静かな時間が過ぎていく

(まさかこの学校、サボりには厳しいとかじゃないよね)と思ってしまうくらいだった 沙世子がそんなことを考えていると先生が、「では前回と同じようにグループに分かれてそれぞれ答え合わせを行っていってもらうので 自分の番が回ってきたら席を立って前の黒板に向かって行ってください」と言ってきた なので沙世子がその指示通りに前に出て行ったのだがその時、沙世子の視界の片隅にある人影を捉えるとその方向に視線を向けた

(えっ!?︎あの子も呼ばれたんだ)

その人物はどう見ても十代前半の少女に見える見た目だったのだが、沙世子と同様にテストを受けるような雰囲気をまとっていた そして、その後沙世子は、順番が巡ってくると、先程見つけた謎の女の子の前に立つと問題を解き始めたのだが沙世子の解答に対して、謎は少しも悩むことなくスラスラと答えたのだ それを見ていた周りの人達の反応はとても不思議な物を見てしまっているかのように唖然としているようであり、沙世子もまた、何が起こったのか全くわからず混乱した様子を見せるのであった だがそんな状況の中で、沙世子はあることを思い出すと慌ててそのことを確認するため口を開くのだった。

そんなある日、玲子が通り魔に刺されて死んだ。

享年16歳。

犯人は不明。

葬儀は家族だけで行われ沙世子は参列できなかった。

一人、校庭で泣いた。


涙はいつまでも止まらなかった。

テストの結果はさんさんたるものだった。

三者会談で親や担任からこってり絞られた。

どうして学業に身が入らないのか正直に答えろと責められた。

しかたなく、玲子の死がショックだったというと烈火のごとく叱られた。

死んだ人のせいにするな、と。

玲子の母親も激怒し「死んだうちの娘に何の恨みがあるのか。

これは虐めを通り越して犯罪です」と警察に訴えた。

被害届は受理されて沙世子に有罪判決が下った。

佐世子は今、拘置所の独房にいる。

窓の向こうは満天の星空で、それがまた沙世子の胸を締めつける。

面会に来ないでと頼んだ。

沙世子に言い渡された刑は3ヶ月という短い期間の奉仕活動。

でも、それでよかった。

たった3ヶ月の懲役でいいのか、もっと長く反省しろと言われた。

3ヶ月以上もあそこにいると頭が変になりそう。

沙世子が奉仕活動を希望して、そう決定した。

そして、それは今日からだ。

もう後戻りはできない。

沙世子の足は震えていた 。

刑務所に入ると聞いた時から覚悟していたはずなのに、現実は想像を超えていた。

でも行かなければ私は本当に壊れてしまう。

それだけは絶対にいやだった。

玲に会いたかった。

会って話をしたいことがいっぱいあったけど仕方がないね。

私がいけないのだから。

翌日から奉仕活動が始まる。

それは受刑者への慰問や清掃といった作業ではなく、いわゆる労働というものでその内容は刑務所内で雑務を行うというものであるが、その内容を聞いた時に沙世子は心底嫌だなと感じたのだ というのもそれはいわゆる囚人の食事の準備だったのだ しかもただの料理じゃない その献立を沙世子は見てみたのだがとても食べられたものじゃなかった 沙世子が見てしまったそのメニューというのは『本日はハンバーグ定食でございます。

ソースにはマヨネーズを使用しております』と書かれていたのだ その文面を見た瞬間、沙世子はこの仕事はきついだろうと思ったが沙世子はそれを我慢することを決めて看守に言ったのだ。

これが沙世子にとって初めての奉仕だった その初日の今日、まずは厨房の手伝いをすることになったのでまずはそこからである 調理台の上には肉がたくさん並んでいた のだ

「今日の夕食分の材料よ。

全部ミンチにしてもらいますから」と言われて そこで初めて沙世子はこの作業をするのに刃物を使うということを察した

「この肉をどうするんですか?」と聞くと、

「もちろんあなたの手でミンチにしてもらうんですよ。

手際よくね」とにっこりと微笑まれた

「私、刃物は使ったことがないのですけれど」と言うと

「大丈夫よ。

誰でも最初は初心者なんだから。

安心して」と返された 沙世子は不安を感じながら、とりあえず言われた通りに包丁を手に取ってみることにした すると、意外に重いことに驚いてしまった こんなものを振り回すなんてできるのだろうか しかし、そんなことを思っていても仕方がないので、とにかく振り上げてみることにした

「えい!」

気合いを入れて振ったのだが、それでも肉は切れない もう一度やってみるがやはり切れない 「あれ?おかしいわね」

沙世子は何度も繰り返してみたのだが結局切れることはなかった その様子を見た先輩が「あなた、筋がいいわよ。

これならすぐに慣れるわ」と言ってくれた 沙世子はほっと一息つくと「ありがとうございます」と礼を言った そしてそれからも沙世子はしばらく肉切りを続けた 途中、何度か休憩を挟みつつ、何とか全てを切り終えた

「お疲れ様。

はい、お茶をどうぞ」

「ありがとうございます」

沙世子はお盆を持って来た女性からコップを受け取ると、それを口に含んだ

「どう?おいしい?」

「はい、すごくおいしく感じます」

それを聞いて、女性は嬉しそうな顔をした

「そう、それはよかったわ」と言って、自分も沙世子の隣に立って肉を切ったり盛りつけたりするのを眺めていた

「それにしても、あなたがここに来るとは思わなかったわ」と女性が言うと、沙世子も「私もです」と言った

「玲子もきっと喜ぶでしょうね」と女性は言って、沙世子の肩に手を置いた

「はい」と沙世子は返事をした そして、その後二人は黙々と作業を続けていった 昼食の時間になった

「今日も沙世子ちゃんのおかげでいつもより豪華な食事になりました。

はい、デザートのヨーグルトもありますからね」

沙世子はスプーンとヨーグルトが入った容器を渡されると、それを受け取ってテーブルに向かった そして、一人で食べ始めた すると、沙世子は隣に座っている女性の視線を感じた その視線の主は、先程まで沙世子と一緒に肉を切っていた人だった その人は沙世子を見てニコニコと笑っている 沙世子はそれが少し気になったが、あえて気にしないようにして食事を続けることにしたが、その人が何かを話しかけてきた

「沙世子さんって、かわいいですね」と言われて、沙世子は思わず口に運びかけていた手を止めた それを見ていたその人も、自分の言葉が沙世子の耳に届いたことを悟ったらしく、話し続けた

「いえ、別に深い意味は無いですよ。

ただ、かわいらしいなって思っただけですから」

沙世子は、そんな言葉を言われても何とも答えようがなく、黙って食事を続けることしかできなかった その後、二人の間に会話はなく、静かな時間が過ぎていくのだった

「沙世子さん、そろそろ時間だから準備をしてね」「はい」

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