時間前に暴走状態になって発火して死にかけた術人間の少女をミチトが不在の中クラシが名乗り出て支配権の強奪を実行した。
半日以上の時間をかけてクラシは何とか少女を助け出していてシヤは助けた所だけは見ていた。
ミチトは頷いて「うん。彼はキャスパー派の連れてきた術人間の1人を保護してくれたよね。今もそのシンジュと一緒に俺の師匠の奥さんと暮らしてるよ」と説明をする。
クラシの名前が出た事でライブがシーシーに「シーシー、聞いてよ。シンジュはクラシが大好きなのにクラシが「これは俺の施術がまだ甘くてスレイブとして勘違いしてるからかも知れないんです。シンジュが俺なんかを好きになるなんて変です」って言うんだよ」と告げ口をする。哀れんだ顔になったシーシーに今度はイブが「アレは可哀想でしたよね。イブとライブはマスターの2番目のお母さんのソリードさんが煮込みシチューを食べさせてくれるとお手紙をくれたから遊びに行ったんですけどそれを見てしまいました」と言う。
「シンジュがクラシにベタベタしてるのも「調子悪い?お腹痛い?」だからね」
「クラシさんが好きで一緒に寝たいのに「まだ怖い?不安とかある?安心していいよ。俺ももっと心を鍛えるよ」でしたよね」
ライブとイブの話を聞いたシーシーは「あー…」と言った後でシヤを見る。
思う所があるのだろう。
「それは確かにシヤとクラシ・ヤミアールとスティエットさんが揃ったら凄いことになりそうですね」
イイヒートの言葉に女性陣はうんうんと頷く。
「ほら、15階行くよ!」
「マスター、俺たちおかしくないよね」
ミチトとシヤはさっさと階段に向かって行く。
ライブが2人の背中を見て「あ、誤魔化した」と言ってイブが「ライブ、きっとマスターは俺はクラシ君程ではないって思ってますよ」と話しかける。その横でシーシーも「シヤもだと思う」と言って歩き始める。結局最後に一番後ろを歩くイイヒートが「緊張感ないなぁ…」とボソリと言った。
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