題未定

@bbw_kun

第1話

 校庭に咲く、雷をうけた黒々とした木を私は見た。

 それは一瞬のことであって、それも毎日そこにあるものなのだ。

 しかし、かの男はその木が何千年も前からあるような気がしていた。

 ほの柔らかい木の上部に掛かりっぱなしのジャージはジュディ・ガーランドの、み顔を想起させる。

 芳香の香りをたてる黄金いろの鍍金がかったジッパーは彼のまだ幼い、みずみずしい初心なる枯渇が色濃く見える唇のようであった。

 彼はまだ死ぬことを知らなかった。

 デネブが降り注ぐ静謐な夜へ、い出ては邪教であるはずの文言を唱えだした。

【鉄は鉄をとぐ、そのように人は友の顔をとぐ、そのように人は友の顔をとぐ】

 彼の心は蠧害に食されていた。奥の方では支柱に聳える柱が真新しい砂の上に放り込まれた、白い貝殻のようにかがやいていた。柱は風をぼうぼうと受け、彼から芥る全てを除去している。

 遠くの方では冬であるはずなのに、青嵐に揺られて死にに行ったはずの枯れ草と百合の花が夏になびいて、一時の享楽、小山の裾野にいたはずの彼らはとっくに登り終え、民家侵入しようとしていた。

 彼は花を静かに折る。たわわに膨らんだ白い帯状のレースを合わせた物体は茎を恋しがり、まだ青々とした口から柔らかい青い汁を数滴零した。彼はそれを気にも止めず、

 その月桂にも見立てた百合を冠にさした。

 おおんの母に会う頃には、ぼろになりそうな百合だったが、手弱女らしい優しい指先で指を立てるとそれは薄氷に咲く白鳥のように又飛び立つのである。

 おおんの母が神聖である。ということはもちろん姿を保つための一例としては挙げるべきなのだが、何よりも彼女の確固たる生命力、うつくしさがそうさせていた。

 明くる日の夜、彼はあらぬことに、邪教を救ってしまった。

 それは、予定説のように清らかに流れて行った―――――――――

 彼はまた没落した、倫理観のない世界を想像し、ファルスと思しき膨らみを目立たせていた。

 それはエレクチオンであった。彼は劫初の時から純朴なる何かに守られていた。

 ジュディ・ガーランドへの故しれぬ傾慕においては、彼の理知を凡そとして越えていた。

 まだ知らぬ未知の愛をかの男は少なからず恐れていた。そして、それは同時にジュディ・ガーランドがゲイ・アイコンであることも知っていた。

 ミシリと寝台が軋む音を聴くと、連想させるのは美しき少女の肋が折れる音であった。

 顔には苦悶の表情が浮かぶ。

―――矛盾

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