第33話 戦闘・2
レンは、盾の横から仮面の敵を覗き込んだ。
仮面の敵は、今度は両手を外側に開き同時に魔法を練っている。
左右の手の先から魔法の球体が発生し、球体は徐々に大きくなっていた。
「でかいのが来るな……二人とも、僕の後ろに隠れて」
コトの
コトとシュバルツは、レンの後ろに逃げ込む。
仮面の敵の詠唱が終わり、左右の手の先に出来た魔法の球体はかなりの大きさに仕上がっていた。
仮面の敵は、左右に広げていた手を前に持ってくる。
左右二つの球体は目の前で合わさり、更に巨大な球体となって膨れ上がった後、球体は弾け飛んだ。
漆黒の極太
レンは、盾を構えてその攻撃を受け止めた。
極太
「レン!」
「先輩っ!」
コトとシュバルツが叫ぶ。
レンはその身に敵の攻撃を食らい、吹き飛ばされて地面に叩きつけられた衝撃で、視界が一瞬暗くなる。
ゲームなので痛みは感じないが、衝撃で頭がぼうっとしていた。
……どうやら、一瞬気絶していたらしい。
ややあって、レンの意識は少しづつ戻ってきた。
目の前にコトがいた。
レンは地面に倒れたままだった。
首はコトの膝枕に乗せられているようだ。
コトは、レンに
「く……ど、どうなった……」
「動かないで。まだ
コトの言葉に、レンはハッとなる。
「……そうだ。敵は?僕が攻撃を防がないと、みんなが危ない!」
「先輩!大丈夫です!じっとしてて下さい!」
シュバルツの声がした。
レンはシュバルツの声がした方に首を向ける。
シュバルツは、レンの盾を構えて、敵と対峙していた。
「シュバルツ!無理だ!君はタンクじゃない……防御の弱いアタッカーが敵の攻撃をまともに喰らったら、一撃で死んでしまうんだ」
レンはシュバルツに向かって叫んだ。
「でも、今の先輩のダメージでは、先輩でも無理です。僕が回復するまで時間を稼ぎますから、その間に反撃の準備をして下さい!」
シュバルツもレンに言い返す。
「で……でも、だめだ!シュバルツ……」
レン立ちあがろうとする。
しかし、思いの他ダメージが大きく、体に力が入らない。
コトの回復魔法で徐々に治ってはいるものの、まだ体を動かすには至らない。
「大丈夫です先輩。私には、いざと言う時の為に取っておいた、必殺のアイテムがありますから。これで敵の攻撃を凌いでみせます」
シュバルツは自身たっぷりに言う。
必殺のアイテム……あるのだろうか。
……だが、そんなものは聞いた事がない。
シュバルツはアイテムウインドウを開き、そこから一つのアイテムを選択した。
シュバルツの手に、麻袋が握られていた。
「それは……?」
「先輩……これは、ゾンビパウダーと言って、これをかければHPがゼロになっても死なないんですよ」
「ゾンビパウダー!……だめだ、そんな物を使っちゃ!」
レンはシュバルツに向かって叫ぶ!
ゾンビパウダー……レンは、そのアイテムの名は聞いた事があった。
その麻袋に入っている粉は、伝説のアイテムとして、否、伝説の呪具として、人々の噂になった事がある。
粉を振りかけた物はステータスが『ゾンビ』となり、ゾンビパウダーの効果が効いている間は、HPがゼロになっても死なないという。
しかし、その代償として、ゾンビパウダーの効果が切れた後、そのキャラクターは
データそのものが
「ダメだシュバルツ!その粉を使うと、
「分かっています。……でも先輩、もうこれしか手はないんです。シュバルツはいなくなっても、私のアカウントが無くなるわけじゃありません。他のキャラでまた経験を積んで行けばいいだけですから」
「それでも駄目だ……僕らはずっと相棒としてやってきたじゃないか……その思い出はどうなる?……他のキャラクターではなく、僕はシュバルツと一緒に戦って来たんだ。その思い出を消さないでくれ!」
レンは必死にシュバルツに訴える。
「ありがとう先輩……」
そう言うとシュバルツは、麻袋の中に入っている粉を全身に振りかける。
シュバルツの体が赤く光り、ウィンドゥに表示されたステータスが『ゾンビ』に変わる。
その直後、再び仮面の敵が極太
シュバルツは盾を構え、極太
盾によって若干攻撃は和らぐも、明らかにシュバルツの
しかし、ゾンビ化したシュバルツには攻撃は効いていない。
攻撃によって、シュバルツの体がズズズ……と僅かに後ろにズラされただけで終わった。
シュバルツが防ぎきったおかげで、コトとレンの方も無事だった。
「くっ……くそ……」
レンは悔しそうに地面を拳で叩きつける。
コトは何と言っていいかわからず、ただ二人を見つめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます