マドンナは誰に微笑む
shinmi-kanna
第1話 消した窓の明かり
冬の太陽が西の空に沈み、赤く染まった曇の隙間から差し込む光もやがて消え、西向きの都会のマンションの白い壁もやがて色を消し、長い冬の夜が始まる。
各戸の窓に明るい電気の光が灯りだし、太陽の光と交代する。
カーテンの様々な色が混じりあい、都会の景色を創り出す。
7階の自室の窓のカーテンを少しあけ、目を隣のマンションに移せば、6階にブラインドを斜め上に半分開いた部屋がある。室内の様子がブラインドの隙間を通してよく見える。今日も少年はこれから始まるショーを息をころして食い入るように見る。
6階の部屋は原口敦也と妻冴子の寝室となっている。敦也と冴子の愛の営みは毎日この時間から始まる。冴子はやや細身の体の割に胸は大きく白い肌を持つ。元は赤坂に小さな店を持っていた。店を持つまでは銀座にいた。赤坂の店は2年で畳んだ。素人経営の失敗である。敦也は冴子の負債を引き受け妻とした。歳の差20歳。冴子25歳、敦也45歳。45歳とはSEXには最も脂の乗り切った年代である。若いころのただ勢いだけのSEXより技巧も持ちも優れている。敦也は事業に成功し若い妻を持ち自身にあふれていた。
SEXの激しさが彼の生き方を表している。少年は終了までの1時間をしっかりと見届けたとき、自分の手を動かしていた。3回目に手が動いたとき敦也と冴子の部屋の灯りが消えた。ふたりは行為の時は明るくする。終了とともに明かりを消す。
敦也は冴子の体を目でも確認しながら果てる。
少年が二人の部屋を始めて見たのは約1か月前、偶然に外を見た時ブラインドの角度を調整する冴子の顔を見た。
少年の目には冴子が自分を見てニッコリと微笑んだように感じた。意味もなく少年は恥かしかった。気がつくと下着の中は濡れていた。母が帰るまでに下着を手で洗い、ヘアードライヤーで乾かした。
少年はその後も勉強などする気は起きない。母は7時にパートから帰る。二人だけで夕食をする。父が帰るのは10時過ぎ。父はひとりで食事をする。少年の短い勉強時間がようやく始まる。来年は有名中学校の受験が待っている。両親の期待が大きい。
「俊介、これを食べて勉強をがんばるのよ」母が夜食を持って俊介の部屋に入ってきた。母はノックをしない。ノックをしないのはいつものことなので俊介は驚かない。もうすぐ母がくると分かっている。机の上にノート、参考書を開いておく。
母が部屋を出ると俊介は安心して週刊誌のグラビアを開く。
手を動かす作業も4回目が終わり、満足して2時間ほど勉強した後、眠りにつく。
冴子は少年が毎日自分の部屋を見ているのを知っていた。ブラインドの角度は少年の部屋の窓に合わせる。夫敦也は明るい部屋をを好む。
三人の趣味が一致した。夫敦也はことが終わると眠りにつくのは早い。
冴子は少年の部屋の窓を確認する。冴子と敦也の部屋の灯りを消すと少年の部屋に明かりが灯る。少年が明かりを消した部屋の窓から二人の行為を見ていたことは想像できた。
冴子は敦也によって得られたの快感の後、少年に見られることで、もうひとつの快感をおぼえた。
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