第3話
俺が世凪さんに促され入った家は我が家より一回りは大きかった。
「お邪魔します」
「誰も居ないから何にも言われないし、安心していいよ」
彼女は靴を揃えることもせずに家へとあがる。
脱ぎ散らかされた靴からは水が
俺は流石に失礼だと思って一度膝をついて靴を揃える。
「案外丁寧なんだね」
「一応マナー的にはいるだろ……」
彼女にもしかして雑な奴だと思われていたのだろうか、学校では確かにそうかもしれないが、本当はこんな感じだ。
リビングへと通されると、大画面の薄型テレビにソファーがお出迎えしてくれる。
「もしかして世凪さんはお金持ち……?」
いや間違いない。こんな家に住んでいるってことは結構な家だろう。
ところが、彼女は首を傾げて
「さぁ? これくらい普通じゃない? しかも、そんなの興味ないし」
と返した。それ以上に気になったのは彼女が寂しそうな目をしたことだった。
「なぁ、だいじょう……んっ!?」
心配になって世凪さんに近づいた瞬間、彼女の顔が近くなった。
唇にふにっとしたものが触れる感覚。
驚いて離れようとしても、彼女の細い腕が首に回されており、逃げることはできない。
彼女の目を見ると、少し笑っていて、俺をじっと見つめていた。
「んっ……っあむ……ちょっと、抵抗しないでよ……」
不服そうに彼女が言う。鼻同士が触れるほど近く、吐息が顔にかかる。
彼女にキスをされているのだと気づくまで少し時間がかかった。
そしてキスを実感した時、耳、頬が今までにないほど熱くなっていく。
「……っ! ちょっ……待っ!」
待ってくれの言葉すら彼女は言わさせてくれない。
もう一度唇同士がくっつき、少しずつ舌が入ってくる。
彼女の目からは笑みは消え、真剣な眼差しへと変わっていた。
世凪さんも慣れていないようで、なにかを探るように、少しずつ少しずつ舌を動かしている。
徐々に口内を
「っん……くちゅ……はふっ……んちゅ……ぷはっ」
一通りのキスをすると、彼女の右手が俺の頬に添えられる。
親指でゆっくり俺の濡れた唇をなぞっていく。まるで自分がキスをした跡を消していくかのようだった。
「まだ、全然始まってないよ? これからだから」
世凪さんが熱い息を吐きながら、笑う。
そして、何かが気になり様子で彼女は
「やっぱ、ベタベタするからお風呂行ってくる。ちょっとソファーでくつろいどいて」
世凪さんは胸元だけボタンを外すと、そのまま奥の部屋へと消えていった。
「マジか……いや……まじか……」
クラスの女子とキスをしてしまった。しかもえっちなやつ。思い返すだけで痛いほど胸が高鳴っていた。
それに今彼女はお風呂に入っているようで、奥からシャワーの音が聞こえる。
彼女のさっきまでの姿を想像してしまう。
透けている肌や下着。濡れて艶やかになっていた髪の毛。その長いまつ毛も、あの瞳も。
でも、それはもしかしたら他の人も見たことがあるものかもしれない。
だが、俺がこれから見るのはそれ以上の部分、彼女と彼女が心を許した人だけが見られるものだと感じた。
これから起こることを想像すると、余計に興奮してきてしまう。
「落ち着け……落ち着け……大丈夫だ……死にはしない……」
死にはしないというのは言い過ぎかもしれない。でもそれぐらい緊張している。
これも彼女の思惑なのだろうか、何か音が聞こえるたびに反応してしまう。
小さく息を吐く。自分に何度も落ち着けと言い聞かせる。
そうすることによって段々落ち着いてきた。
シャワーの音が止まった。何かゴソゴソする音が聞こえ、すぐに止んだ。
「お待たせ」
「……ッ!?」
出てきた彼女の姿はとても他人に見せられるものではなかった。
バスタオルを胸の前でおさえ、前は申し訳程度にしか隠していない。
そのバスタオルも髪を拭いたものだろう。彼女の体への張り付き具合から湿っているのが分かる。
「ちょっ……服は……?」
あまりの刺激にさっきまで残っていた少しの落ち着きが全て蒸発した。
「なんで服がいるの? これから全部脱ぐのに」
彼女が俺に近づいてくる。そして片手で、シャツを脱がそうとしてくる。
「何で脱がないの……? バスタオル持ちながら脱がすの難しいんだけど……?」
世凪さんは俺を脱がそうと悪戦苦闘している。俺は恥ずかしさで顔をそらしたまま、動くことができなかった。
「ああもう、これ、邪魔……!」
彼女のその言葉と共にパサッと布が落ちる音。
そして、二つの手が体をまさぐっているのを感じる。
「待って、今、もしかして……?」
「喋れるんだったら、早く脱いでよ」
恐る恐る前を見る。そこには
こじらせ童貞を殺すには十分な破壊力だった。
彼女のなすがまま、上、下と脱がされていく。
「じゃあ始めよっか」
世凪さんは服もバスタオルも放って置いて、俺の手を引き自室へと向かう。
これから俺はヤるんだ……実感が湧きそうで湧かないこの状況。
でも、外で触ったのとは違う、温かくなった彼女の手の感触が俺にこの事実を分からせていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます