第53話 猫貴族、実家へ帰省する


ようやく屋敷が見えてきたと思ったら、屋敷の前で兄さんと母さん、セバスが出迎えてくれた。


「アリア、オーガスト、ただいま戻ったぞ。ティアちゃんが夏季休暇の間我が屋敷に滞在することになったからよろしく頼む。そしてセバスも出迎えごくろう」


「おかえりなさい。あらあらティアちゃんが来てくれたのね。よくお兄様がお許しになったわね。ようこそロッソ家へ」


「この度はお世話になります。はじめまして、義兄様。ルーク君の婚約者のティア・ロッソです」


「おう!ルークの兄のオーガストだ!あ痛っ!くっ兄のオーガストです。この度はようこそおいで下さいました」


いつも通りの言葉遣いで話し出した兄さんを見て、すかさず母さんが頭をはたく。

兄さんは相変わらずの様だ。


「あれ?兄さんちょっと痩せた?」


「そうなんだよ。なにやっても母さんに怒られてばっかでな。勘弁してほしいぜ全く。あんなにうるさいとは思わなかったぜ。やれやれ」


兄さんがこちらに近づき、母さんの愚痴を囁く。

あっ後ろ見た方が…


ゴツン


「いってー」


「聞こえてるわよ~。何度言っても口調を直さないあなたが悪いんでしょ」


兄さんの影から手が伸びてきたと思ったら母さんの魔法だったようだ。


あいかわらず魔法の使い方が上手いけど、なんて贅沢な魔法の使い方だ。


「くすっ」


「ごめんね。これがウチの日常なんだ」


「ううん、すごい楽しそうでなんだかホッコリした」


ティアは馬車の中でも姉さんや父さんと和やかに会話してたから不安はなかったけど、初めて会う兄さんを見てもどうやら大丈夫みたいだ。


「外ではなんですし、屋敷の中へどうぞ」


セバスの案内で屋敷の中へ移動し、今回の王宮での沙汰を母さんと兄さんに説明する。


「二人とも名誉とはいえ、男爵に準男爵なんてすごいわね~」


「ちっ上手くルークにロッソ家の当主を譲ろうと思ってたのに、それじゃあダメじゃねぇか」


「は~本当お前はろくでもないこと考えるなぁ。一体誰に似たんだか」


「あなたね」 「お父様ね」 「父さんだね」 「義父様かと」


やれやれと頭を振る父さんに対して、皆が突っ込みを入れる。


「なっ!おれはもう少しましだったぞ。どちらかというと父上に似てるだろ」


「それは間違いないわね~。お二人ももうすぐ帰ってくるんでしょう?」


「あぁ。そのうち帰って来てくれると思うが、なんせあの人たちだからな。いつ帰ってくるかは全く読めん」


「じいちゃんと会うの久しぶりだなぁ。早く稽古つけてもらいたいぜ」


「兄さんは稽古つけてもらったことあるの?」


「そう言えばルークとフェリシアは会ったことなかったか。俺は小さい時によく遊びながら稽古をつけてもらったがじいちゃんははっきり言ってめちゃくちゃだ!」


「俺よりも脳筋な父上に稽古をつけてもらい過ぎたせいでオーガストがこうなったんじゃないかと俺も反省してる。その点接点のないフェリシアとルークはうまく育ってよかったと思ってるんだがな」


「「あっなるほど」」


僕と姉さんが思わず納得してしまったのも仕方ないだろう。

脳筋気味な父さんが脳筋だというじいちゃんが普通なわけないもん。


「とりあえずルークとティアちゃんは三日程は休みながらダンジョン行きの準備を整えてダンジョンへ向かえばいいだろう」


ダンジョンは隣領の山奥にあるらしく、三日後に馬車でむかうことになった。











事件はその三日後に起こった。


ドーン


屋敷内でティアとダンジョン行きの荷物の最終チェックをしている時にいきなり庭からすごい轟音が聞こえた。


「なんだ今の!それにこの膨大な魔力は!」


「もしかしたら貴族派の襲撃かも!」


慌ててティアと共に庭へ向かうと、砂煙の奥に一人の人間のシルエットが見える


「ぐわぁはっはっはっは。なんじゃこの程度か?物足りんのぉ。もっと手応えのある奴はおらんのかのぅ」


砂煙が晴れると、凹んだ地面には気を失った兄さんが横たわっていた





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あとがき


こんばんは。

予約投稿出来てませんでした。すみませんm(__)m


今後もよろしくお願いします!

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